オルフの過去
作中で出てくるギャグを他作品で発見してしまいましたが、そのまま投稿します。
書いてる時はオリジナルのつもりでしたが、どうやら定番なモノだったようです。
問題があれば修正しますが、そのまま投稿します。
「こんなに何もない道中は、初めてかもしれんなぁ」
俺達を運んでいた馬車の一団の一人が、こぼした独り言だ。
サラの気配に臆した魔物達の襲撃が無かったことと、運良く盗賊などの襲撃が無かったので道中は穏やかに進んだ。
「此処が、オルフが産まれ育った場所……」
馬車を降り、ギャバン地方の都市・ボイサーを歩いている時に、感慨深げにベラ嬢が呟いた。
この都市を離れて三年余り、変わらぬ街並みを懐かしみながら歩いていると、暮らした孤児院、兼、教会が見えてきた。
「? あれは、まさか」
教会前を掃除していた鳩の獣人のシスター・パピが、俺達に気づく。
「お久しぶりです。シスター・パピ。里帰りに来ました。シスター・リョカは居ますか?」
「お帰りなさい! オルフ。シスター・リョカなら、礼拝堂の清掃中です。今、呼んできますね!!」
余程、驚いたか嬉しかったのだろう、シスターにあるまじき興奮した様子で、脱兎の如く駆けていく。
入れ替わるようにサラが、俺に疑問を投げかけてくる。
「色々な亜人の方々が多い地方なのですわね。来る途中でも多かったですもの」
サラが居たタタラでも亜人は多い方だが、ギャバン地方は海に面している部分が多く、海外からも人の流入が多いのと、観光も盛んなので多種多様な人族が集まりやすいのだ。
「……オルフ。よく、帰ってきましたね。お帰りなさい」
急いで来てくれたのだろう、肩で息をしながらエルフのシスター・リョカが、俺達を出迎えてくれた。
「あら?」
シスター・リョカは糸目で分かりづらいが、俺達の集団に居る同じエルフのスノウと目が合ったようだ。
始まるぞ。
「ま、まさか。そんな。貴方は」
「……お母さん?」
信じられないと云った様子で、恐る恐る互いに確かめるように近づいて行く。
「生きていたんですね。あの時、私が手を離さなかったらと、悔やまない日は有りませんでした。まさか、オルフと一緒だなんて。ああ、神よ! 感謝します!!」
「お母さんは悪くない。しっかり握らなかった私が悪い。謝らないで。泣かないで。お母さん」
互いの存在を確かめるように、生きているのを確かめるように、目に涙を浮かべながら強く、強く抱き締め合う。
「おいおい。泣かせるじゃねえかよ!」
「奇遇なことも有るんですわね。感動的ですわー!!」
「……良かった。良かったですね。スノウさん」
レミ、サラ、ベラ嬢の三人が目に涙を浮かべて、運命的な再会に感動しているようだ。
嘘なのに、コレ。
「「エルフ・ジョーク!!」」
さっきまでの涙が幻だったかのように、満面の笑みで微笑む二人。
呆気に取られて、呆然とする三人。
「え? え? 嘘? え!?」
三人を代表するようにベラ嬢が、俺に聞いてくる。
「長命種であるエルフの定番ジョークなんです。エルフ同士が会ったら、騙される側の集団のエルフに問い掛けて、騙しやすい関係を聞き出す。今回はスノウの年齢が低いのは知られてるから、子供役を提案した訳です」
悪戯好きの風の神サンタナの加護を多く受けるエルフらしい一面だ。
「「「嘘ーーー!!???」」ですわー!!?」
騙された三人の声が、澄み渡る青空に木霊する……。
ーーーーーー
孤児院に来た頃から不思議な子だった、オルフ。
冬の寒い日、院の玄関に粗末な布一枚だけで包まれて捨てられているのが発見された。
雪が降っていたのに捨てた者の足跡が分からないくらい、さらに積もるほど、放置されていた赤子。
泣きもせず、静かにしているところを発見した時は、死んでしまっていると思ったほどだ。
今、思い返してみればオルフの周りだけは、雪は積もっていなかったように思う。
「髪の1房が白いのですね。まるで獣の牙のよう。狼に、因んでオルフと名付けましょう」
名前が分からなかったから命名は、発見者である私がすることになった。
エルフに、因んで付けただろうと同僚に、からかわれたのを覚えている。
「皆と馴染みませんねー。オルフくん。皆と遊んでいるところを見ませんもん」
数年が経ち、シスター・パピは、皆と馴染まないオルフを心配していた。
人族に珍しいアスラ神を、いつの間にか信仰し、物静かで大人びたオルフ。
確かに遊ばすに、庭の一角で眠っているように目を閉じて、瞑想するように座り込んでいるのを、よく見かける。
他の子供達は、オルフを嫌ってるだとか虐めるだとかしているでもなく、オルフの周りには、よく集まって遊んでいた。
「誘ったりするけど。タンレン? してるとかで、遊べないんだって。でもオルフの近くは、暑い日は涼しいし、寒い日は暖かいんだよ!」
最初は猫のように、そういう場所を見つけるのが上手い子供だと思っていましたが、それは間違いでした。
思い返せば、いつも同じ場所で瞑想していたのだから。
「シスター・リョカは冒険者なんですよね?」
それから数年が経ち、子供とは思えないくらい大人びたオルフは、何処で覚えたのか分からない採取スキルで薬草や木の実、キノコなんかを取ってきて孤児院の経営を助けてくれた。
それでも経営難で、どうしようも無くなり始めた時にオルフから、そう質問された。
冒険者といっても、ゴブリンを倒すのが限界の石等級の冒険者の私に、院の経営を左右する程の収入は無いのだ。
「僕だと売りに行けないので、代わりに売りに行って頂けませんか?」
そう言って差し出された小さな掌には、私では倒せない魔物の魔石や素材が溢れんばかりに置かれていた。
「ーーっ!?? コレは!? いったい何処で!?」
「盗んできたとか、拾ってきたとかではありません。信じられないでしょうが。……全て、僕が採取のついでに倒してきたモノです」
言いたく無かったのだろう、隠しておきたかったのだろう、苦渋の表情で、オルフは告白する。
「まだ、僕の部屋に有ります。一杯、有ります。……気味が悪いでしょう? コレで院の経営が落ち着いたら、出ていきます。……大丈夫です。僕は強いので」
そう強がって言っているが、まだ七歳になったばかりのオルフが、いくら強くても保護者は必要だ。
冒険者になるにも十歳に満たなければ、後見人が居ないと魔王の間者を疑われてしまう。
聡明なオルフが、それに考えが及んでいないはずがないのに、孤児院のために秘密を告白する。
恐る恐る、オルフの差し出す魔石を一つ、つまみ上げる。
「ーーっ!?? オルフ!!? 貴方!!!」
近くで見ることで気付いたモノを確かめるために、オルフの袖を捲り上げ、シャツの胸元を広げる。
つい、乱暴にしてしまったため、魔石や素材が散らばり、その音に驚いた他のシスターや子供達が様子を見に来るが、構っていられなかった。
「ああ。神よ。御許し下さい。幼き子に。このような試練を与えてしまって。御許し下さい」
「……シスター・リョカは悪くありません。コレは、僕が勝手に始めたことです。誰かが悪いとするなら、始めた原因を作った神だけです」
孤児院には、様々な子供達が来る。
親に虐待された子、奉公先で虐めや酷使され逃げ出した子、身体に傷や怪我の跡は珍しく無いから、他のシスターや子供達は気付かなかったのだろう。
オルフは、私が見つけたオルフは、産まれたばかりの赤子だったオルフは、傷など一つも無かったのだ。
今では、何度も治っては新しく付いたのだろう、大小様々な傷が目立たないように隠してあるが、全身に刻まれたオルフを抱き締める。
「御許し下さい。御許し下さい。ごめんなさい、オルフ。孤児院のことで心配を掛けてしまったせいね。御許し下さい。ごめんなさい」
「孤児院の為だけで、ここまで身体を張っている訳では無いので、気にしないで下さい。それにしても」
エルフでも泣くんですね。 と、冗談めかして言う。
稚拙な文章を読んで頂いてありがとうございます。
次回は、明日の午後3時に投稿します。




