変わらない貴方へ
この章では”異世界転生の駄目な例”が出てきますが、特定の作者様や作品を批難したり貶したりする意図は無いことを御理解ください。
これは、夢なのだろうか?
死んだはずの私が、オルフの戦いを眺めていられるなんて……。
『君は僕の信徒では無くなったけど、長年も信徒だった訳で。連れて行かれるのを、ちょっとだけ遅らせるくらい。サービス? って、訳』
私の信仰していた風の神様が、宗旨変えをした私に格別の慈悲を与えてくれたことに、感謝を……
『おっと! 少しでも、オルフの助けになりたいなら。信仰を散らさないように。今の彼は信仰を力に変える存在。現世に居る限り、君の想いは、彼の力になる』
サンタナ様の御言葉を受けて、オルフの勝利を、生還を改めて祈る。
強く、強く、信じて祈る。
私の分まで生きて、と強く…………
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”鬼火”のウィルの持つ魔大剣・大干魃が、胸から右肩にかけての消失によって、力が失われた右腕から滑り落ちる音が響き渡る……。
抑え込んでいた外皮の大量消失に、抑圧されてきた”鬼火”が、出血のように噴き出し、周囲を蒼白く照らす。
「治らぬ!!? 塞がらぬ!?? オルフ!! 何をした!!??」
不完全な、氷と火の比率が歪なせいで不完全な”無”魔法であったが、消失した箇所を文字通り”無かった”ことにする。
放った俺、喰らった本人ですら、元の完全な姿を思い出すことも出来ないくらいに”無かった”ことにされ、回復も修復も出来ないでいる。
「本当なら、お前すらも”無かった”ことにしたかった。言われて鍛錬してきたが、まだ火が足りなかったか……。なら!! 何度でもだ!!! 『覚悟しろ!!!』」
左腕で握り直した大剣で、戻らぬ箇所を切り落とし、強引に修繕する。
「フハハハハハ!!! 四天王という立場になって、初めての敗走!! 負けるのが愉快なのも、初めてだ!! 再戦の日まで、壮健で居ろよ!!! 好敵手!!!!」
大剣と”鬼火”で巻き起こした砂煙、土埃に紛れて逃走を図る四天王”鬼火”のウィル。
四天王最強の~武神~が、躊躇なく逃走を選ぶ判断を下す。
「逃がすか!!? 始まら……
限界を超えて戦っていた俺の身体が、精神が、再度の”無”魔法、ウィルを追いかけようと疾駆する負荷に耐えきれずに、ついに意識を手放してしまう…………。
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襲撃を退け、朝焼けに染まり、焼け野原、瓦礫が目立つ王都を城の窓から一人で眺めるオルフ。
ベラちゃんのように、スキルを発動していない時は元に戻る髪の色が、何かと引き換えにしているように戻らない。
「……何か、用か? レオナ」
今では、黒よりも白い方が多くなってしまったように感じるオルフが窓の外を向いたまま、顔を向けずに尋ねてくる。
「王都が、こんなになったことに責任を感じてるの? それとも、スノウちゃんの心配? 今は安静にしてなきゃ駄目。駄目よ」
「スノウも心配だが……。ヒルダさんの事を考えていた」
何時だって自分の事より、他者の事を優先する優しい貴方。
「怖いんだ。ヒルダさんの死を前にして、嘆き悲しんだのは俺の中の2人だけで……。オルフは、パールは、魔物は!! イザベラでなくて良かったと……安堵していた」
「それが、どうかしたの? 私だってオルフが死ぬより、他の誰かが死んでくれた方が嬉しいわ。ましては、ヒルダさんの死で2人が奮起してくれたおかげで、貴方が此処に居る……。ヒルダさんには感謝しているわ」
ようやく、こっちを向いたオルフが鋭い視線を私に向けてくる。
「そうやって他者のために怒れる。悲しんでない訳じゃない。オルフは変わってない。何も変わってない」
「まだ大丈夫でも。変わらない保証は無い。レオナをスノウを、サラ、ロンやレミ、ロイさんを…………ベラまで。自分の為に切り捨てて、生きていきそうで。怖いんだ」
仕事柄か、変わっていくモノを多く見てきて、多く変えてきて、そういったモノの目利きには自信が有る。
「前にも言ったでしょ? シルバの魔物が何であれ関係ない。貴方は貴方。貴方が居なければ私は居ない。なら、私の全てを貴方に捧げるのは当たり前。何も変わらない。変わらない」
「成長して、大きくなっても変わらないな……」
小さい子を慰めるように、オルフを優しく抱きとめる……。
緊張が解けたのか、押し寄せる疲労に再びの眠りにつく愛しい貴方……。
「貴方だって変わってない。姿形が変わっても、本質は変わらない」
頑固で、真面目で、ひたむきで、優しい変わらぬ本質。
シルバと私の約束を、死んだとしても、オルフとなってまで果たそうと帰ってきてくれただけで、私には充分。
だから、変わらない貴方が好き。
稚拙な文章を読んでいただいて、ありがとうございます。
次回は明日の午前6時に投稿します。




