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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
瓶底メガネの地味OL
13/65

第13話

「ねぇ、麦ちゃん。あなた、好きな男の人はいないの?」

ぼうっとしていた頭に、パッと理性の灯火が戻る。

「い、いませんよ!」

慌てて否定する私を見て、あかりさんは少し残念そうな顔になった。

「会社に、気になる人とかもいないの?」

「も、モテモテの人はいますけど……」

脳裏に真っ先に浮かんだのは、総務部広報課のイケメン、小柳涼平こやなぎ りょうへいさんの姿だった。私よりも2つ年上の25歳で、誰に対しても笑顔を絶やさず、サービス精神旺盛なことから、何かにつけ女子社員の間で話題にのぼる人物。

小柳さんはさっぱりとしたスポーツマンタイプで、同じフロアにいるというだけで他に接点がない私に対しても、きちんと挨拶をしてくれる。

隣の席の先輩と、目の前の席の同期の会話からすると総務部の中でも小柳さんの評判は上々で、どこの部署からも「異動するならぜひうちに」と声をかけられているらしい。

いるだけで周りの空気がパッと明るくなるような、自然と人が周囲に集まってくるような、そんな天性の朗らかさと人懐っこさを兼ね備えた人。

他の男性社員が、私をまるで空気のように扱う中、小柳さんだけは違っていた。


『大丈夫? 重そうだけど、運ぼうか?』


入社早々、書類の山を整理していた私に、唯一サポートを申し出てくれたのだ。


『遠慮しなくていいよ。こういうのは、男の仕事じゃん!』


私が気を使わないように、先回りして言葉をかけてくれた。

(だからって、べ……別に、好きっていうわけじゃないけど……!)

でも、今思い浮かぶ異性といえば、彼しかいなかった。

「その人のこと、きっと振り向かせられるわよ」

今までにない力強さで、あかりさんが私に語りかける。

「え……?」

「麦ちゃんは今よりずっと綺麗になる」

「そんな……」

にわかには信じられない。

小学校から大学まで、ずっと共学に通っていたけれど、ついに1度も恋愛らしい恋愛ができなかった私だ。

気になる男の子ができても、好きな人ができても、遠くから見守るばかりが常だった。

だからこそ目下、彼氏いない歴=年齢を更新し続けているというのに……。


「私に任せて。あなた、きっと化けるわよ」


両肩をグッとつかまれて、まっすぐに目を見て告げられると、まるで魅入られたかのように、抵抗する気力がみるみるしぼんでしまう。

「は、はあ……」

私はあかりさんの言葉に、無意識のまま、素直に頷いていたのだった。

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