変わって欲しくない貴方へ
この章では”異世界転生の駄目な例”が出てきますが、特定の作者様や作品を批難したり貶したりする意図は無いことを御理解ください。
限界を迎えて破裂し、蓄積された魔力を、なんの属性でもない純粋な魔力を吐き出すだけで、王都を崩壊させる程に肥大化する肉風船。
即刻、対処の為に人員を出さなくては……。
城壁を破壊し、ジョイフルに遅れながらも、城へと進軍してくる四天王最強”鬼火”のウィルとジョイフルの部下達。
こちらにも、対処の為の人員を出さなくては……。
「難しい顔をしてるけど、今は休憩。四天王を相手に疲弊してるのを、お手製の薬湯。愛妻薬湯で癒してあげる」
「ヒャア~!?? レオナさん!? 何処から出してるんですか!!!?」
ジョイフルとの戦いで疲弊した俺の怪我、体力、魔力を回復させるために、各種の薬湯を豊満な胸の谷間から、次々と出してくるレオナ。
真っ赤な顔でソレを諫めるベラ嬢の背後で、同じく真っ赤な顔で、手で顔を覆い隠しているが指の隙間から、チラチラと覗き見ているカリン嬢。
「まっこと羨ましく、堪能させてやりたいが。回復しながらで良い。新しき勇者さまは、この事態に、どう動く考えかな?」
「指揮権を俺に渡すと云うのか? 国においての国防の立場でも、適格者の中でも、年齢と階級、経験の全てが、クロイツェル様が適当だと思いますが?」
レオナから甲斐甲斐しく治療されている俺に、ニヤニヤしながらクロイツェルが答えてくる。
「経験など当てにならん。四天王を前に、即座に対応した対応力を見ても、氷の勇者様が適当と考える。お堅い城勤めが長かったからな。基本的に指示待ち人間なのだよ、小生は。爺さんになって、頭も固いしな」
「そんなこと言って。隊長が、楽したいだけでしょう?」「そーだ! そーだ!」「働け~」
周囲の緊張を解くために、少々のユーモアを入れるのが癖になっているのだろうクロイツェルが、全権を俺に譲ってくる。
回復しながら対処の策を練っていた俺は、避難してくる民衆を縫うように迫りくる脅威を感知して動く!
「きゃあああああ!!!?」
民衆には目もくれずに、周囲に被害が出ないように魔法が撃てず、近接戦の術が無いカリン嬢を目掛けて迫る影。
かつての俺の種族だった魔狼・白狼族の精鋭達が、か弱き魔術師の少女に襲い掛かる!!
「貴様の首か、その宝杖!! 我が一族の帰還の為にも頂くぞ!!!」
「「「縫い付ける氷の楔!!!」」」
リーダー格の号令と同時に、魔法を撃たれぬように民衆を背にした数匹の白狼達が、一斉にカリン嬢に向けて氷の魔法を放つ!
様々な方向、角度から放たれたソレを盾や壁の魔法では対処が出来ないので直接、魔剣・牙にて叩き落そうと魔力を込める!!!
ーーユニーク・スキル【???】ーー
ーーユニーク・スキル【氷??れ?の】ーー
ーーユニーク・スキル【氷に愛されし者】ーー
ジョイフルとの戦いで、氷属性を付与したままの魔剣・牙に白狼達が放った氷の魔法が吸い込まれていく!
オルフとして産まれた時から正体不明だったユニーク・スキルが、生涯初めての他者からの氷の魔法を受けて、覚醒する!!!
「【氷に愛されし者】!!!」
俺への迎撃に放たれる白狼達の魔法を吸収し続け、増大する魔力をもってして殲滅する。
ベラ嬢と同等のユニーク・スキルを手にし、対応策が閃く!
それは、俺とベラ嬢を取り巻く環境を変えねばならない苦肉の策だった……。
ーーーーーー
「【炎に愛されし者】!!」
空に向けて、我が家の家宝、宝剣・フランベルにより増大した渾身の火の魔法を放つ。
夜の闇と、未だ収まらぬ狂騒に包まれた王都を小さき太陽なソレが、ほのかに照らす。
『正直、戦いには関わって欲しくなかった。ベラには変わらず、平穏な生活を送って欲しかった』
思いを馳せるは、地獄の様だった日々から救ってくれた、母から語られたオルフの言葉。
周囲の王宮の魔術師や避難民の火の魔法が、私の魔法に吸収され、輝きと大きさと威力が増していくのが分かる。
『それは奥方の願いで有り、ベラが勇者になるのを期待していたアレクですら。ベラの立身出世を願っていても、死と隣り合わせの戦場に上がり続けて欲しかった訳では無いはずだ』
ーーユニーク・スキル【火を支配せし者】ーー
「ベラお嬢様!!? 髪が!!?」
ヒルダに言われるまで気付かなかったが、私の紅い髪が発光し始め、より紅く輝き、周囲を照らし始める。
スキルの変化、魔力の増大に合わせるように、ゆっくりと、ゆっくりと地から足が離れ、虚空へと浮かび上がる……。
「凄い。神々しい魔力を感じる……」
「これは……。長生き、するもんですな」
私の魔法が完成するまでの護衛に残ってくれたカリンさんとクロイツェルさんが、神を見るような表情で見上げてくる。
周囲の避難民の中には、本当に神に祈るように拝んでいる人たちまで居る……。
『これが成功すれば、ベラ。貴方は本当に勇者になる。人族の厄災に対して、常に戦う立場になるだろう。俺は、それが嫌だ! 貴方に幸せを謳歌させるのが、俺の恩返し! 俺が出来る2人への唯一の償いと恩返し!!』
突如、遠くから放たれてきた無数の正体不明の凄まじい火の魔法が吸収され、完成する。
ーーユニーク・スキル【火の女神の化身】ーー
神と同等になるスキル。
神が信仰を糧にするように、自身への信仰、自身の信仰する神の信仰を、力に変えられる。
ーーーーーー
まさに太陽と呼んでも差し支えない程に光り輝き、完成した私の魔法。
向けるは王都を脅かす肉風船。
(この状態になって分かる。オルフは、私に変わって欲しくないと言うけど。私は貴方に、変わって欲しくない!)
神・化して、髪の色が変化し、自分が自分で無くなるような感覚に陥る。
(私の為に傷ついて、変わっていく貴方。私は、それが嫌!! 私の幸せは、貴方の幸せ! 貴方の平穏で変わらぬ日々の為なら、変わるのも構わない!! それが私の恩返し!!!)
恩返しだとオルフは言うけど、そんなのは私には関係無い!
私にとっての貴方は地獄から救ってくれた上に、自身が変わるのも構わずに尽くしてくれる愛しい存在……。
「闇を許さぬ輝き!!!」
触れたモノだけを焼き尽くし、塵芥に変え、存在すらも消滅させる神々の最上級攻撃魔法を放つ!!
破裂しようが、爆発しようが一切合切を消滅させ、王都に被害が出ないようにする為に、肉風船と化したハチロー・ハルトマンに向けて放つ!!!
今まで、自分で他者の命を脅かしたことの無い私の”覚悟と決意”の一撃を放つ!!!!!
稚拙な文章を読んでいただいて、ありがとうございます。
次回は明日の午後4時に投稿します。




