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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
革命が起きた日
24/65

第04話

唯一の頼れる存在と通信できない状況に、私は途方にくれた気持ちでいっぱいになった。

じわっと目尻に涙まで浮かんでくる。

ここは一旦ビルの外に出たほうがいいと、踵を返した瞬間、

「いらっしゃ~い!」

朗らかな女性の声が、背後から響く。

「あ、あ、あ……」

すがるような気持ちで振り返ると、満面の笑みを浮かべたあかりさんが、そこにいた。

「よかったわ! お店まで迷子にならなかった? 会社のほうは大丈夫だった? さっき電話がなかったら、私のほうから駅まで迎えにいこうと思っていたのよ!」

矢継ぎ早に喋り掛けられて、出そうになっていた涙が瞬時に引っ込む。

「だい、大丈夫です……」

出迎えてくれた今日のあかりさんは、しっとりした和服美人だった。

グレーのようなブルーのような、絶妙な色合いの上品な着物に、シルバーの帯を締めている。

帯上げと帯締めの淡いピンクが全体のアクセントになっていて、ひと目で玄人とわかる着物姿だった。

「綺麗……」

思わず本音が口からこぼれる。

あかりさんは「うふふ」と妖艶に微笑むと、ぼーっと突っ立ったままの私の背中を押して、お店の中へと案内してくれた。

「わあ……!」

促されるまま進んだ店内は、ビルの外観とはまた違う、文字通り別世界だった。

広さは想像以上。カウンターもゆったりしていて、優に20人は座れそうだ。

天井からはまばゆいシャンデリアがいくつもぶら下がり、その真下には大きなグランドピアノが鎮座していた。

入り口とカウンターの脇には、大人2人でも抱えきれないほどの大きな花瓶が置かれ、それぞれ対になるように季節の花が生けられている。

絨毯の色はシックなブラウンだったけれど、革張りのソファはすべて真紅に統一されていて、高級感を演出しつつ妖しさも十分だった。

「いいお店でしょ」

そう言って、あかりさんが誇らしげに微笑む。

「お店の女の子はね、常時30人は揃うようにしているの。あとはボーイ……お酒を運ぶウェイター兼、お客様のご案内をするホテルのベルボーイみたいな男の子が、何人かいるわ」

「さ、30人も……」

一体、1人のお客さんに何人の女性がつくのだろうか。

「お客様につくタイミングは、逐一マネージャーが伝えるから、心配しないで」

「は、はい」

「で、ここがカウンター。お酒を作る場所ね。おつまみと簡単な軽食もメニューに載せているの」

事前に知識を仕入れたつもりでいたけど、聞くと見るとでは大違いだ。

独特の迫力に呑まれてしまう。

私はあかりさんの説明に頷くだけで必死だった。

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