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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
革命が起きた日
22/65

第02話

電車のドアの手すりにもたれ、窓の外に流れる灰色の風景に目をやる。

ともすれば“本当に大丈夫だろうか?”と不安に陥る気持ちを、一生懸命奮い立たせる。

ここまで来て、落ち込んでいる場合じゃない。

今から心配したって、なんの得にもならないのだから。

緊張のしすぎで、いつもより何もかもに過敏になっていた。

何とか落ち着こうと、用もないのにスマホを適当に操作していると、降りるべき駅の名前がアナウンスされる。

電車が大きく揺れて駅のホームに停車し、ドアが開くなり車内の人がドッと動く。

私はうねる人並みに流されながら、目指す出口へ向かった。

(一体どこにあるの……)

あかりさんから届いたメールと駅構内の表示を交互に眺め、行くべき目的地を探す。

地下鉄の大きな駅はどこも複雑に入り組んでいて、出口をひとつ間違えただけで、かなりの時間をロスする羽目になってしまう。

約束の時間は午後7時。

本格的にお店が人でにぎわうのは、午後10時過ぎから終電がなくなる時間帯、午前1時までだそうだ。

いくら知り合いのお店とはいえ、給料をもらって働くのだから、いかなることがあっても遅刻することは許されない。

ましてや今日は、記念すべき初出勤の日。

遅くても5分前には、お店に到着していたかった。

クラブやキャバクラといった水商売は、出勤時間が通常の会社員より圧倒的に遅い上、業務上アルコールを取り扱うため、遅刻や欠勤には厳しくなさそうにみえる。

でも、小さな頃から母が真面目に働く姿を見てきた私だ。

いくら昨夜のお酒が体に残っていても、帰宅するのが明け方であったとしても、1日も休まずに12年間、銀座に勤務し続けた母を一番近くで見ている。

そんな母の面子のためにも、遅刻は絶対に許されない。

私は地下のコンコースを早足で駆け抜けると、まっすぐにあかりさんのお店を目指したのだった。

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