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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
革命が起きた日
30/65

第10話

「よくさぁ、雑誌とかテレビとかで“自分が好きなものと、似合うものは違う”って……聞いたことない?」

「ある……かもしれません」

その人の好きなものが、その人に似合うわけではない。

バラエティ番組のファッションチェックや、変身企画のメイクレッスンなどで、あまりにも個性の自己主張が激しい人に対して、美容や服飾のプロ達がたしなめるため、よく使う言葉だ。

でも、その言葉が今の私に何の関係があるのだろう?

動揺のせいで、自然とまばたきが多くなる。

「でも、俺はさぁ、好きなものって絶対その人に似合うと思うんだよね」

「……え?」

御影さんはそう言うとにっこり微笑み、私の髪をくるくると器用にねじって、あっという間にハーフアップを結い上げた。

「あとは……クリップが見えないようにとめて……」

発言の真意を確かめたくなったけど、下手に動くと今までの工程を台無しにしてしまいそうだ。

私はじっと、彼の手が止まる時を待つ。

「はーい! お待たせしました、完成!」

「あ、ありがとうございます!」

自分の肩の上で、見事な巻き髪が揺れている。

「すごい……こんな髪型、初めてです!」

この短時間で、ここまで見事に仕上げてくれた彼のテクニックに、純粋に感動してしまう。

私は御影さんに質問があったことなどすっかり忘れ、ただただ自分の髪に起きた魔法に見惚れた。

「本当にすごいなぁ……私がこんな髪型になるなんて……!」

芸術的とも呼べる手さばきだった。

あかりさんが『若いけど腕は確かだから』と、太鼓判を押していたのもわかる。

「あ……すみません! なんか、はしゃいじゃって……」

(さっきまでうつむいたり、凹んだり、ネガティブオーラ満載だったのに)

ニコニコ微笑みながら私を見守る御影さんに、自分の情緒不安定っぷりを謝罪する。

「いやいや、いいよ。でも髪型だけじゃなく―――」

メイク用のケープをサッとはずし、体が鏡の正面を向くように、背後から御影さんが私の頭を支えた。

「ちゃんとメイクも見てほしいな」

否が応でも、鏡の中の自分と目が合う。

「!」

鏡に映っていたのは、ゴージャスでありながら清楚な雰囲気も併せ持った、正統派の美女だった。

上品なドレスの色のおかげもあるだろう。

プロの手でヘアメイクを施してもらったおかげもあるだろう。

でも、目の前でうろたえている女性が、自分自身だとはにわかに信じがたい。

「ね、変わったでしょ!」

「わ、わた、私……?」

7:3に分けられた前髪から覗く瞳はくっきりと大きく、特徴的でありながら、きつい印象は一切ない。

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