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第07話

(こういう時、ただただ自然に、状況を楽しめる人間になりたい……)

何事においても、基本、最初はすべて「警戒」から入ってしまう。

ある程度「観察」して、状況が自分にとって安全だと安心できない限り、誰に何を言われても、ずっと緊張を解くことができない性分だった。

(でも……いい変化は受け入れるって決めたし!)

この先、信頼できる人から勧められたことは、積極的に生活に取り入れる。

できる範囲で、自分のネガティブなところを直していく。

ざっくばらんに相談できる、友達・親友を作る。

もっと自分の外見に興味を持って、磨く努力を怠らない。

(よし!)

私は心の中でグッと拳を握ると、個室のドアの前で待つあかりさんの元へと小走りで駆け寄った。

(坊主がお似合いです、って言われても、真っ向から否定するのは避けよう)

「すみません! こんなおしゃれな美容院なんて初めてで、なんだか気後れしちゃって……」

自分の野暮ったさや経験の少なさを、笑ってごまかす。

我ながら卑屈だなと思ったけれど、あかりさんはまったく意に介さない様子で、

「大丈夫よ! そんなのすぐに気にならなくなるから」

と、私の背中を押しながら、個室の中に入った。

「いらっしゃいませ!」

部屋に入るなり、記憶の中でまだ新しい声が耳に飛び込んでくる。

どこかで聞いたことがあると思ったら、それもそのはず。

目の前でにこやかに微笑む男性は、昨日、私に魔法をかけた張本人・御影さんその人だった。

「こ、こんにちは……」

明るいライトの下で見る彼は、こちらが気後れしてしまいそうなほど、業界人のオーラを発している。

(こんなにおしゃれな人に、髪だけじゃなくメイクまでしてもらってたんだ、私)

今になって、全身に緊張が走った。

「そんなに怯えなくていいから」

ガチガチに固まったままの私に、御影さんは、さながらメンソールガムのCMのような爽やかさで微笑む。

「麦ちゃん、本当におぼこいわねぇ」

呆れを通り越して、感心する声であかりさんが呟いた。

(穴があったら入りたい~!)

冷や汗をかきつつ、2人に勧められるまま、個室の中央に鎮座している椅子に座る。

目の前には全身を写してもまだ余裕がある、壁のような大きな鏡。

メガネを失った私は、いつにも増して自信なさげだ。

「今日はコンタクト?」

「あっ、いえ! あれ、伊達メガネなんで……」

まさにこの瞬間、心の中で思い浮かべていたキーワードと同じことを話題にされ、ついつい、告白しなくてもいいことまでも口を突いて出た。

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