雷の適格者
この章では”異世界転生の駄目な例”が出てきますが、特定の作者様や作品を批難したり貶したりする意図は無いことを御理解ください。
冒頭の謎ポエムは、作中のキャラの物です。
今まで読んで下さった方への、後のちょっとした伏線です。
変わらないのが、好き。
季節が、場所が、人々が、物質が、変わっていくモノが多い中で、変わらないのが、好き。
だから、変わらない貴方が、好き。
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初代勇者達の子孫、雷の勇者・ハルトマンの血を受け継ぐ王家の人間が作り上げた王都・ハルトマンに到着する。
数十年ぶりの勇者会合、数十年ぶりの王家の血筋の誕生に、街中が祭りのように盛り上がっていた。
街中でキリバと別れ、見たことも無い程、想像したことすらない程の人々の群れに、城までの道中、全員が眩暈を起こしかける中で、城門まで辿り着く。
「城下町は、凄い人だっただろう。此処から先は、私が案内しよう」
城門で身元の照会などの手続きを済ませていると、俺達より先に出立していたエルネスト伯が出迎えに出てきてくださった。
本来なら勇者の関係者以外は、公爵以上の貴族しか立ち入りを許されない勇者会合中の王城。
保護者的な立場で呼ばれた以外にも、エルネスト伯が呼ばれた理由が有る。
「会合まで、まだ数日、間が有るが。王が、どうしても会合の前に会っておきたいと言うのでね」
謁見の間ではなく、軍事の会議室だと思われる場所まで、エルネスト伯の先導に従って付いて行く。
「エルネストからの手紙で知ってはいたが。本当に15歳に、なったばかりなのだな。竜・殺しは」
前もって、エルネスト伯と王が幼少の頃からの旧知の仲だとは聞かされていたが、火竜との一件は、公的には撃退であって、討伐では無い。
話を盛ったのかと思ったが、伯の苦い顔を見ると、盛っているのは王の方のようだ。
「若くして、竜・殺しの称号を勝ち取る程の英雄の下に、王宮の錬金術士にしようと思っていた者が募るのも仕方なきこと。そうだな。エルネスト伯」
王としての体面的に、狙っていた人材を何処かの馬の骨に奪われたとあっては立つ瀬が無いので、話を多少は盛ったとしても、英雄相手なら仕方ないという流れにしたかった訳だ。
つまりは遠回しに、旧知で幼馴染のエルネスト伯に愚痴と皮肉を直接言う為に、伯は呼び出されたと言えた。
苦い顔に苦笑いを浮かべる伯を尻目に、我関せずと、暇そうに欠伸を噛み殺すレオナ。
「俺より先に、竜を殺したガキは此処か!!!?」
エルネスト伯に、王からの嫌味で心労が重なり、顔に苦悶の皺が刻み込まれるのではと心配しそうになった時に、けたたましく会議室に入ってきた無礼者が居た。
「ハチロー!! 勇者会合まで、大人しくしておれと言ったであろう!? 客人を前になんたる無礼を!!!」
「無礼なのは、このガキの方だろうが! 先に竜殺しなんかされたら、俺が目立たないだろうが! おい! 聞いてるのか!?」
数十年ぶりの雷の勇者、異世界からの転生者を自称するハチロー・ハルトマン第四王子その人である。
王族とはいえ、あまりの無礼、あまりの理不尽な叱責に、父親である王以外は怒ることも出来ずに阿呆を見るような目で見ていた。
「お? よく見たら、い~い女を連れてるじゃねえか。コレを献上したら、許してやらんこともないぞ。趣向は違うが、この女も付けたら不問にしてやる」
舐めまわすようにレオナとスノウを眺めてから、高貴な血筋とは思えない程の下種な発言をするハチロー。
異世界からの転生者なのは信じても良いが、勇者だとは思えなかった。
「……呆れた。予想してなかった訳じゃないけど。本当に適格者だけなのね。持てさえすれば、赤ん坊でも刃物を使える。その程度」
「下品。ルギスが不憫。……?」
”不敬”なことを聞こえないように小声で言っているが、下品な性格と違って、ハチローに内包される魔力量、質が勇者と名乗るに相応しい物なのは、対峙するだけで分かる。
鬼に金棒、悪人に刃物という言葉が有るが、それらに聖剣・魔剣の類を渡すような危うさが有る。
「それ、フランベルだろ!? てことは、君がベラちゃん? かわゥィ~ね~。二人で、お茶でもしない?」
『いくら謝られても許さぬ!! なんじゃ、この馬鹿は! 阿呆は!! このような者に使われおってからに!!!!』
雷の適性が無いので聞こえないが、宝斧・ルギスが主の無礼を必死に謝っているのだろうが、フランベルの怒りが治まらず、此処まで聞こえる大声を上げて怒り狂う。
そして、何かを内密に伝えたいのか、スノウが俺に耳打ちするために近づいてくる。
「たぶんだけど、あの馬鹿王子。ルギスの声が聞こえていない」『あぁん!? なんじゃと~……』
『「聞こえていない!???」』
ルギスから、俺がスノウから聞かされたことと同じことを聞かされたのだろうフランベルと、同時に驚いてしまった。
「貴方に”ベラ”と呼ぶ権利も許しも与えていません。これは私の母からの、父からの教えです。許しを与えない限り、私を”ベラ”と呼ぶのは、王だとしても許しません!!」
「怒った顔もキュートだけど、笑った顔の方が可愛いよ。ほら! スマーイル!!」
あまりの驚きにベラ嬢の危機に、反応が遅れてしまった。
どういうことだが分からないが、とにかく一刻も早く、ベラ嬢を助けなければならない!
謎多き男、ハチロー・ハルトマンと対峙する……。
稚拙な文章を読んでいただいて、ありがとうございます。
次回は明日の午前4時に投稿します。




