忘れえぬ懐かしき思い出
予約投稿です。
「貴方には感謝していますが自己紹介くらいしたら、どうです!? 私達は、貴方の名前すら知らないのですよ!?」
シルバから、何の獣人か分からなかったヒルダさんが、今の生で産まれた地方のシバ犬の獣人なのだなと思っていたら怒られてしまった。
血が薄いのか獣の要素が少なく、帽子を深く被って獣耳を隠していたので、詳しくは聞かなかったから分からなかったが、今は隠すのを止めて髪も伸ばしたようだ。
「これは失礼しました。極東生まれのオルフと申します。歳は12。孤児院育ちの冒険者で、等級は黒鉄です」
冒険者の等級は下から、木、石、鉄、黒鉄、銅、銀、金と分別され、細かく白銀や白金、聖銀なんかが有るが割愛した。
「お父様が亡くなった直後に産まれた。しかも、以前の領地から離れた処で育ったのに、恩とは?」
イザベラ嬢が、当然の疑問を口にする。
「それについて、詳しく答えるつもりは有りません。ただ、今の私が存在するのはオスカー様、アレクセイ様の存在が有ったからこそだとだけ、お答えします」
【偽装】(偽)を使っても良かったのだが、嘘や偽りを答えたくなかった。
高潔で誠実だった二人の血を継ぐイザベラ嬢に対して、こちらも出来うる限りの誠実さで応えたかったからだ。
「お疑いなのは分かります。ですが決して、イザベラお嬢様を悪くは致しません。それは私が信仰するアスラ様の名に懸けて、誓います」
「分かりました。オルフ。貴方に助けられなかったら、どん底に行くしかなかったのですから、信じましょう」
イザベラ嬢は素直に俺の言うことを信じてくれたが、ヒルダさんからは監視するような視線を感じていた。
言葉ではなく、これからの行動で信頼してもらおうと思う。
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現当主、七代目アンディ・ヴォルフとの決闘の為、遊び歩いて寝にしか帰って来ない本宅で待ち構える私達。
「貴方には感謝していますが自己紹介くらいしたら、どうです!? 私達は、貴方の名前すら知らないのですよ!?」
会った時から、この少年を完全に信用しきってしまっているベラお嬢様の代わりに、当然の疑問を投げかける。
返ってきた答えは簡潔で、疑問全てを答えてはいないけれど、誠実に答えようとしているのが分かった。
私自身も見た瞬間から、オルフのことは信頼出来ると思ってしまったが、聞かなくてはいけないことだった。
オルフは、あまりにもシルバに存在感が似ていたから
血が薄かったのか、獣人としての要素が耳と尻尾くらいしかなかった私は、物心が付く前に捨てられ、育てられた孤児院のパトロンだったアレクセイ様にメイドとして雇われた。
捨てられた要素が恥ずかしくて、配膳や洗濯の時に着ける帽子で耳を隠し、ロングスカートで尻尾を隠して働いていた。
アレクセイ様の恩義に報いる為に真面目に働いているのが評価され、ベラお嬢様が誕生したら専任を任される話が出た頃に、シルバが新入りとして来た。
「この度、兵士見習いとして入りました。シルバと申します。よろしく、お願いします」
ユニーク・スキル持ちで、見習いではなく正規の兵士としての採用だったのだけれど、シルバは謙虚に見習いとして屋敷全員に挨拶をしてきた。
私の中の少ない獣人としての野生が、シルバを圧倒的な格上だと、会った時から感じていた。
まだ十歳の少年を、兵士の皆さん、アレクセイ様以上の格上だと。
あの時以上の衝撃を、オルフから感じ取っていた。
『困ったことがあったら、ベラよりも若い騎士が助けに来てくれるわ』
シルバから転生のことを聞かされたアレクセイ様が、グレタ奥様に話されたらしく、ベラお嬢様に語っているのを何度も耳にしていた。
内緒ね。 と、グレタ奥様に聞かされたが、私自身が半信半疑だったので、誰にも言わず、信じてもいなかった。
今は信じても良いと思っている。
人族には少ない、シルバと同じ氷属性。
人族には少ない、シルバと同じ信仰の神。
なにより、あの頃と全く同じ味の紅茶。
シルバがアレクセイ様の近衛に抜擢された時に、故郷での淹れ方を応用して淹れてから、それしか飲まなくなった味。
シルバがオルフになって、帰ってきたのだ。
誰隔てなく優しく、強く、賢く、格好良かったシルバが!
故郷に婚約者が居ると聞いて、密かに諦めたシルバが!!
独身になって帰ってきたのだ!!!
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何故か、寒気がした。
大事な戦いの前に風邪か?
「イザベラお嬢様。そろそろ来ます。手筈通りに」
七代目達が酒に酔っているのだろう、けたたましく扉を開けて勢い良く入ってくる。
「ガハハハハハ!! ……? なんだぁ? お前ら」
赤ら顔の集団が、俺達を発見して警戒する。
さあ、決闘の始まりだ!!
稚拙な文章を読んで頂いてありがとうございます。
誤字脱字は、次の章を始める時に直すので遅れます。




