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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
革命が起きた日
32/65

第12話

「この子、今日からヘルプに入ってくれる麦……、ナツメちゃん。朝礼の時に改めて紹介するわね」

あかりさんに背中をそっと押され、自己紹介するように促される。

「はじめまして、ナツメです。今日からお世話になります。どうぞ、よろしくお願いいたします!」

いつもの私なら、気後れして伝えたいことの1割もまともに話せなかっただろう。

でも、今はあかりさんと御影さんに、とびきりの魔法をかけてもらっている。

「今はまだ、作法も行儀も何ひとつわからない状態なんですが、先輩方にご迷惑をおかけしないよう、1日も早くお仕事を覚えたいと思っています。何卒、よろしくお願いいたします!」

そう言って、ペコッと頭を下げた。

(ちょ……ちょっと体育会系すぎたかも?)

頭を下げた状態のまま、周囲の反応を窺う。

「……まぁ」

ポンと頭上から降ってきた声に顔をあげると、3人並んだ美女のうち一番小柄な女性は、おっとりとした仕草で口に手を当て、

「す、すご……ま、真面目……!」

一番背が高い、スレンダーな美女はお腹を抱えて笑い、

「やる気満々じゃーん!」

小麦色の肌をした美女は、私に向けて「いいね!」と親指を立てた。

(……なんだろう、この、部活みたいなノリ)

描いていたイメージがガラガラと崩れていく。

妙齢の女性ばかりで形成された、小さな世界。

しかも、己の美貌と話術だけを武器に、のし上がっていく競争社会だ。

もっとギスギスしていて、隙あらば蹴落としにかかるような雰囲気だと思っていたのに。

「あ、私、めぐみです。お店では結構長いほうなの。わからないことは、裏でこっそり聞いてね」

「私は京子よ。昼間はあなたと同じように、普通の会社で普通にOLとして働いてるの」

「私はサヤカ!このお店ではまだ私も1年目だから、アナタと同じ新人枠だよ。今日からよろしく!」

簡単な自己紹介を交わす間にも、系統の違う美女たちがぞろぞろ出勤してくる。

「あとはみんなの支度が終わってからにしましょう。お客さんと同伴して出勤してくる子もいるから、全員と挨拶するまでには1ヶ月くらいかかっちゃうかな」

あかりさんのひと声をきっかけに、御影さんとホステスさんたちが奥の部屋へと移動する。

「それじゃ、最低限覚えておいてほしい簡単な作法から、教えていくわね」

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