彼女が結婚するその時までは
少し状況を整理しておこう。
にゃーちゃんは、今や彼氏持ち。彼氏は職場の年下の男、詳しくは知らないが周囲にはまだ秘密っぽい。餅つきに呼んでないことから推察すると、両親には話していない。
私と久し振りに会って、手を繋ぐのは、にゃーちゃん的にOK、撫でる、髪チューもOK。…境界線を見極めないと。
「…お願いしたらキスまでさせてくれそうなのが恐いな…」
再び、にゃーちゃんのプルプルな唇を見詰める。
ごくり…
少し半開きになってる口元が艶めかしい…キスしたい…
いや、だからそれはアウトなんだって!友達はチューしません!何でムラムラしてるんだ私はッ!欲求不満かッ!!ダメだろう!!
って、思ってるのに何で私は、にゃーちゃんに近づいてるのでしょうかね?!ちょっと屈めばキスできちゃう距離ですよ?!
落ち着け私。そもそも、彼女と別れたのは彼女の幸せを願ってのこと、ならば片思いを続けるのは間違いなんじゃないか。やはり本人を目の前にすると混乱してしまう。
悶々とする私。
目の前には、にゃーちゃんの寝顔。可愛い…
キス…しちゃおっか。…寝てるし。仮にも元恋人がいる横ですやすや寝てる、にゃーちゃんが悪い。襲われても仕方ないと思う。危機管理がなってない。危機感無さ過ぎる
ちゅっ。
屈んで、にゃーちゃんにキスをした。
おでこに。口ではなく、おでこに。……我ながらヘタレ過ぎる。
「はは…何やってんだ」私の独り言に反応したのか、にゃーちゃんの目がパチリと開く。
「…」
「…にゃーちゃん、無防備過ぎだよ?起きないとチューしちゃうよ」
内心の焦りを余所に冗談っぽく言ってみる。
すると、にゃーちゃんは胸元で手を組んで目を瞑り「ん、ちゅっちゅっちゅっちゅー」と口を窄めてタコの口。
ちょ、ちょ、待って、にゃーちゃんッ!ちゅっちゅっちゅーですと!!??キス待ちですかッ!?キス待ちですよね!それは!!!
にゃーちゃん、それ冗談で済まされないやつだから!!!!
寝呆けてるの?いや、寝呆けているからって平気でやらないでください。ヤバい。色んな意味でヤバい。
キス…しちゃうよ?
一度でもしてしまうと軽いキスで止められる自信がない。
「にゃーちゃん」
ドキドキしながら名前を呼ぶ。