前世の妻
ギャグ回です。
「信じてた。信じてた。シルバが産まれ変わるって。信じてた」
熱っぽい視線を向けながら、涙ながらにレオナが、しな垂れかかってくる。
ベラ嬢やヒルダさんが見たら怒り心頭な光景だが、スノウは気にせず無表情を崩さない。
魔狼とエルフも種族的に一夫多妻に寛容なので、まったく抵抗なく受け入れていた。
「確信したのは、匿名でシルバの両親に仕送りが来たこと」
匿名で送ったが、郵便の消印などから遡り、この都市の郵便局を突き止めたらしい。
俺と死別した後、俺との唯一の繋がりだった錬金術を病的に極め、凄腕となったレオナの引っ越しは騒動になったようだ。
ロンも幼少の頃から、製作者としてのレオナの執念を間近で見ていたため、製作者の道に進み、大成したらしい。
「俺は……シルバじゃない。もう、オルフとして生きている。やることが有るんだ。それが終わるまでは、レオナを受け入れられない。幸せには出来ない」
「構わない! 私は構わない! 生きて、また会えただけで幸せ。受け入れなくても良い! もう離れない! あの時は付いていく力が無かったけど、今は違う! それに、死んでも構わない!!!」
生前を含めて最初の妻のスノウが、レオナの覚悟に感動したのか、音もなく拍手を送る。
「オルフ。貴方の負け。連れて行くしかない。こうなると分かっていて、来たんでしょ?」
こうなる可能性を考えていなかった訳では無かったが、こうなっては仕方なかった。
ーーーーーー
「……で。どういう事か説明してくれるのよね? オルフ」
その見目麗しく可愛らしい御尊顔に、世の男性達を焼き尽くす程の微笑みを貼り付けたままの尊き我が主君のベラ嬢に詰問される。
「最近は出掛ける度に、御友人を連れてくるようで。おモテになるんですね。オルフは」
最近、お洒落に気を使うようなったようで、御綺麗になられたヒルダさんが、世の男性達が思わず二度見するような笑顔を貼り付けて追撃してくる。
昨日の今日で、新しく自称・嫁と男まで連れ込んだせいで、二人の怒りは心頭だ。
「え? え? どういう事ですか? なんで、オルフ様が責められてるんですか?」
「勇者とは。理不尽なことも解決出来る才覚が有る、神の如き存在です。それが試されているの。そういう事よ。ロン。そういう事」
仕事を受ける条件の一つとして、屋敷に住み込むことになったレオナとロン。
シルバ≒オルフだと説明されたロンは、物心が付いた頃からレオナにシルバを神の如く言い聞かされていたせいで、色々と拗らせている。
「そっかぁ」
そんな雑な説明で納得してしまっているロンの今後が心配だ。
「お! この御茶菓子。非常に美味ですわ! お代わり頂けます?」
……色気より食い気なサラの今後が心配だ。
ーーーーーー
「やべぇよ。やべぇよ」
「お代わり頂けます?」
「やべぇよ。やべぇよ」
緊迫した談話室で、サラさんの空気を読まない発言を、緊張で語彙力が崩壊した料理長のロイさんと聞く。
あんなバインバインで色気ムンムンの妙齢の美女ばかりか、男まで連れ込んだとあってはアタシでも内心、擁護できない。
英雄色を好むと言っても、年齢より若く見えるくらい可愛い顔付きだけど、芯が通った覚悟を感じさせる男前まで連れ込むなんて、擁護できない。
可愛い顔付きに似合わないくらい、鍛冶仕事で鍛えこまれた筋肉と焼けた肌が精悍な男前まで連れ込むなんて…………フヒヒ。
「お! 本当に美味しいですね。ロイさん。腕を上げたんじゃないですか?」
「やべぇよ。やべぇよ」
お? 兄貴、始める気だな。何とか出来るのか!?
「どうです? 腕を上げたと思いません? どうですか?」
「やべぇよ。やべぇよ」
で、出たーー! 今まで攻略されなかったヒルダ姐さんに、女子の憧れの”顎クイッ”!! からの……食いかけの御茶菓子を食わせる間接キスの波状攻撃!!!
「ふぁい。おいひいでふ。あがってまふ」
「やべぇよ。やべぇよ」
はい! 堕ちた!! 自分に来ると思ってなかったヒルダ姐さんが簡単に堕ちた!! すっごい顔で、ベラの姉御が見てる!? コッワーーイ!! 後、ロイさんが、ウッサーーイ!!!
「ベラ? これだけ腕が上がってるなら、私の成人の祝い菓子も任せられますね。そう思いません? 私が結婚出来る年齢になる祝いの御菓子をね。ベラ」
おっとー? 凄みを感じる! 有無を言わせぬ迫力で、ベラの姉御が壁際に追いやられる!! まさか!? アレを? アレをやるつもりなのか!!?
「このまま行けば、私の結婚のウェディング・ケーキも任せられそうですね。ベラ? 分かりますか? 私のだけでなく、ベラのだって任せられますよ。きっと」
で、出たーーー! 壁ドン・顎クイ・思わせぶりな囁き声!! 巧い!? 兄貴と姉御の結婚式ではなく、個別のことしか言ってないのに、なんて思わせぶり!!!
「……はぁい。まかせましぅぅ」
はい! 堕ちた!! ヒューー!! さっすが兄貴だ!! 巧いこと誤魔化したぜ!!!
「「「「良いなあ」」」(ケーキが)」
「本当に美味しいですね。これならオルフ様の祝いの席でも大丈夫ですよ。そう思います」
いつの間にか隣に来ていて、ハモって惚けている女性陣と緊張で崩壊したロイさん以外で、正気を保っているアタシに男前が話しかけてくる。
何だぁ? てめえ? フヒヒ。気安く話しかけんじゃねえ! 緊迫した状況が分っかんねえ、馬鹿なのか?
フヒ。近くで見ると、目力の有る男前じゃねえか! 汗臭ぇんだよ! フヒヒ。そこがまた男らしくて、たまんねえ!!! フヒヒ。
…………フヒヒ。
稚拙な文章を読んで頂いてありがとうございます。
次回は、明日の午前11時に投稿します。




