彼女が結婚するその時までは
にゃーちゃんが私の部屋にいる。
「りっちゃん、また本が増えてる」
本棚に入りきれない本が部屋のあちこち積まれた状態を見て、にゃーちゃんは溜め息。
「もー!雑誌とか読まない本は捨てなさい」
「捨て本は無いから、ホントにみんな必要だし」
「汚部屋になる人はみんなそう言うのッ!ちゃんと住居スペースは確保しなさい」
ぷりぷり説教を始めるにゃーちゃん、ほっぺ膨らませて怒る顔、可愛い…。思わず抱きしめてしまいそうです。しないけど。我慢…。我慢…。俯いて耐えてる私の姿を反省してると勘違いしたのか、説教をやめてベッドに座るにゃーちゃん。
「ふむ。反省したようなので休み中に片付けるように」えへんと、胸を張るにゃーちゃん。たわわの胸が揺れましたよ?って、私はおやじか!
「りっちゃん?」
じと目で私を見るにゃーちゃん。反省してないことバレた?
それとも私、エロい目で見過ぎてた?
「な、な…何?」
「りっちゃん痩せた?」
ベッドからすくっと立ち上がって私の胴回りに抱き付く、にゃーちゃん。
抱き付かれた拍子にいつもの、にゃーちゃん特有の甘い香りがした。
くらくらする…無意識ににゃーちゃんのサラサラの髪を一房梳いて髪チューした。にゃーちゃんの匂い、猫みたいな日向の匂い。癒される…
はッと我に返る。
ヤバい!何やってるんだ私!それ、友達にはしないやつだろーよー!!
距離感掴めない!
友達って何するんだっけ?どこまでOK?実際問題どこまでしていいの!??
にゃーちゃんは髪チューされても嫌がる素振りも見せず、私の腹をまさぐる。
くすぐったいし、ついでにコチョコチョ脇腹を本格的にくすぐるの止めてください!!あはは、やめれー!
「りっちゃん笑った」
ほっとするかのようにふにゃと笑うにゃーちゃん…。
そうか、にゃーちゃんと電話で恋人関係を解消してから直接会う今日まで不安だったのはにゃーちゃんも同じなんだ。
今までと変わらずに対応してくれるのは、にゃーちゃんなりの気遣いだったんだね。中学生の頃、普段仲良くしてたクラスメイトの女の子に「嫌い!」って言われて泣いてた、にゃーちゃん。人に嫌われることを極端に怖がるとこは昔から変わらない。
「にゃーちゃん…」
なでなでなで
。愛おしくてたまらない彼女の頭を撫でる。
好きだよ。にゃーちゃん、愛してる。
でも、もう彼女に愛を語れない。私はその資格を手放した。なのに、どうして貴女への気持ちを抑えきれないのだろうか。
「にゃーちゃん」
貴女は、私のことを未だに好きでいてくれるのだろうか?
貴女は、何を考え、今、私の部屋にいるのか…どうして触れ合うことを許しているのか…聞きたい。
「にゃーちゃん」
いざ質問をしようとすると言葉が詰まる。ヘタレ気質な己が恨めしい。
「そろそろ餅つき始まるから行こっか」
にゃーちゃんが猫のようにしゅるん私の腕からすり抜け部屋から出て行ってしまう。ドアの所で振り向くにゃーちゃん。
「先に行ってるね」
距離感掴めてないのはお互い様なのか。