閑話 庭園にて
これはアオイたちが城下町に行く少しまえのお話。
私とアレンは庭園の薬草を取りに来ている。前回取りにきた時は薬草しか見なかったので今回は花がある方に行こうとアレンは案内してくれる。
「うわぁぁ。すごい。色とりどりの花が咲いてるね!」
当たり一面の花畑に私は感激していた。よくよく見てみるとおかしい部分に気づく。
「ねぇ、アレン。この花畑おかしいよ。夏の花であるアサガオと冬の花のスノードロップが両方咲いてるんだけど!?」
7~10月に咲くアサガオと2~3月に咲くスノードロップが同時期に咲くはずがない。何だ、この摩訶不思議な現象は!?
「ああ。それはこの庭園が魔法で少し細工されているからですよ。普通は咲きません。アオイはこういうの詳しいんですか?」
アレンは意外そうに言う。確かに私は花に詳しそうには見えないもんな~。気持ちはよくわかる。
「そんなに詳しいってほどでもないけどね。兄がこういうの詳しくてよく聞かされてたんだよ。花言葉とかも少しならわかるよ。例えば…これとか!」
私は白く綺麗なカモミールを指した。
「カモミールにはね、逆境に耐える・苦難の中の力って意味があるんだよ。」
「へぇ~。よく知ってますね。小さくて可愛らしい花なのにすごく力強い意味合いなんですね。」
アレンは感心しながら聞いている。
「まぁ、自分が好きな花だったからよく知ってるってだけだけどね。」
「アオイはカモミールが好き何ですか?」
「うん。踏まれても枯れない忍耐強いさがカッコイイな~と思って。」
私はそんな力強さがお気に入りなのです。
「そうですね。僕もそんな風に生きたいです。」
カモミールを見つめながらアレンは言う。
「え?アレン踏まれたいの?そう言う趣味なの?」
ここでまさかのM疑惑か!?
「ち、違います!逆境に負けず生きたいという意味です!」
アレンはものすごい勢いで否定する。
「ごめん。冗談冗談。」
私はおどけた。するとアレンは話題を変える。
「それじゃあ、他の花はどうなんですか?」
「他の花かぁ。」
私は花畑を見渡す。そして端の方にあった赤い花を見つけた。
「あ、これなんかどうかな?私がアレンに贈るとしたらこの花かな。」
アレンは私の指差した花を見る。
「ゼラニウムですか?」
不思議そうな顔で訪ねる。
「うん!ゼラニウムには 尊敬・信頼って意味があるんだ。ピッタリでしょ!」
私は自信満々にえっへんとポーズをとる。私はアレンのことをこの世界に来てからずっと一緒で信頼できる人物だと思っている。魔術師としても尊敬に値する。
そんな私の言葉を聞いてアレンは照れくさそうに笑う。
「そんな風に思ってもらってたなんてちょっと恥ずかしいですね。」
そう頬を染め、はにかむアレンはやっぱり可愛いかった。
このあと、肝心の薬草を取ることを忘れていた私たちは急いで薬草を取りに行き、ポーションを作る研究室に戻るのでした。
数日後、偶然花の載ってる本を見たアレンは赤いゼラニウムの花言葉を知って赤面した。赤いゼラニウムの花言葉は「君ありての幸福」である。これはいわば告白ではないのかと動揺するアレン。
アオイがゼラニウム全般の意味しか知らなかったことを知るのはこれの数日後なのでした。
番外編のような感覚で読んで頂ければと思います。
そして7話分まで書いて大変なことに気づきました。アオイとアレンって字ずら似ててわかりにくい!本当申し訳ないです。
実はアオイは白、深紅のゼラニウムが良くない意味合いだったのは知っていたのでそこだけは避けたという設定です。