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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
革命が起きた日
27/65

第07話

「ぶよぶよ……」

下着がはみ出ないように、できればこれをつけてほしい……と渡された、シリコン製のブラ。

予想以上にぶよぶよしていて、接着面が何だかヌルついている。

「みんな、ドレスの下にはこんなの着けてるの?」

ブラが入っていた箱の注意書きを読んで、えいやと胸に貼りつけた。

「つ、冷たっ!」

慣れない感触に泣きそうになりつつ、着々と着替えを進める。

部屋には全身の映る大きな鏡が、背中も確認できるように何枚か配置されていたけれど、私はそれらを極力見ないようにした。

(見たらきっと、逃げ出したくなっちゃう……)

これから挑むきらびやかな世界に、いかに自分が場違いかを思い知らされそうで怖い。

慣れないドレスに悪戦苦闘したものの、何とか1人で着替えることができた。

脱いだ服を簡単にたたみ、会社用のバッグと一緒に、鍵を渡されたロッカーの中にしまう。

事前に靴のサイズを伝えていたので、用意してもらった物で問題はなかったけれど、見るのも初・触るのも初のピンヒールだった。

無駄に身長が高いことも、私のコンプレックスのひとつだ。

背が大きいだけで、どこにいても何をしていても目立ってしまうから。

だから就職活動の時も、一番高くない3センチのヒールしか履かなかったのに。

(なんか、すごい……足がスースーするし、ヒールがヨロヨロして踏ん張りが利かない。どうしよう、すんごい歩きにくい……)

次はいよいよメイクだ。

もう、覚悟を決めるしかない。

意を決して、私は奥の部屋のドアをノックした。

「はーい! お待ちしてました!」

部屋の中から現れたのは、先程挨拶を交わしたヘアメイク担当の御影さん。

入るなり、ズラッと並んだメイク道具に圧倒される。

「ナツメちゃんはヘルプさんだから、お化粧は控えめにしておくね」

(そうだ。私はここでは“ナツメ”なんだ。ナツメとして、今日から働くんだ……)

当たり前のように呼ばれる源氏名。

「は、はい……!」

にわかに気持ちが引き締まる。

「ここは銀座のお店だし、そもそも、そんなギラギラした感じにはならないから、安心してもらって大丈夫だよ」

そう言いながら、御影さんは私にメイク用のケープをつけてくれた。

そして座るように勧められた椅子におさまるなり、前髪をヘアクリップでグッとあげられる。

「……!」

小さな頃からずっと、前髪をあげた経験なんて数えるほどしかない。

清潔感を失わないギリギリのラインまで、常に前髪は伸ばし続けていた。

小さな頃から美しい母と比較されて育ったせいか、私は自分の顔があまり好きではない。

周りの子がメイクやヘアアレンジに興味を示し始めても、実際にお化粧をして登校を始めても、私は“自分には関係ない”と見て見ない振りをしていた。

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