第18話
すぐには内容の意味が理解できない。
「……え?」
重ねて疑問の言葉を発した私を、怪訝そうな目で同期の子が見つめてくる。
「いや、だーかーらー! モテモテになっちゃうんじゃ?って話!」
1つ1つの単語を自分の中で噛み砕き、味わい、ようやく彼女が何を言っているのかを飲み込んだ。
「えええええっ!? いやいやいやいや! そ、そんなの! ありえない、ありえないから!!」
意味がわかるや否や、ありったけの力で否定をする。
カッと頭に熱が上がった。
一体なぜ、彼女はそんな起きもしない例え話をするのだろうか。
指摘されなくても、顔が赤くなっていることがわかる。
「ありえなくないよー。だってさ、堀田さんってすっごい気が効くじゃん」
「え、いや、そんなことは」
体中から湯気が立ち上りそうな気さえする。
恥ずかしくて居た堪れない。
今すぐにでも消えてしまいたい。
「人が嫌がること……っていうか、避けがちなことも進んでやるし」
「そそそ、そんなこと!」
まさか内面を褒められるだなんて、思ってもみなかった。
両手をわちゃわちゃと振って、ジェスチャー大きく否定をしたら、ガチャンとテーブルの上のお盆が派手な音を立てた。
「あっ!」
手に鋭い痛みが走ったのと同時に、味噌汁の椀が床へ落下する。
「あ~……」
白いリノリウムの床に、茶色く大きな染みが広がった。
(まだ手をつけてなかったのに……)
もったいない気持ちと申し訳ない気持ちとで、思わず心の底からため息が漏れる。
「ああ、布巾……じゃなくて、雑巾だね」
立ち上がって手伝ってくれようとする彼女を制し、自業自得だからと言って、片づけを始めようとした時だった。
「あ、手伝いますよ」
「こぼしちゃったんですか?」
「大丈夫です。俺達、掃除得意なんで!」
近くの席に座っていたらしい営業部の男性社員が、競うように作業を開始する。
そしてあれよあれよという間に、床の上は元どおり綺麗になった。
「あ、ありがとうございます……」
あっけに取られた私は、結局片づけの様子をぼーっと突っ立って見ているだけだった。
それなのに―――。
「あ、いいですよ。気にしないで!」
「俺達、お役に立てただけで本望なんで」
「いつでも頼ってくれていいっすよ」
未だかつて男性に向けられた経験がないほどの、眩しい笑顔を向けられる。
一瞬、自分の身に何が起きたのか、すぐには理解できなかった。




