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画一化された世界で僕は。  作者: ティーダ
1/1

アベレージチャイルド ①

よく晴れた、夏の日の昼下がり。


毎年のようにテレビでは異常気象だと騒ぎ立てているが、今年もご多聞にもれず、やはりありえないほどの熱気が日本全土を覆っていた。


道行く人はみな、まるで水やりを忘れられた朝顔のようにぐったりしている。40度を優に超える気温に、みなだいぶ参っている様子だった。


(今日も、相変わらず暑いなあ。

早く終わりやがれ、この夏クソ野郎)


灰田は、校庭に面した窓に肘をかけ、下敷きをうちわがわりにして涼をとりながら、この殺人的な暑さに頭の中で悪態をついた。


じんわりと滲み出た汗で、シャツは胸元に気持ち悪くへばりついている。


早く涼しい教室に戻りたかったが、この時間は”デザインド”の奴らがでかい顔して教室でくっちゃべっている。


灰田は、どうせ不快な思いをするなら、まだこの暑さの方がましだと、廊下に出てきたのだった。


そのまましばらくぼーっとしていると、校庭から女の子の楽しそうな声が聞こえてきた。そちらに目をやる。


どうやら午後の体育の授業を準備しているようだった。


(あ、由紀先輩だ。)


校庭からは何メートルも離れているのに、すぐにわかった。夏の日差しの影響で、先輩の鮮赤の髪はいつも以上に目立って見えたからだ。


走高跳のバーを受ける棒状の機具を片手で悠々持ちはこびながら、となりの同級生と話していた。


(相変わらず、たのしそうなひとだ。)


灰田は入学式のとき、”アベレージ”の自分に、なんの躊躇もなく話しかけてくれた先輩に興味を持っていたのだった。


ふと、先輩は校舎側に目を向けた。

灰田と目があった。

髪色と同じ、真っ赤な瞳だ。


軽く笑みを浮かべながら、ひらひらと手を振ってくれた。


太陽みたいだな、と灰田は思う。

思わず、振り返そうとする。


が、少し考えてからやめた。

見て見ぬ振りをして、その場から立ち去る。


先輩はデザインドの中でも特別なのだ。

関わりを持つのは、先輩にとっても、自分にとっても

よくない。


少し悲しそうな先輩に背を向け、灰田は教室へと戻った。




(つづく)








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