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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
革命が起きた日
29/65

第09話

「そ、そうなんですね……」

私はかろうじて返事をするものの、自分でもわかるほど、その声には緊張と動揺があふれている。

「ナツメちゃんは、普段のメイクも薄いし、私服もおとなしめだし」

きっと、御影さんに他意はない。

私を見て思った感想を、そのまま伝えてくれているだけのことだ。

(言外に、君には無理って言われているみたい……)

「あ、はい……なんか、すみません」

だからここでついつい謝ってしまうのは、私の考え方が卑屈なだけ。

自分自身に自信を持てない、私の性格がダメなだけ……。

毎度おなじみ、いつものネガティブスパイラルに、ずぶずぶとハマりそうになった時、背後からポンっと両肩をたたかれた。

「!?」

ケープの上からとはいえ、素肌に近い状態で異性に触れられると、思考がショートしそうになる。

「どうして謝るの? ナツメちゃんは、それがいいって思ってるんでしょ?」

一瞬、何を言われているのか意味がわからず、すがるように御影さんの顔を見上げた。

「自分がいいな、と思って、そのメイクやファッションを選んでるんでしょ?」

「……あ、はい」

そう言われて初めて、世の中の人たちは自分が「いい」と思った服やメイクを、好きに選んでいることに気づかされる。

「そう……ですよね。好きだから……」

今まで、私がメイクやファッションを選んできた基準は、何だったんだろう?

なるべく目立たないように。

なるべく“普通”であるように。

よくある服。よくある色。

よくあるデザイン。

人々の記憶に極力残らない、世の中にありふれたもの。

そんなことしか考えてこなかった気がする。

「私の好きって、なんなんだろう……」

思わずぽつっと心の声が出てしまい、慌てて御影さんに笑顔を向ける。

「わ、私、昔から目立つのが苦手で。だから、その、ぶ、無難なものが、好きなんです……」

愛想笑いを浮かべ、漂う気まずさをごまかしていると、準備が終わったらしいヘアアイロンを御影さんが構えた。

そして私の髪をひと房すくいあげ、流れるような手つきで巻きグセをつけていく。

しばらく、無言の時間が流れた。

(どうして、あんな変なこと言っちゃったんだろう)

たった数分前の自分の発言のせいで、こんなにも雰囲気が悪くなってしまうなんて。

きっと御影さんも、心の中で“変な子”と思っていることだろう。

「……好きなものと、似合うものは違うってよく言うじゃない?」

自責の念にかられてうつむいていると、御影さんが優しい声でささやいた。

「……え?」

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