after:夢の始まり 裏
夢を見た。
いくつもの私。今の私とは異なる道を歩いた私を。
現実では数時間でしかなかったのかもしれない。
でも私の主観では数え切れないほどの様々な夢だった。
「……っ、はあ、はあ、はあ」
混乱し、飛び起きる。
ショックからだろうか、呼吸が落ち着いてくれない。
「……はあ、はあ、……ぅう」
自分の体を抱きしめ、震える。
頭に浮かび上がるのは、悲しい道を選んでしまった私の姿だった。
真を騙している事に耐え切れず、罪悪感から真の記憶を消し、出て行ってしまった私。
洗脳を解かず、真の『親友』である事を選び、その結果真が別の女と仲良くしているのを見ていることしか出来なかった私。
そんな私の姿が、こうしている今でも目を瞑ると浮かび上がってくる。
「……ぅうううう」
震えが止まらない。
怖くて怖くて仕方がなくて、今にも泣いてしまいそうになる。
……真に会いたい。
今すぐ顔を見ないと、耐えられない。
固まってしまいそうな体を無理やり動かして、ベッドから下りた。
◆
衝動のままに、真の部屋に入り、ベッドに潜り込む。
そして、真の胸の辺りに縋りついた。
「……え、ユウ?」
布団の中で震えていると、すぐに真が目を覚ました。
そして布団をめくり、私に気付く。
「ユウ、どうしたの?」
「……」
真が質問をしてくるけれど、答えられない。
私自身、全く頭の中が整理できていないのだから。
何も言えず、ただ、真にすがりつきながら震えることしか出来なかった。
「……?」
――と、そこで背中に熱いものを感じた。
そして、それがゆっくりと私の背中をさすってくれる。
真が、私の背中を撫でてくれていた。
背中から伝わってくる真の体温が暖かくて、不安が解けていくかのようだった。
「……」
段々と、体の震えが収まっていく。
めちゃくちゃだった心が、少しづつ落ち付いていった。
「……ユウ、大丈夫?」
「……うん、ありがとう」
――ああ、あったかいなあ。
真にすがり付いている体に力を入れ、体を真に押し付ける。
さっきまで怖くて震えていた事も忘れて、無性に真に甘えたくなってきた。
「……真」
「なに?」
「……背中、ポンポンってして欲しい」
「ああ、いいよ」
真が優しく私の背中を叩いてくれる。
体の奥がむずむずするような感じがして、とても気持ちが良かった。
「……はふう」
大きく息を吐いた。
そして、真にもう一度強くすがりつくと、口を開いた。
「……夢を、見たの」
「夢?」
「そう、嫌な夢とか、楽しい夢とか、とにかくたくさん」
いくつか例を挙げて、真に夢を説明していく。
悪い夢、いい夢。
記憶にある多くの夢の中から特に辛い夢と印象的な夢をいくつか話した。
「それで、悪い夢が、怖くて」
「……そうなんだ」
真が一つ頷く。
そして手を回して私を強く抱きしめてくれた。
「……真」
「ユウ、僕にはユウがいてくれれば、それだけでいいんだ」
真の言葉が胸に響く。
本当に、言葉に出来ないくらい嬉しくて、泣きそうになった。
「……真」
こちらからも強く抱き返す。
そのまま、夜が更けていった。
◆
次の日。
目が覚めると、真の腕の中にいた。
「くっふふふふ」
幸せで、思わず笑いが漏れる。
しばらくそのままで楽しんだ後、名残惜しい気持ちを抑えて抜け出した。
立ち上がり、真の寝顔を見る。
「くっふふふふふ」
こっそり真の頬にキスをし、部屋を離れた。
◆
それにしても、と思う。
あの夢は何だったのだろう。
普通の夢ではなかった。もっと特別な何かだ。
「……もしかしたら」
かつての事と関係があるのだろうか。
あの、聖女だった頃と。
夢見の力。
本来見えないものを見る力だ。
もしそうだと言うのなら、これからもあのような夢を見ることがあるのかもしれない。
「……でも、大丈夫かな」
昨日は怖かった。
でも、今日の私は真が傍にいてくれると言う事を知っている。
いざと言う時に、真が抱きしめてくれると言う事を。
軽い足取りで廊下を歩く。
そして真のご飯を作るために、キッチンへと入っていった。
もしかしたらこれからの投稿は
今回のような形で、“IFの話+それを見たユウと真の話”のような三本仕立てになるかも知れません。
とはいってもまだ未定なのでそうならない可能性も高いです。




