試験と成長
巨大プッファーは、この章のボスでは無いです。
「待って! オルフ!! 駄目!!?」
察したスノウが珍しく慌てた様子で、これまた珍しく大声を上げて止めに来る。
「生前を越えて!!」
スキルの過剰な膨張を抑え、鋭く強力にする防具を着てこなくて正解だった。
以前に使った時よりも大きく成長したユニーク・スキルの能力と、以前よりも長く生きられたおかげで成長した自身の全能力を持って、発動させる。
ーーユニーク・スキル【人狼の魂】ーー
生前の能力の成長と引継ぎのスキル。
重複するスキル、魔法には能力が加算し強化される。
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人ではなく魔狼の部分に重点的に能力を込めた姿は、生前の時よりも大きく、遥かに大きく、俺を核とした巨大な魔狼のオーラを身に纏っている。
「ぴぃあああああああああああああ!!????」
喉元を切り裂かれ、口から血を噴き出しながら巨大プッファーが、恐怖で断末魔の叫び声を上げる。
オーラとはいえ、自身より遥かに大きい捕食者に丸呑みされるとなっては、仕方のないこと。
巨大プッファーの死に際に巻き散らかされる源泉の薬効を抑えるための処置。
薬も過ぎれば毒となる。
ならば、過ぎなければ薬だ。
生前の俺と生前の敵を即死させ、オーラに触れただけの、多少の毒耐性を持っていた生前の俺さえも殺しきった猛毒に耐える程の耐性を獲得した今の俺。
今の俺なら、この薬効に耐えきってくれるはずだ。
「オルフ……」
心配そうなスノウが、スキルを解き、地上に降りて来た俺に近づい……
「があああああああああああああ!!????!?」
突然の激痛に、のたうち回る。
痛みが、関節が、刺すような、眼球が、爆ぜる、激痛が、入れ替わる、肺が、成長する、成り代わる…………
『良いわぁ。オルフ。巨大な薬効を取ったことで、更に神に近づいてる……。本当に可愛い可愛い私のオルフ……』
アスラ様の……声が…………聞こえ……
ーーーーーー
「オルフ!? オルフ!! オルフ!!!」
目が覚めると、目に大粒の涙を浮かべたスノウの顔が目の前に在った。
「突然、転げまわって気絶したのですから、ビックリしましたわ」
背後で火竜になったサラが俺を抱きとめながら、心配そうな声を掛けてくる。
二人から、今の状況を説明を受け、要約すると、過大な経験値を取って急成長したパールを抑えるために、近場の火山から”貪欲”で魔力を吸い取ってきた火竜に外側から圧力を掛けて抑えていたらしい。
(要は、成長痛で気絶してたのか。子供か!? ……成人前だったな)
夕焼けに染まり始めていた空は、すっかり闇に染まり、星空が見えているので長く気絶していたようだ。
「で、アレは何だ?」
二人に抱きとめられ、動けぬ俺の視界に映る、人化し正座しているキリバを指差す。
「……今度は、某の不勉強と短慮のせいで、貴殿に要らぬ苦痛と貴殿の奥方様達に要らぬ心労を。そして、麓の村々を危険に晒した! 申し訳ない! この通りだ!!」
幼いくせに、見事な土下座だ……。
この様子だとドナテロと違って、人族とはいえ民間人まで危害を加える気が無かったのだろう。
若く甘ちゃんな奴だ……。
「駄目。子供でも許さない。ずっと、そうしてると良い」
「やめましょう? 流石に気の毒ですわ。スノウに叱られてからオルフが目覚めるまで、ずっと其処で微動だにしていないんですもの。反省してますわ。充分に」
ようやく二人から解放され、体の調子を確かめるように軽く動かす。
背後ではスノウとサラが許す許さないで、糞みたいに面倒に騒いでいて、、前方でキリバが同情を引くための姑息な土下座を続け……
パァッーーーン!!!
「「「オルフ!?」」殿!?」
突然、気合を入れるように両頬を張った俺に三人が驚いて、視線を向ける。
「……どうした? 終わったんだ。帰る支度をしろ。予定より遅くなってしまったから、イザベラ様達が心配している。早く帰って、終わったんだから温泉だ。そうだろ? キリバ」
「ーーっ!? 相分かった!! 今日は某が、オルフ殿の背中を流すとしよう!」
「むー。本人が許すなら、許すしかない」
「オルフは、きちんと謝る相手には寛容ですわ。私の時も、そうでしたもの」
ボイサーの冒険者の『終わったら温泉』の合言葉には、仕事中のミスを文字通りに洗い流すという意味が有るのを知らないだろうが、意味が伝わったようで良かった。
ーーーーーー
「ひょっひょ! まさか、温泉が濃くなることもなく、無事に帰ってくるとはのう」
ボイサーで、偽の依頼の”極彩鳥の尾羽”を渡す際に、ドナテロが悪びれもせずに笑いながら語りかけてくる。
「アレに耐えるかぁ。おヌシは”マンダラ”の毒にも耐えられるのではないかの?」
因縁深い相手の名に、顔をしかめる。
「……翁。分かっていたのなら、なぜ」
「キリバ、おヌシは若い。ワシのように上手いこと利用する者も出るじゃろう。自分の信条、信念を貫き通すには考えることじゃ。ワシへの忠義が先行し過ぎて、周りが見えなくなっておるぞ。ワシさえも疑うのじゃ」
「試験にしては、いささか大掛かりでしたね」
要は、キリバの成長のためでもあった戦いだった訳だ。
「自覚は有るがの。おヌシ達には、その分の報酬も弾んだつもりじゃ。ワシの秘蔵の魔剣では不満か? しかし、濃くもならず犠牲も出なかったのは予想外じゃな。ワシも耄碌したかの」
ひょっひょ! と笑うが、人族の被害の可能性が有る計画を立て、口ぶりから俺の人狼の魂のことも知られているようだ。
流石は四天王、油断ならない爺さんだ。
「詫び。という訳ではないが、おヌシは成人が近いんじゃろう? 祝いに何か用意してやろうの」
本当に、油断ならない爺さんだ……。
稚拙な文章を読んで頂いて、ありがとうございます。
次回は明日の午前7時に投稿します。




