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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
瓶底メガネの地味OL
18/65

第18話

「あ、そうだ! 麦ちゃん靴のサイズは?」

「えっと……パンプスだったら24、5です」

「あら、意外に大きいのね。でもそうよね、身長がそんなに高いんだものね」

あかりさんはスマホのメモ機能にいそいそと数字を打ち込み、次いで私の全身をまじまじと見つめた。

「そのメガネは、伊達メガネなんでしょう? お店ではメガネを取って出勤してもらいたいんだけど、大丈夫?」

「はい。むしろメガネありで出勤したら、会社の人にもろバレしちゃうし……」

「そうよね。ありがとう、私もそのほうが助かるわ。あとは……」

さめざめと泣いていた姿からは、想像もできないくらい、今のあかりさんは瞳に自信がみなぎっている。

その姿は才能と美貌を存分に活かし、溌剌と働く自立した女性そのものだった。

(あかりさんが私と同じくらいの年の頃って、一体どんな生活を送っていたんだろう)

ぼんやりと、そんなことを考えていると……

「お店での源氏名ねぇ!」

パッと明るい声で、あかりさんが言い

「そうねぇ、源氏名は大事よねぇ!」

あかりさんが“源氏名”とつぶやいた途端、店の片付けをしていた母が、たまらずといった体で口を挟んだ。

「お店での名前って、そんなにこだわるものなの?」

一時的な仮の名前なんだから、本名でなければなんでもいいと思っていたけれど、ホステスにとって源氏名とは、自分の人気を左右するほどのもの。

つまり、命運を握るといっても過言ではないほど、重要なものらしい。

「他の女の子たちが使っている名前は、基本的に使用NGだしね」

「あ……そうか。確かにそうですよね。名前がカブると、ややこしいですもんね」

「何がいいかしら~、麦ちゃんの源氏名~」

ウキウキとした様子で、母とあかりさんが相談を始めた。

「どうします、ママ」

「そうねぇ……」

しばらくああでもないこうでもないと、2人で娘のように盛り上がっていたが、不意に母が「あ!」と声をあげた。

「ねぇ、あかりちゃん。あかりちゃんのお店にナツメって名前の子はいる?」

「ナツメ……ですか。ナツメは今も昔も、店に在籍はしていないと思います」

あかりさんの返答を聞くなり、少女のようにパッと顔を輝かせて、

「じゃあナツメ! ナツメで決まりだわ!」

と、母が大きく頷いた。

「そうですね! まず、響きがかわいいし、それでいて、知的な印象もあるから麦ちゃんにぴったりだし。いい名前ですね!」

あかりさんも力強く拳をにぎっている。

そんなこんなで、満場一致により(当事者を除いた2人のみだけど)私の源氏名はナツメに決まった。

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