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秋缶

作者: 煤屋文親

 もう自分に気持ちが向く事は無いと分かりきっている。


 それでも愛しい人の声を聞く度いつも思い出す。


 昔、まだ幼い頃に。大事に舐めていた缶に入った飴の事を。


 君の声はその飴玉の様に可愛くて、甘い。


 声を聞かせてもらう度に大事に味わう。自然と顔が綻んで、声も浮かれる。


 大切で大事で。噛むなんて事とてもできない。飲み込む事もきっとできないんだろう。


 今はまだ缶を振れば賑やかに音がする。ひとつ出しては振って、ふたつ出してはまた振って。そんな日々をもうしばらく続けている。


 最近は缶を振ってみてもカラカラと寂しい音がするようになってきた。


 終わりが来るのは分かりきっている。それでも思う。


 僕から君がなくなりませんように……。



 最後のひとつ、飴玉ひとつ。缶から音が無くなった時。


 僕はどんな風にその一粒を味わうんだろうか。


 それはどんな味なんだろう。


 怖くて、今はまだ……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 優しさが伝わります。素敵ですね
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