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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
革命が起きた日
26/65

第06話

「は……はあ……」

美容師という仕事柄、接客はお手の物に違いない。

どんな人ともソツなく話せる話術を身につけているだろうし、そうでなくても目鼻立ちがはっきりとした濃い目のイケメンだ。

さぞかし、女性から注目されることだろう。

(私とはまるで、住む世界が真逆の人だわ……)

こんなことでもなければ、話す機会すらなかったと思う。

人の人生は、どこでどんなアクシデントに見舞われるかわからないものだ、としみじみ噛みしめていると、通路から荷物を手にしたあかりさんが現れた。

「ごめんなさいね。お待たせしちゃって」

そう言って、私の目の前で持ってきた物をサッと広げる。

「これなんだけど、どうかしら?」

あかりさんが選んでくれた衣装は、ワンショルダーのピンクのミニドレス。

普段からノースリーブの服は避けているし、室内とはいえ肩を晒すのには抵抗を感じる。

しかも、こんなに丈が短いスカートだ。

人の目はもちろん気になるけど、自分自身も露出が気になって落ち着かない。

でも、お店が用意しているドレスの中で、これがもっとも露出度控えめのデザインらしい。

もっとも、お店ではボディラインがよくわかるドレスしか着ないのがルールだそうで、露出という言葉はあってないようなものだという。

また、スパンコールやビジューが散りばめられた豪華なロングドレスは、基本的にホステスさん専用。

ヘルプはあくまでもサポート役であり、ホステスさんより目立つドレスやアクセサリーは、つけないことがこのお店の決まりなんだそうだ。

さすがにその情報までは、事前にチェックしきれなかった。

「想像と違うから、がっかりしちゃった?」

私の機嫌を伺うように、あかりさんが尋ねる。

「いいい、いえ! 十分です! ありがとうございます!」

慌てて首を振る私を見て、ホッとしたようにあかりさんが微笑む。

(あかりさんにとって私は、お世話になった人の娘だもの。きっと、すごく気を使ってくれているんだわ……)

ベテランの彼女がいいと言っているんだから、このドレスで正解なんだろう。

初めてづくしのアルバイトだけど、ここまで配慮してもらえるなんて。

(頑張らなきゃ……!)

言われたことはすぐに覚えて、余計な心配をかけないように注意しなければと、私は心に誓う。

「この奥の部屋がメイク室になっているの。着替え終わったら、そちらに行ってくれるかしら?」

「は、はい」

振り返ると、いつの間にか御影さんの姿は消えていた。

手渡された柔らかなドレスをそっと胸に抱き、案内された部屋でおそるおそる着替えの準備を始める。

見ず知らずの場所で1人にされて、急激に不安が込み上げてきた。

でも、こんな序盤で泣き言をいっていたら、それこそお話にならない。

私だって、もう子どもじゃないんだ。

できることは全部自分でやらなきゃ、頼ってもらった意味がない。

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