第8話 あ、悪役令嬢とご対面!?
私は今魔術棟にある大きな図書館に来ています。ここには国中から集めた貴重な本などが保管されており魔術師にとっては知識の宝物庫のような場所である。
そして私は今その図書館に本を返却しに来ています。ここの図書館も日本の図書館と同じように貸し出し期限があって期限を伸ばしてもらいたい時はしっかりと手続きをしなくてはならない。私は期限日を忘れ、返却期限から2週間も借りっぱなしにしてしまった。司書さんごめんなさい。
私は受付にいる司書さんに申し訳ない気持ちで言った。
「司書さん。返却期限遅れてごめんなさい。」
いつもは穏やかな司書さんは少し眉をあげた。
「返却期限はちゃんと守って下さいね。次に読みたい人が待っているんですから。ちゃんと元の棚に返して下さいね。」
優しい司書さんを怒らしてしまった。まず借りたことを忘れてたなんて絶対言えない。
「はい…。次から気をつけます。」
私は本を棚に戻しに向かった。
本棚の前まで来て本を返そうとした。その時後ろから呼び止められる。
「ちょっと、貴女!」
振り返るとそこにはここにいる魔術師とは違い鮮やかなドレスを来た少女が立っていた。しっかりと手入れされている綺麗な赤毛にエメラルドグリーンの瞳。目は少しつり上がっていてきつい印象を与えるが顔の整った少女だ。どこかで見たような…。
「貴女。その本、期限から何日経っていると思っていいますの!ここで働く者としての自覚が足りないのでは!」
少女は嫌みっぽく言う。
「すみません…。」
確かにその通りだ。私はこの魔術棟が掲げる「時間厳守!」を守れてなかった。とても反省しています。
「もしかして、この本を借りようとしていた人ですか…?」
私は恐る恐る聞いてみる。
「ええ。そうですわ。貴女がいつまでも返そうと…」
少女が話終わる前に私は目を輝かせて言う。
「え!薬草に興味あるんですか!?」
まさかこの少女も自分と同じでポーションの研究してるのか!?すごく親近感がわく。
「薬草に興味があるというわけではなく、実習で作った麻痺を治すポーションがうまく作れなかったので…。参考になればと思っただけですの。」
少女は私の気迫に押され少し後ずり、少し恥ずかしそうに言う。
「あ!それか!実は使う薬草にそっくりな薬草があるから間違えやすいんですよね。しかも作る時もコツがあって――」
説明しだそうとした瞬間、我にかえった。あ…。女の子の意見も聞かずついしゃべってしまった。
「ごめんなさい。私勝手に…。」
少女は私の手をとり、目を輝かせる。
「是非、教えていただけませんか。」
さっきとは逆で、今度は私が気迫に押された。
「わ、私で良ければ…。」
「ありがとうございますわ!」
そう言う彼女は第一印象で感じた厳しさはなく幼い子どものようだった。
私たちは図書館の机と椅子があるところまで移動し席に座った。
「あ、そうですわ。私、セレスティーヌ・アシリア・ラ・フォンテールですわ。」
少女は優雅に名乗る。すごく気品がある。
「アオイです。」
私も慌てて名乗る。
セレスティーヌ…。どこかで聞いたような。あ!ゲームに出てきた悪役令嬢だ!どうりで見たことあるわけだ。
ゲームでのセレスティーヌは王子レオンハルトの婚約者で主人公のライバルである。主にレオンハルトのルートで登場し主人公にきつく当たり、嫌がらせなどをしていた。最後は断罪イベントで国外追放になるか、嫉妬に狂い禁忌の魔法を使ったために災厄をもたらす魔女となりレオンハルトに殺させるかだった。
どうしよう。関わっていいのだろうか。私は王子と因縁ないから大丈夫だよな…?
「…イ。」
でも思ったよりひどい子に見えないしなぁ。
「…アオイ!聞いてますの!?」
「うわ!うん。聞いてる聞いてます。」
ごめんなさい。本当はほとんど聞いてませんでした。
「じゃあ、アオイそれでいいですわよね?」
「あ、はい。」
私はよくわかっていないのに返事をしてしまった。
「じゃあ、3日後に私の家にいらしてくださいね。」
そう言って席を立つセレスティーヌ。
「え?どういうこと?」
私の言葉にセレスティーヌは眉をひそめる。
「私の家で薬作りを教えてくださるって話でしょう。」
それでは予定があるのでとセレスティーヌはここを去ってしまった。
え?私の意識がここにない間にそんな話してたの!?セレスティーヌの家って公爵家だよね!?私みたいな人が行っていい場所じゃないでしょ!?
この時、私は軽率に返事してしまったことをひどく後悔した。
悪役令嬢の登場回でした。
もともとセレスティーヌはもう少し前に出す予定だったのですが、初めてアオイが魔術棟の外にでる場所を城下町にしたかったために出番を奪われました。