一難去って
この章では”異世界転生の駄目な例”が出てきますが、特定の作者様や作品を批難したり貶したりする意図は無いことを御理解ください。
オルフが命懸けで作ったジョイフルの一瞬の隙に、仲間の中で唯一の雷属性、最速の属性持ちのスノウが、最高峰の触媒である宝斧・ルギスで襲い掛かる。
四天王という魔物の象徴たる一つの巨星が消え落ち行くのを、人族の陣営の誰もが確信したはずだ……。
「危ない、危ない。危ないジャン」
それを簡単に許さぬが故の四天王!!
魔物の陣営の眩き巨星は、今も尚、輝きを放っている!!!
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雷の加護を貰ったとはいえ、スノウが雷属性を使うには二つの属性を掛け合わせなくては使えない。
俺を罵倒され、激昂し、ドナテロから貰ったばかりの預かりの首飾りの使い方も不慣れのスノウは、一瞬、ほんの一瞬だけ手間取った。
四天王を相手に、それは致命的だった……。
「ヒューー! こりゃあ凄ェ!! 流石は、宝斧・ルギスだ、ナ!! 力が漲るゼ!!!」
ジョイフルの首を切断する刹那、スノウの奇襲を察知され、躱されてしまった。
「ごめんなさい……。オルフ。ごめんなさい……」
まだ不慣れな高速の攻防は奇襲で有利だったとはいえ、ジョイフルに分が有った。
あっさりと返り討ちに遭い、あろうことか宝斧・ルギスを奪われたことを、スノウが涙ながらに謝罪する。
「何も問題は無い……。ジョイフルの攻撃の誘導も回避も俺は出来る。直撃ですら耐えて見せた。俺を盾にして、攻撃していれば勝てるはずだ……」
ルギスを奪われ、威力が増大し、今までの攻防で疲弊している俺が対応出来る訳が無いのは分かっている。
やせ我慢、荒唐無稽なことは分かっていたが、雨に濡れる捨て犬のようなスノウの手前、強がって見せた。
「オルフのおかげで、ようやく目も慣れました! 私だって、勇者なんですから!! 一緒に挽回しましょう、スノウさん!!」
「”盾”に関しては、国の盾であり、民の盾であり、勇者の持つ盾を持っている自分を差し置かれるとは、遺憾ですなぁ~」
「通電での誘導なら私だって、お手伝い出来ます!」
ジョイフルの高速戦闘に対応出来なかったベラ嬢、クロイツェル、カリン嬢の適格者達が、俺の発言に呼応するように参戦してくる。
「四天王の座に空席を作って差し上げますわ!!!」
サラが魔剣・干魃を握りしめ、高らかに宣言する。
「干魃か。ドナテロの爺さん、サラっちを孫娘みたいに猫可愛がりしてたからナ~。厄介な物を渡してくれちゃってマ~~…………」
何故だが、サラの持つ魔剣・干魃を厄介と評し、警戒しているようだ。
そこに勝機が有るかと画策していると……違和感を感じる。
空に浮き、全身から雷による火花を散らしながら、何かに気づいたのか、俺達の方ではない方向を注視しているジョイフル。
「…………俺っち。帰る」
「!!? 駄目!!!!」
突然、まさに突然、雷と化して、ルギスを携えたまま帰還しようとするジョイフル。
ルギスを奪われたことに責任と罪悪感を抱えたスノウが単身、四天王相手に単身で追いかけようとする。
「スノウ!! 無理は、するな!! 行先だけでも分かれば良い!!!」
「分かった。生きて帰る。信じて、オルフ。私も信じる。後は任せた」
スノウに釘を刺し、二人の雷光の行方を見送る……。
突然の逃走に、死闘を覚悟していた仲間達は、魂が抜けたように唖然としていた。
「何アレ!? 何で! あんなモノが城下に!??」
「……まるで、風船ね。この世の厄災を詰めたような風船。割れたら大変よ」
仲間の中でも特に魔法、魔術に長けたカリン嬢とレオナが、ジョイフルが逃走した原因を発見する。
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「帰るのか……。アイツにしては長く、激しく、戦っておったと思ったのだがな」
襲撃の最中の離脱を見ても、ウィルは怒ってはいなかった。
「ある程度の宝斧・ルギスを持ち帰ったので不問とするか。アレは、我はともかく、ジョイフルには耐えられぬだろうからな」
市街地を悠然と、城に向かって練り歩くウィルの視線の先には、この世、全てを憎悪する肉風船。
周囲ではジョイフルという主人の離脱と、いつ破裂し、こちらに牙を向けてくるか分からぬ肉風船を前に、ジョイフルの部下達は離脱を考え始める。
「ジョイフルは功績を持ち帰ったので不問にする! 貴様らは何もせぬ内に帰れると思うなよ!!!」
四天王最強の叱責を受け、離脱を許されるだけの功績を上げる為に死に物狂いで進撃が再開される。
自分以外の者達全てが、城に向かって疾走する中で、悠然と、肥大を続ける肉風船なぞ気にも留めない様子で歩くのを再開する。
「マンダラの策謀だろうな。人間どもを一掃し、あわよくば我かジョイフルが消えれば良いとでも画策したのだろう。しかし、アレでは我は殺せんぞ!!! 戻ったら、覚悟しておれ! マンダラ!!!」
色々と気に入らない相手ではあるが、これまで直接的に危害を加えられなかったので不問にしてきたウィルが喜んでいた!
生死を賭けた死闘の昂ぶりを感じる相手など、仕える魔王以外では四天王の面々しか居ないと思っていたが、自分から内乱を起こす気が無かったウィル。
そして、最強である故に孤高、孤独、孤立していた自身に喧嘩を売ってくる四天王は居なかった。
(唯一の楽しみも、人族に靡いた。マンダラの前に、直々に引導を渡してやろう!!)
全身から”鬼火”の気炎を上げ、城に向けて前進する……。
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使う当ての無い魔力が回復、増大し、収まりきらない分が身体を貫く。
貫かれたことによる負傷を回復させるために、収まりきる身体に肥大化し回復する。
それを繰り返すことで、自身の屋敷を内側から破壊し、尚も肥大を続ける肉風船。
限界を迎え、破裂したのなら王都は崩壊するだろう。
ソレを、どうにかしたとしても迫るは四天王最強の”鬼火”のウィル。
人化した状態ですら圧倒的だった”遠雷”のジョイフル以上の強者が、迫ってきている!
この日の夜は暗く、長い夜になるであろう……。
稚拙な文章を読んでいただいて、ありがとうございます。
次回は明日の午後2時に投稿します。




