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第17話

朝からずっと、普段の倍以上の速さで時間が流れている気がする。

仕事が急に増えたわけではないし、電話の対応に追われたわけでもない。

ましてや、突発的な事件や事故が起きたわけでもなかった。

ただただ、私の意識が変わっただけ。

ただただ、ぼうっと作業をこなすだけだったルーティンワークの1日が、実は新鮮な驚きと感動に満ちていたのだと、ようやく気づいただけ。

「堀田さん、本当に彼氏ができたんじゃないの?」

興味津々、といった体で身を乗り出すように聞いてくるのは同時期に入社した他部署の女子社員。

「ううん、本当にそういうんじゃないの。ただ、ちょっと、いろいろな人にアドバイスしてもらって」

50人は優に入る社員食堂はお昼時ともなると、入れ替わり立ち替わり、多くの人が行き交う。

すれ違う中には名前を知らない人はもちろん、所属部署すらあやふやな人がほとんどだ。

「そうなの? でも、本当にびっくりしちゃった! 今朝見かけた時は、季節はずれの中途採用の人かと思ったもん」

昼食をとるタイミングが合えば、こうして同期の社員と一緒に食べることもあったけれど、今までは基本的にほとんど1人だった。

目立たないようにフロアの隅の方で、胃に食べ物をおさめる感覚でしか、ランチをとっていなかった気がする。

こうして会話を楽しみながら家族以外の人と食事をするなんて、久しぶりかもしれない。

「そう、かな……。そんなに変わったかな?」

面と向かって褒められると、やっぱりまだ恥ずかしい。

私はぽりぽりと額をかきながら、照れ隠しの笑いを浮かべる。

「うんー! まるで別人だよ。髪型変わっただけで、ここまで雰囲気が変わる人も珍しいんじゃない?」

食べる手を止めてまで、私なんかのために力説してくれる姿が嬉しい。

「そっか……ありがと……」

自然に左右に緩む頬を止められない。

くすぐったいような、温かい気持ちが胸いっぱいに広がった。

(やっぱり、メガネは家に置いてきて正解だったわ!)

「―――でもさぁ」

いい加減、私も箸を進めなければ、と定食の焼き魚に手をつけた時だった。

「ん? 何?」

今まで興奮に目を輝かせていた同期の彼女が、急に冷静な声でヒソヒソと囁いてくる。

「……堀田さん、これからかなり、モテちゃうんじゃない?」

「は……?」

聞きなれない単語のオンパレードに、しばし思考が停止した。

(なんですと―――?)

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