謎の少年
予約投稿です。
貨幣が出てきますが、ナーロッパ(中世ヨーロッパ)らしく大雑把です。
銅100円。銀4000~8000円。金10万円くらいと考えて下さい。
それぞれ大中小と種類が有りますが、ざっくりな基準として。
前書きに書いたのは、地の文が基本的に登場人物なので、描写すると不自然になると考えたからです。
(間に合って……良かった。本当に良かった!!)
苦難に見舞われているだろうイザベラ嬢を救うために、転生をして、実力を付け、資金を貯め、考えうる限りの準備を最短で積み重ねてきた。
正直なところ、まだ色々と準備をしたかったのだが、生前から肝心な部分で油断やミスが多いので用心して正解だった。
妻のアスラの死、毒と見抜けず死亡、諦めてもらうつもりがプロポーズ、モータルの悪足掻きを予測出来ずにアレクが死に。
その上、アレクの忘れ形見まで疵物にしたとあっては、死んでも死にきれない。
「まず、俺の恩返しのために、1度だけ戦って欲しい」
イザベラ嬢に戦いの場に立ってほしくなかったグレタ奥様には申し訳ないが、一度だけ戦ってもらわなければいけない。
今の状況を打開するために爵位を、当主の座にイザベラ嬢を据えなければいけない。
何も聞かずに、ただ頷いてくれたイザベラ嬢に感謝しかない。
「おい!! お前! 僕ちんに、こんなことをしてタダで済むと思うなよ!!!」
俺の氷の魔法で足元が凍り付き、身動きが取れないガマガエル達が何やら喚き散らしている。
「その程度の拘束を解けない実力で俺を、どうにか出来るのか?」
「舐めるなよ! 平民風情が!! 僕ちんの実力を見せてやる!!」
ガマガエルを中心に火の魔力が迸り、護衛達の拘束の氷もろとも溶かし、拘束を脱した。
貴族の嗜みとして、一応の武芸、この場合は魔術は修めていたようだ。
「選ばれし者の氷の牢獄」
「ぐわっ!?」「うわっ!?」「痛ぇ!!」
だから、何だ? と、次なる魔法を畳みかけ、拘束が解けて暴れようとする護衛達を制圧する。
範囲内に敵意、戦意の有る相手に当たると破裂する雪を降らせて閉じ込める。
以前に使った魔法の合わせ技で、殺傷能力が格段に低いが持続力が長く、こういった拷問事に適している。
「この魔法は敵意に反応して起動する。降伏して武装解除すれば、これ以上の追撃はしないと約束しよう」
「痛ぇ!」「出られねぇ!!」「寒い!!」
次々と武装解除して降伏する中、ガマガエルだけが粘っていた。
氷を溶かした時のように全身に火の魔力を帯びて、雪を溶かして抵抗しているが
「気が済むまで。お前の魔力が切れるまで、そうしているが良い」
常人が触れば火傷する程の魔力を帯びたガマガエルの首根っこを掴み、持ちあげる。
まだ少年の体躯なのでガマガエルは、つま先立ちを強いられる格好で動けずにいた。
「イザベラお嬢様に手を出した時点で万死に値するが、お前には利用価値が有るから殺さないだけだ。あまり手間を掛けさせるなよ」
まさしく蛇に睨まれた蛙のように大人しくなったガマガエル達を縄で縛った後、割れた果実酒の残骸を片付けてから言う。
「今後のことを相談したいのですが、立ち話もなんですから、お茶にしましょう」
ーーーーーー
信じられない光景をヒルダと共に、茫然と眺め続けていた。
私よりも年若い少年が、希少な氷属性の魔法を使うだけでなく、大人顔負けの魔力と身体能力で、瞬く間に制圧をして見せた。
貴族に仕えていた経験が有るのか、作法の行き届いた所作で紅茶を入れ、私とヒルダとガマガエルに振舞う。
「ーー!? この味は」
ヒルダが紅茶に口を付け、何か感じたようだ。
「……美味しい」
ヒルダが淹れてくれる紅茶と、全く同じ味だった。
母が好きで、覚えてはいないが亡き父が好きだったという紅茶の味と同じだった。
「……気に入ってくれたのなら、幸いです」
先ほどまでの荒々しい雰囲気が消え、慈しむような、今にも泣きだしそうな表情で、彼は嬉しそうに言う。
「これから、イザベラお嬢様には現当主と決闘して頂きます。正式な条件も揃いましたし」
貴族の決闘には色々な制約が有る。
命を賭けるに値する対価、侮辱、正当性が有るか、決闘方法に問題は無いか、それを判断する立会人が居るか。
「僕ちんは、現当主に金貨50枚も貸してるんだぞ!? 当主交代の手助けなん「無償とは言いません」
懐から百枚近くの金貨の入っているであろう袋を無造作に、元・婚約者の前に叩きつける。
「この辺りを治める辺境伯にとって素行の悪い現当主と貴方は、目の上の瘤でしょう。急な病死なされたら喜ぶのでは? こちらとしても正式な手段を取りたいだけで、病死でも良いのですよ?」
仮に私が、彼が来る前に当主の座を力づくで奪ったとしても、その後の借金や領地運営なんかで失敗するのは目に見えていた。
辺境伯の立場にしてみたら、正式な手順を踏まないばかりか失敗する私に任せるより、最初から反逆の罪で捕らえて、爵位と領地を剥奪したほうが簡単で良いのだ。
「辺境伯とは、今後も良好な関係で居たいだけです。お嬢様の邪魔になるなら」
辺境伯も倒すだけだ。 と、暗に語っていた。
それを出来るだけの実力を、出来るだろうという実力を、私より若い少年が醸し出していた。
なぜなら、お茶会が終わる時まで彼の魔法は、発動し続けていたのだから……
稚拙な文章を読んで頂いてありがとうございます。
誤字脱字は、次の章を始める時に直すので遅れます。




