第11話
戸惑いを隠して、笑顔を作る。
「早速、明日から着ます!」
自分では決して選ばない、淡いラベンダー、スモーキーなピンク、小花やアニマルなどのプリント柄など、華やかな色合いの洋服。
これを着た自分の姿なんて、想像もつかない。
(でも、こんなにも、応援してくれる人がいる……)
私に協力したところで何の得もないはずなのに、ここまで親身になってくれるなんて。
(月曜日、メガネを取って、プレゼントしてもらった服を着て、出社してみる……?)
オフィスではどうせ制服に着替えてしまうけれど、誰かのためではなく、自分のためにおしゃれに挑戦してみたい。
一進一退だった私の「自分改革」が、2人のおかげで大きく動き始めた。
いつもの地味な私を知っている人の前で、新しい自分を披露することは、純粋に怖いと思う。
「急に色気づいちゃって、全然似合わないのに」
「身の程を知らないって、ああいうことを言うのね」
「髪型や服を変えたところで、モテるとでも思っているの?」
何をやってもいつも私を否定する心の声が、ここぞを頭をもたげるのを、意志の力で押さえつける。
(変わるって……自分を磨くって決めたんだから!)
普段の私を一番知っている人逹に、新しい自分を見てもらう。
(注意や指摘をもらったら、ステップアップのための助言と思おう)
ヘルプのアルバイトと自分磨きを両立させて、自分の知らない可能性や伸び代を、最大限活かしてみたい。
「あ、あのっ!」
談笑していたあかりさんと御影さんの前に進み出ると、勢い良く頭を下げる。
「ありがとうございます! 私、頑張ります!」
一体、何をどう頑張るのか。
あまりにも説明足らずだと、頭を下げた後になって気づく。
(何やってるの、私~!)
冷や汗をかきながら顔を上げ、目にした光景に私はハッと息をのんだ。
「―――楽しみにしているわ」
ノーメイクだというのに、昨夜の艶やかさそのままの微笑み。
本格的に夜の世界に入るつもりなんてさらさらないはずなのに、あかりさんの妖艶な魅力に引きずり込まれそうになる。
「は、はい!」
私は魅入られたように彼女に釘付けになったまま、再び勢い良くお辞儀をしたのだった。




