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アフター5はメガネをはずして  作者: 皇ハレルヤ
瓶底メガネの地味OL
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第01話

残暑厳しい夏が終わりを告げ、収穫を祝う秋がやってきた。

小春日和のうららかな陽気が漂うオフィスは、普段なら、うとうとと眠気を誘うばかりだが今はそれどころではない。

私、堀田麦ほった むぎは久々に、緊張に手と声を震わせていた。

「か、課長……た、頼まれていた今朝の件ですが、先ほどメールに添付してお送りし、しました……」

思わぬところで噛んでしまい、ジトッと手に嫌な汗をかいてしまう。

私は急いで床の青いカーペットに視線を落とし、動揺する心を必死に治める。

「……具合でも悪いのか?」

こちらが必死になって混乱を隠そうとしているというのに、私の心境などつゆ知らず。

緊張の元凶である、来栖くるす課長は、挙動不審な私を奇妙に思ったのか、しなくてもいい気遣いをしてくださった。

「いいいいいい、いいえ! そ、そんなことはないです。だ、大丈夫です。元気ですので!」

気を失いそうになりながら、私は必死に笑顔を作る。

全身が緊張と恥ずかしさのせいで、カーッと熱くなった。

顔から湯気が吹き出して、愛用の分厚いメガネが曇ってしまいそうな勢いだ。

「そうか」

課長は温度のない声でそう呟くと、カチカチとメールの添付ファイルを確認し、先ほど私が送信した書類を無表情のままチェックしている。

(何事もありませんように、何事もありませんように……)

私は課長の微動だにしない顔つきを眺めながら、必死に祈りを捧げた。

私が勤めている清水機器株式会社は、精密金属加工品のメーカーだ。

主に航空機の部品や船舶・潜水艦、自動車の部品を製造している。

東京都内に本社があり、関東に2つの事業所、全国に3つの工場を所有し、業界では中堅のポジションに当たる。

私の所属は総務部経理課。

事務のプロフェッショナルと呼ばれる部署だ。

課の人数はちょうど30人。

古い会社ゆえにアナログに頼るところがまだまだ多く、いまだ手書きの伝票が回されることもたびたびある。

こまごまとした作業のせいもあってか、会社全体の社員数から見ても、うちの課は大所帯だった。

比較的広いフロアを与えられ、もちろん各々が1台ずつPCを所有していたが、ものによってはアプリケーションソフトが10年選手の人もいる。

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