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作者: 高橋 耶那

 雪が、降り続いている。


 暖かい部屋から、窓の外を眺める。気温の差によって曇った硝子の向こうに、白い世界が広がっているのがわかった。


 見ているだけで寒い気がして、ぶるりと身を震わせて窓から視線を外した。


 湯気をたてている緑茶を飲みながら、そういえば、と思い出す。


 “あの子”は、今年もここに来るだろうか。


 決して全身が白い訳では無いのに、「真っ白」という言葉が一番似合うあの少年。その姿を思い浮かべて、ふふ、と微かに笑った。


 ──雪の妖精みたいだ。


 毎年雪が降る日に、変わらない姿で現れるあの子を見ていると、もしかすると本当に──、なんて、考えてしまう。いや、私の中であの子は既に、妖精なのかも知れない。


 年を取らないように見えるのは何かの病気だからで、そんなのはただの妄想なのだと、頭ではわかっているのだけれど。


 ああでも、私が16歳になってからここ数年は、あの子を見ていない。何処に行ってしまったのだろう。あの子は自分のことをあまり喋らなかったから。


 でも、そんなあの子が一度だけ、自分を「雪だ」と例えたことがある。直ぐに消えてしまう、儚い命なのだと。君もそうでしょ、とあの子は窓越しに微笑みながら言った。


 あのときは私もまだ幼くてよくわかっていなかったけれど、今ならわかる。あの言葉の意味が。


 真っ白な少年は、訪れる度に歌ってくれた。その歌を聞くと、私の澱のように溜まった寂しさが、熱を持ってほどけていくようだった。


 とても幻想的に歌うあの少年は、確かに私の救いだったのだ。


 今年は来てくれるだろうか。もし来てくれたら、あの歌をねだってみようか。


 もう一度、聞かせてくれるだろうか。幼い私が美しいと感じた、あの調べを。




 ねえ、奏多。あなたは今──。






 無機質な「白」に囲まれた部屋から、窓の外を眺める。雲の切れ間から太陽が顔を出し、白い世界を輝きに塗り替えていくのがわかった。


 暖かな光に包まれながら、少女は静かに目を閉じた。

 初めて書いた短いお話ですので、若干わかりづらかったかもしれません。

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