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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
瓶底メガネの地味OL
11/65

第11話

私はほうじ茶をずずっとすする。

もう完全に冷め切ってしまっているけれど、まろやかな甘みがじわっと口いっぱいに広がった。

「クラブの運営も、大変なんですね……」

その美味しさにホッと気が緩んでしまい、思わずぽろっと心の声が漏れる。


「「あ」」


すると、2人の美女が声をそろえて、私をまじまじと見た。

「……え?」

あまりにも呑気な感想を述べたせいで、気を悪くしてしまったのかと焦ったが、どうやらそうではないらしい。

「麦ちゃん! 今お勤めはしているの? しているわよね。じゃあ、勤務している会社って、定時はどうなってるの?」

「あ、朝9時から夕方5時までですけど……?」

急に目を爛々と光らせ、あかりさんが食い気味に私に質問を浴びせ始めた。 

「残業は?」

「年度末はちょっとありますけど。それでも1~2時間くらいかな?」

毎月やってくる締め日や給料日も忙しいけれど、私にはまだ関係ない業務なので、実質忙しいのは3月だけだった。

「そう! ねぇ、今何か、習い事はやってる?」

「やりたいと思ってるんですけど、なかなか……」

英会話に料理にヨガ。

1月に書き出した「今年やりたいリスト」の習い事候補達は、秋になったというのに、まだ1つも実現されていない。

「夜はいつも何時くらいに寝てるの?」

「だいたい……1時半までに寝れば、大丈夫な感じです。会社が近いから、いつも夜更かししちゃうんですよね……」

「そうなのね~! ねぇ、週末はお友達とお出かけだったり、彼氏とデートとかしてるの?」

いい加減私も、ここまで根ほり葉ほり聞かれれば、さすがに様子がおかしいことくらいわかる。

「……友達あんまりいませんし、彼氏もいませんから」

これは早々に話を切り上げて、さっさと2階へ退散した方がいい。

本能でそう察知した私は、あかりさんからそっと視線をはずし、2人に気づかれないように逃走する準備を始めた。

「あ、じゃあ私、ちょっと……」

そろそろと腰を上げ、不自然にならないよう席を立とうと試みる。

「麦ちゃん、週末だけお店を手伝ってくれないかな!?」

けれど、相手に先手を打たれてしまい、予想通りの展開にギクッと体がこわばった。

「……え?」

恐る恐る2人に視線をやると、期待に満ちたキラキラした眼差しで私を見ている。

(嫌な予感しかしない……!)

「て、手伝いですか?」

あかりさんが嬉しそうに、コクコクと頷いた。

「麦ちゃんは、お酒飲める?」

これはストレートに断るしかない。

「無理です、無理無理無理! 私、お酒が飲めないんです!」

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