帰郷
「15歳前に、お世話になった孤児院に里帰りをしたいと思っております。長期のお暇を頂く許可を頂きたく存じます」
レオナ達が仕事を受けてくれる条件の一つ、今生の育ての親への挨拶の為の許可を取るために、エルネスト伯と面会する。
俺自身、節目となる成人前に里帰りは予定していたので、この条件は問題なかった。
前世の両親に会う気が無いと云うのは嘘になるが、今さら会った所で困惑させるだけなので、遠くから見守るだけに留めている。
「火山の1件以降、魔物の被害も落ち着いているし、問題ないだろう。いくら”懐刀”とはいえ、過重労働させていては、領民の心象も良くないからね」
エルネスト伯が、そう冗談めかして許可を快くしてくれた。
「とうとう、オルフも成人か。こうやって思い出さなければ、成人前だと云うことを忘れてしまうよ。それくらい君は、よく仕えている」
それはベラ嬢になのか、伯になのか、聞くだけ野暮なのだろう。
「白銀の等級は与えたが……。成人したら時期を見て、辺境伯から爵位も考えている。領地が与えられないから法衣騎士爵になると思うが。考えておいてもらえるかな?」
領地を持たない貴族は、爵位の前に”法衣”と付け、持つ貴族より下の扱いとなるが権利や権限は、基本的に同等となる。
伯の権限なら子爵まで与えられるが、男爵より下の騎士爵、領地を持たない法衣にすることで、今までの活動に問題ない配慮も忘れない。
そして受ける受けないの選択権を与えることで、こちらの事情も考慮してくれている。
「大変、有り難い御申し出ですが。私の1存では決めかねます。持ち帰り、主君と相談の上で返答させて頂きます」
貴族になるということは、今までのようにベラ嬢だけを優先する訳には、いかなくなる。
魔王討伐のこともあり、ベラ嬢の自立の為にも離れることも考える時期でもある。
「お話し中、失礼致します。エルネスト様に書簡が届いております」
話が一段落ついたタイミングを見計らったように、クラウスさんが書簡を届けに入ってきた。
実際、見計らったのだろうし、会談中に入る行為をすると云うことは、それなりに緊急か重要な書簡なのだろう。
「報告は終わりましたので、これにて失礼いたします。帰ってきましたら、1番に御報告いたしますので。それでは……」
書簡の確認の妨げにならぬよう、失礼の無いように退室する。
退室の際に見えた書簡の封蠟の印は、王族からのようだった……。
ーーーーーー
「今回ばかりは、なんと言われようと! 付いて行きますからね!!!」
「ええ、構いませんよ。そのつもりで、エルネスト伯に御報告しましたから」
今回も置いて行かれると思っていたベラ嬢が、今回こそは!! と、息巻いて宣言したが肩透かしを喰らった顔をする。
別に戦いになる訳でもなく、伯にベラ嬢の領地の運営代行の手配も御願いしてある。
「ええ? 今回は、新しい妾を増やす気は無いの……? いや!? でも……」
何やら失礼なことをブツブツと呟いているが、無視しよう。
「火山! 温泉!! 美味しい料理!!! 楽しみですわぁ! どんな所でしょう!?」
「温泉。前、入れなかった。楽しみ」
故郷の極東の領地・ギャバンは海に領地の大半が突き出しており、漁業が盛んな上、大小の火山が点在し、タタラのように製鉄の工業、温泉などの観光業も盛んな場所だ。
「変わった刀剣や防具が有るんですよね? 違う地域の鍛冶技術に触れられるなんて!!」
「普通は温泉に喜ぶのに、お前って奴は……。まあ、そこが良いっつうか。アタシは、温泉初めてだから楽しみだぜ」
「メイド長として、屋敷を守らなければイケないのに……。行きたい。でも、行けない。うがぁぁ!!」
「土産は、よく切れるって噂の包丁で良いぞお」
今回の里帰りに付いてくる、付いてこない皆の会話を聞きながら、故郷に思いを馳せる。
「今の貴方の育った処が、どんな場所か楽しみ。貴方を育てた人が、どんな人か楽しみ。そういう事を全て知って、シルバを好きになるのが楽しみ。また好きになれるのが、楽しみ」
いつの間にか隣に来て、俺に肩を寄せるレオナを見上げる。
前は見下ろしていたが、今ではレオナの方が、頭一つ分くらい身長差が有るからだ。
「僕も楽しみだよ。あの時のように、また君に好きになってもらえるのか不安だけど。あの時の約束を、今度こそは守れそうで嬉しいよ」
俺の中に残るシルバの部分を隠すことなく、レオナに伝える。
「ーーっ!? もう! 好き! 大好き!!」
感極まったレオナに抱きしめられる。
身長差、体格差によって、豊満な胸に包まれて呼吸が出来なくなる。
「オルフ!! 何してるのーーー!???」
「抜け駆け。駄目。絶対。そういうのは、最初の奥さんが済ませてから」
ベラ嬢とスノウが、その様子を見て集まってくる。
賑やかな俺たちの里帰りが、始まる……。
稚拙な文章を読んで頂いてありがとうございます。
次回は明日の午後1時に投稿します。




