再会
今までの簡易あらすじ
魔狼→人間→人間と転生した主人公。
魔王と戦う運命を背負う、前世での恩人達の娘に仕え、代わりに魔王を倒そうと目論む。
魔王の四天王の配下を味方にし、準備が進んでいく。
『もっと、火の魔法を極めたほうが良い。お願いでもなく、命令でもなく、皮肉でもなく。ただ純粋な忠告として。後悔する前にね』
氷の女神様と違って、連絡も指示も助言もしてこなかった火の女神が久しぶりに連絡してきたと思ったら、開口一番に言う。
『自分でも自覚が有るだろう。君の中での魂の比重が大きいことに。これは僕の落ち度でも有るけど、運命に狂いが生じた時に、君を主体に転生させたのは単純に強かったからだ。魂が加護が伸びしろが、全てにおいてオスカーを超えていたからね』
いつも簡潔に、俺の疑問や困惑、不安を言い当ててくる。
『それが2度の転生を経て、歪みが起きた原因だ。思考が魔狼に引きずられているばかりか、根源が魔物に近くなっているだろう? 本当なら魔物にしか使えないはずの”破りがたき誓い”を使えた時点で分かっていると思うけどね』
氷の魔法を神の領域まで高められた時から思っていた違和感。
『魔狼の時の根源だった氷より、人間の根源である火を高めないと後悔するよ。いや、人として後悔する感情を失うことになるよ。だから、火を極めるんだ』
アスラ様が聞いていたら、激怒しそうなことを平然と言い放つ。
『アスラが、君の15歳祝いの盛大な準備をしている隙の連絡だ。人族の大部分に火の加護を与えているせいで、君に割ける余力も少ないから忠告も、コレ1回だけだよ』
『最後に、当日はアスラが1人で盛大に祝うつもりだそうだから、早いけど言っとく。成人おめでとう。オルフ。人として、真っ当な人生が送れると良いね』
最後に釘を刺して、サテラの連絡は終わる……。
ーーーーーー
最悪の目覚めだった……。
四天王の配下の中でも幹部クラスの雌火竜との戦いで、自身の能力と装備の更なる改善点が発覚し、装備を整える為に出かけようと早朝に起きることにした。
装備を整えるという男心をくすぐるイベントを前に、ワクワクな気分で就寝したのに……。
「おはよう、オルフ。うなされてた。心配。私は良い知らせが有る。風の神様から、お告げがあった」
魔狼の時の妻アスラの転生したエルフのスノウが、サンタナ様から氷の加護が追加で与えられたことを伝えられて喜んでいた。
転生前は快活で饒舌だったスノウは、種族特有の簡潔で淡泊な性質に引きずられて、口調が変わっている。
「これで、お揃い。……嬉しい。本当にパールの妻になった。……そんな気がする」
口調や表情が乏しくなったが、生前と変わらずに俺を愛してくれる気持ちは変わっていない。
強くなった事より、パールと同じ氷属性、オルフと同じ複属性になったことの方を喜んでいた。
腕が、脚が無くなっても動揺しないと言われるエルフの瞳から流れる喜びの涙を拭って、落ち着くまでスノウを抱きとめる。
二人で出発の準備をして、玄関に向かう途中で談話室から声が聞こえて来た。
「もう屋敷には慣れた? サラさん」
「慣れましたわ! イザベラ。火の魔力は少ないですけど、料理は美味しいですし、屋敷の方々は親切ですし。私、大満足ですことよ!!」
我が主君であるベラ嬢より歳上に見えるが、六歳程であることが発覚したサラが仲良く会話していた。
呪いによって、俺に敵対することを禁じられた雌火竜が亜人として、屋敷に迎え入れられた。
「あら? オルフ。もう行くの? 貴方達2人の脚なら、昼頃でも間に合うと思うけど」
「イザベラ様。装備を依頼する職人達の好物らしい猪の新鮮な肉でも手土産にしようと思いまして。早めに、お暇させて頂きます」
エルネスト伯の都市に越してきたという凄腕の錬金術士と鍛冶師は、大の爬虫類と吸血鬼嫌いとの噂なので、サラは留守番だ。
「サラ。留守は任せる。イザベラ様と仲良くな」
「ダーリン。心配しなくても大丈夫ですわ。私とイザベラは仲良し! 仲良しですわ!」
『……妙な視線を感じるのう』
サラがベラ嬢に危害を加える理由だった宝剣・フランベルが、サラの熱視線を感じて冷や汗をかく。
敵対しなければ良いのだから、合法的に仲良く、友好的に交渉でフランベルを手に入れようとベラ嬢に取り入る”貪欲”なサラ。
「二人だけの逢瀬。楽しみ」
イェーイ、とVサインを出しながら、無表情を崩さないスノウ。
ピシリッ!! と、音を立てるティーカップ。
「………………」
スノウとサラを冒険者時代の知り合いだと紹介したが、二人は俺の妻だと言い張っている。
笑顔で、壊れかけのティーカップを持つベラ嬢から鬼神のような圧力を感じる。
……早く、行こう。
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道中で狩った猪を解体し、氷魔法で冷やしながら、エルネスト伯の都市に昼頃に着いた。
ちょうど食事時なので喜ばれるだろうと足早に、目的地に向かう。
「此処?」
スノウが怪しげな色の煙を上げる、郊外に在る錬金術士と鍛冶師のコンビが経営する工房を興味深げに眺めながら聞いてくる。
「……腕前は分からない。けど。センスが良い。分かってる」
ーー共同工房・氷の白狼・ーー
辺境の村出身の若き錬金術士と鍛冶師二人組の共同工房。
かなりの偏屈で変わり者という噂で、仕事を選ぶが腕は確か。
店名は、村の守り神から命名したらしい。
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工房から煙がモクモクと上がっているのを見ると、まだ食事前のようで良かった。
「頼もーーう」
ババーン! と、効果音が出そうな感じの勢いで入店するスノウ。
「はい。いらっしゃいませ。御用は何でしょうか?」
茶色の髪をした若い二十歳程の男の青年が対応する。
噂では、男の方が鍛冶師という話なので、作業の煙は錬金術師の方が出しているのだろう。
「……センスが良い。アスラ様の像が有る。……サンタナ様のが……無いのは減点」
店内に並べられたドン引きする量のアスラ様の、少年の、狼の像に対するスノウの反応は淡泊だった。
俺は予想通りというか一度、似たことを経験しているので無反応。
「……驚かれないんですね。初見のお客さんは皆さん、驚かれるのに」
「噂に聞いてましたし、慣れてますから。……コレ、よろしかったら。来る途中で狩った猪です」
何の反応も示さない俺達を不審がる鍛冶師に手土産を渡す。
「わあ! ありがとうございます! ウチの錬金術師の好物なんです。猪。お昼にピッタリだ」
「シチューが良いわ。商談は長引きそうだし出来る頃合いには、注文も聞き終えて昼を御一緒出来そうだしね」
作業を終えたのか、工房の奥から若く妖艶な女錬金術師が出てきて、鍛冶師にリクエストする。
「大きい。レミ以上?」
種族的に慎ましいエルフの胸部を抑えながら、屋敷で一番の胸部装甲のメイドと比べているようだ。
「分かった。せっかくの手土産ですから、お昼をご一緒にどうぞ。注文は彼女が聞きますから、私はシチューの材料を買ってきますね」
彼にとっても、猪は村の御馳走だから好きなのだろう。
足早に買い出しの支度をして、出て行った。
「人払いをしなくても良かったんだが。……ロンに話してないのか?」
「あら? 私が気づいてるって分かったの? 分かってるのよね。分かってる。誰にも話してないわ。ロンには、シルバの生まれ変わりを信じてるとしか言ってない」
輪廻転生は、人族の間では良くある死生観として定着してるので問題は無い。
「全てを話してくれても構わなかった。君が話していいと判断したのなら、それを尊重しようと思っていたよ」
「久しぶり で、良いのかな? レオナ。綺麗になったね」
稚拙な文章を読んで頂いてありがとうございます。
次は、明日の午前9時に投稿します。




