表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
瓶底メガネの地味OL
15/65

第15話

「っ!」

ビクッと驚いて振り向くと、爽やかな笑みをたたえた小柳さんが、私のすぐ真後ろに立っていた。

「こ、ここ、こ、小柳さん……!?」

我ながらテンパりすぎだと思うが、異性と話す時はいつもこんな感じになってしまう。

相手が自分よりもうんと年上だったり、ひと回りくらい年下だったりすれば、気は使うもののまだまともに会話ができる。

でも会社にいる異性とは、年の近さや立場の差があるせいか、ほとんどまともに話せない。

噛むのは当たり前、「話そう」と思うだけで緊張してしまい、カーッと顔が赤くなるのがお決まりだった。

「書類、印刷終わってるみたいだけど?」

しかし、挙動不審極まりない私に対しても、小柳さんは優しい。

さっとプリンターに手を伸ばし、プリントアウトした書類を私に手渡してくれる。

「あ、あ、ありがとう、ございます……!」

私は恥ずかしさと嬉しさがごちゃまぜになり、しっかりと受け取る前に、勢いよくお辞儀をしてしまった。

「あっ……」

目の前で”兼業許可申請書”と書かれた紙が、ハラハラと舞っている。

(なんてこと……!)

受け取り損ねた書類は、あろう事か小柳さんの足元に、文字面を表にしてハラリと着地した。

自然な動作で彼が書類を拾い上げる。

まさかこの段階で「それは私のプリントアウトではありません」なんて言い訳は、到底通用しないだろう。

「お、副業、始めるの?」

おそらく小柳さんにとっては、何の他意もない、普段通りの日常会話の一環に違いない。

でも、私にとっては今年最大と呼んでもいいレベルの一大事件だ。

(まさか一対一で、彼と話すことになるなんて……!)

「は、はい……」

穴があったら今すぐ潜り込みたい心境で、何とか返事をする。

「そうなんだ。頑張ってね!」

私は腹をくくって、小柳さんが差し出した書類を受け取った。

「ひ、拾っていただいてありがとうございます!」

お礼の言葉もそこそこに、そのまま自分のデスクへとそそくさ逃げ帰る。

(信じられない! せっかく話せたのに、なんでこんな……!)

昨日に引き続き、今日も厄日なのかもしれない。

時間を巻き戻せるなら、数十分前にタイムスリップして、ぼーっとしていた私に蹴りを入れたい気持ちでいっぱいだ。

デスクトップに流れるスクリーンセーバーには、もうすぐ昼休みが終わる時刻が表示されている。

急いで書類を書き上げなければ、あかりさんのお店で働けるようになる日が、どんどん延びてしまう。

(落ち込んでる場合じゃないわ)

私は引き出しからペンを取り出すと、あかりさんから預かったメモを参考にして、申請書に記入を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ