第17話
次もよろしくと言ってもらえたのだから、今日の反省点はせめて克服しておきたい。
自分の手で、このヘアメイクを再現することは無理かもしれない。
無理かもしれないけど、私に似合うメイクがどんなものなのか知りたい。
そして何よりも―――。
「ちゃんと、自分を見てあげたい……」
私が持っている可能性を、しっかり自覚したい。
見た目はもちろん、内面にだってまだまだ磨き足りない部分がたくさんあるはず。
思い起こせば思春期の頃から、私は自らの手で作った根拠のない呪縛に、ずっとずっととらわれてきたのかもしれない。
どうせ私は、可愛い服やおしゃれなファッションは似合わない。
どうせ私は、才能がないから失敗ばかり繰り返す。
どうせ私は、綺麗じゃないから彼氏もできない。
(急に自分を変えることは、簡単にできないかもしれないけど)
私は鏡の中でまっすぐに自分を見つめる、自分自身に大きく頷いた。
(もっと自分のこと、しっかり把握しなくちゃ……)
銀座のクラブでのアルバイトは、きっと神様からのプレゼントなんだ。
苦手なことを克服して、ステップアップするための大きなチャンス。
習い事を始めたいと口では言っていたけど、真剣に教室を探すほど、本気ではなかった。
料理教室・フラワーアレンジメント・英会話と、自分磨きに夢中になる会社の先輩たちの気持ちが、今ならわかる。
自分を磨くということは、自分の可能性を引き出すこと。
お金をかけて努力して、自分を磨けば磨くほど、大きな結果が手にできるに違いない。
週に一度だけとはいえ、アルバイトから得る収入もある。
「―――よし!」
私はグッと拳を握ると、洋服に不釣り合いなメイクを落とすことも忘れ、ロッカールームを後にした。




