ドキ! 男だらけの温泉!
残念だが、男の裸体しかないんだ!
温泉回だが、残念!
夕飯前に孤児院の孤児達と引率のシスター達、俺の仲間達でボイサーの大衆浴場に来ている。
観光客向けの高い大衆浴場ではなく、地元の冒険者や市民が使う安い浴場だが、温泉の効能に変わりはない。
タタラの温泉は疲労回復と魔力回復だがボイサーは、それに加えて美肌などの美容に関する効能が有るため、観光地としての利点が大きい。
だから、タタラでは鉄鋼業の比重が大きく、サラのユニークでマグマの熱が下がったのが大打撃となったため、俺と一戦交えることになってしまったのだ。
(……懐かしい。此処で冒険者をしていた時は、帰ってきたら入っていたな。冒険者として稼ぐまでは、孤児院では日に1度の水浴びが出来れば良い方だった。今では毎日のように、皆が湯浴みを出来るようになったのは喜ばしい)
自分の仕送りで世話になった孤児院の環境が良くなっているのを実感しつつ、昔を懐かしむように湯船に浸かる。
「? どうした? もっと近くに来なさい。地元民しか居ないとはいえ、引率を任されたからには安全を確保するために、近くに居てもらった方が良い」
孤児は基本的に女子が多い。
男子は労働力という観点から捨てられにくく、ウチの孤児院でも引率が必要なくらいの年齢の子は二人しか居なかった。
引率が必要ない男子は夕飯まで仕事をして、食べてから集まって入りに来るらしい。
「……白銀の貴族様の、近くなんて……お、おそれおおくて……」
「ぼくたち、汚いから……よごしちゃう」
共に五歳程らしい黒髪のラックと青髪のルーが、首から下げた白銀のプレートと俺が貴族になるかもという話を聞きつけて、恐縮してしまっているようだ。
恐縮してしまっている二人の間に強引に入って、二人の頭を撫でながら話しかける。
「お前達の名付け親はシスター・リョカなんだろ? 髪の色、黒からラック、青からルー。俺もシスター・リョカが名付け親なんだ。つまりは兄弟だ。弟が小さいことを気にするな!」
幼くても男の子として涙を流せないと思っているのか、二人は必死に涙を堪えているようだった。
「さあ、後で背中を流してやるから、しっかり温まっておくんだぞ。兄弟」
「「う゛ん゛! 兄ちゃん!!」」
二人とは打ち解けられそうで良かった。
「ひょっひょ! 心温まる光景ですなぁ」
突如、話しかけて来た老人に驚き、二人が俺の後ろに隠れる。
ベラ嬢の下に行くまでの長期間、過ごしたボイサーで見かけたことのない絶対に地元民ではない老人に警戒を強める。
「すまんのー。何十年ぶりに来たボイサーで、良いもん見させてもらったからのう。つい、話しかけてしもうたわい。驚かせてしまったのう」
一見、好々爺に見える老人から、一切の敵意を感じなかったので警戒のレベルを一段階だけ下げることにした。
「ひょっひょ! 後ろの童達には詫びに湯上りに飲み物でも買ってやろう」
「「!? ありがとうございます」」
子供は現金なもので、すっかり警戒を解いているようだ。
「久々に、此処の湯に浸かりに来たが、昔と違ったのう。昔は、もっと……」
「濃かった。ですか? ご老人」
ニヤリと一瞬、鋭い眼光になった後に不敵に笑う老人。
記憶にある温泉の記憶と比べて、今のボイサーの温泉は常人では気づけないくらい薬効が薄くなっているのに、この老人は気づいていたようだ。
「流石は白銀の御仁と言うべきかの。名乗っていなかったの。ドナテロじゃあ。親しき者達にドナ爺と呼ばれておる」
ーーーーーー
「まあまあ! ラックとルーと仲良くなったのね。嬉しいわ」
温泉に入る前は俺から距離を取っていた二人が、ドナテロから買ってもらった飲み物を飲みながら、空いた手で俺の服を掴んでいるのを見て、シスター・リョカが喜ぶ。
「シスター・リョカ。温泉で、この老人から冒険者として仕事の依頼を受けました。話を聞いて夕飯までに帰りますので、先に帰っていてください。スノウ。サラ。残ってくれ」
冒険者としての仕事の依頼と云うことで、冒険者であるスノウとサラに残ってもらって、関係者だけの話が始まる。
「で、四天王”水瓶”のドナテロが、俺に何の用です?」
俺の発言を受けて、ドナテロの後ろに黙って立っていた褐色の肌の青年が守るように前に立ちふさがる。
「驚きましたわ。気づいてなかったら言わない気でしたけども、ドナ爺の人化まで見破れるんですのね。普通は名乗られても信じられないくらいですのに」
「人では無い。それは分かる。強さも。四天王、納得」
四天王クラスの実力者が、自分で解決せずに冒険者に依頼する案件には興味が湧いていた。
「四天王ともなると立場が有っての。この一帯はワシの管轄なんじゃが。他の四天王の部下が、温泉の源泉で何か悪さをしとるらしい。ワシの手勢が叩いてしまうと抗争になってしまうでの。話の分かる冒険者に、こいつを付けて解決しようと思っておったら、おヌシを見つけた訳じゃ」
「あくまでも人側の勢力に倒されたことにして、抗争を避けたいという訳ですか」
こいつと呼ばれた側近が片付けたとしても、言い訳出来るように調査を冒険者に依頼したかったようだ。
四天王という立場が足枷になるとは皮肉だが、疑問が残る。
「今のところ、常人には気づかないくらい薄い程度。それに人族の問題に、魔物が解決しようとする理由が気になります」
「ワシは穏健派じゃ。ワシに加護を与えてくれた神が人族側の神だったせいか、何が何でも人を支配したり滅ぼそうとは思わんし。何より、ワシは温泉が好きじゃ! ワシの管轄の温泉が馬鹿者のせいで、悪くなるなど許せん」
【偽装】(偽)を使い込んだせいか、ドナテロの言葉に嘘が無いことが、よく分かった。
「馬鹿者を倒せると誤魔化せるほどの冒険者で、話の分かる者を探すのに難儀しとった所に、おヌシじゃ。人族の神の加護のおかげかのう!」
ひょっひょ! と、好々爺らしい笑い声を上げるドナテロ。
魔王を倒すために立ちふさがるのなら倒さねばならない相手だが、個人的には嫌いな相手ではない。
そして、何より此処は俺が産まれ育った故郷、故郷の危機に立ち上がらない訳には、いかないのだ。
「納得した。俺にとっても此処は大切な場所だ。救えるのなら救おう。あんたの依頼を受けよう!」
こうして、倒すべき四天王からの依頼を受けることになった。
稚拙な文章を読んで頂いてありがとうございます。
次回は、明日の午後2時に投稿します。




