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【剣魔シリーズ】美味な食材(になった)

作者: 木片樹
掲載日:2017/12/11

ーー1年目ーー


よくも悪くも普通の人生だったと思う。


両親とも弟妹とも仲は良かったし、彼女だっていた。高校、大学と浪人することなくそこそこ良いところに就職でしたし、就職もスムーズだった。少し残業は多いけれどブラック企業ではなかった。だから、普通に一般的な人生だったと思うのだ。・・・昨日まで。


どうしてこうなった、口に出したが声は出ず、川の水面に映る俺だろうそれ(・・)は口をパクパクとさせるだけだった。何より、口がパクパクと、俺が動かしたタイミングで動くのだからますますそれ(・・)が俺だと理解させられてしまう。


昨日のことを思い出す。まず、仕事が終わって電車に乗った。次に、吊り革をもってケータイ小説を読む。そして、窓から眩しい光が射してきた。最後に、それが車だとわかって、電車に向かってダイナミックダイブをしているのだと気づき、衝撃を感じた。おまけで、映画かよと内心ツッコンだのは覚えてる。以上。


つまるところ、俺は死んだのだろう。そして、よく読んでいた小説のように記憶を持ったまま転成したということだろう。


現実は小説より奇なり、とはよく言ったものだ。死んだことは悲しいし、ショックだけれど、そのショックよりも現状の方がショックが大きく、死んだ現実を受け入れる所ではなかった。


最初、目を覚ました俺は真っ暗な中にいた。体は思うように動かず、適当に動いていると頭に何かが当たった。そのまま何度かぶつけていると固かった何かを突き破り、光が差して眩しかった。ちなみに、ここで前世の記憶が甦った。


死んだことを受け入れられず、ショックを受けたままだったけれど、喉が渇いていたために、どうにかこうにか、水のある方へ向かった。そして、川に到着し、そこで視線がやたらと低いことに気づいたけれど、水が飲みやすかったからいいやと一旦忘れた。そして、喉が潤って少し余裕ができて水面を見た。今ここ。


もう既に自分が何になったかは顔だけで判断できるのだけれど、ミジンコレベルの違うという期待を込めて、水面に全身を映してみる。体を川にギリギリ寄せ、横をチラリ(すごく見易い)。


水面のそれ(・・)は生き物としては薄いフォルムだった。地面に四つん這いになり、尻尾をフリフリ。毛はなく固そうな皮膚は生まれたばかりだというのに乾いている。顔は細長く目は顔の横にある。お陰で前は見にくく距離感はわかりづらい・・・っという問題ではなく、手足の指は4本で爪は少し鋭い。


片手を上げて水面に映すと壁や窓ガラスにくっつきやすそうな手のひらだった。いや、家でよく見たからそうだと思っただけなんだけど。




どうやらトカゲになったらしい。




ーー5年目ーー




生まれたばかりの頃は子供の足ぐらいの体長だった。しかし、転生で植え付けられただろう野生の本能。そして、前世から引き継がれた人間の思考能力。それから、ちょっとした不思議な力と運命的な出会いによって行き続けている俺は成人男性の腕ぐらいの体長へと成長した!


・・・腕といっても肘から先です。ちょっと見栄を張りました。人間のときの感覚から言えば小さいことには変わり無いけどなっ!


5年が経つまでの間に、この世界がかなりファンタジーな世界だということがわかった。俺がいた場所はモンスターが蔓延っており、人間やらケモミミの人やらいろんな人を見かけた。剣やら魔法(実際は違う呼び方らしい)でモンスターと戦っていて、まさにゲーム、マンガ、アニメの世界だった。命をかけるのは怖いけれど、1度は剣を振るったり魔法を使ってみたかった。どうして人として転生しなかったのだろう。あのときほど自分の姿を悔やんだことはなかった。つーか、せめて竜が良かったっ!


それはともかく。


自分の事に関してもわかった。よくわかった。どうやら、俺は天然のトカゲではないらしい。自分で言ってて「なんだそりゃ」とは思うけれど、この世界の人々はトカゲを品種改良したらしい。それに至った考えを聞けば「なるほど」とは思ったけれど、自分がその存在になっているのだから、あまり納得したくない。つーか、それによって俺がちょくちょく狙われてたのだから、たまったものじゃない。


人々は考えた。究極においしい肉を食べたいと。前世だと、牛や豚、鶏などがそれに当たると思う。生粋の日本人だった俺は買ったことはないけれど、テレビに映る高級の肉を食べたいと思ったものだ。


しかし、この世界は牛やら豚やらには手を出さなかった。いかに、長い間おいしい料理を食べることができるのかと考え、トカゲの尻尾の再生力に目をつけたらしい。トカゲの尻尾は危険を感じれば自分で千切って逃げる。尻尾を囮に逃げるのだ。千切れた尻尾は奇妙なことに暫く動き続ける。家でも何度か経験はあるが千切れた尻尾がくねくねと動くのは気味悪かった。ちなみに、家の中にいたトカゲを逃がそうとして尻尾が千切れた、という感じであり、けっして殺生しようとしたわけでない。動く尻尾が気味悪かったことには違いないけれど。尻尾が千切れたあとは、時間が経てば生えてくるので、同じ手は何度も使うことができるのだ。


人々はそんな特性のあるトカゲの尻尾に目をつけたのだ。最初は牛や豚にその特性を移植しようとしたらしい。しかし、それはうまくいかずトカゲの品種改良に挑んだとか。その成功例が俺の種らしい。


デリシャーストカゲ


それが俺の種族名だった。微妙に聞き覚えのある英語に悲しくなった。実際、この世界に置いては"超絶美味なトカゲ"という名前らしい。そう、人々はトカゲを美味しい食材へと品種改良できたのだ。


危険性をなくすために、攻撃的な要素を除去し、人々が保護しない限り長生きできないようにしたのだ。俺が生きているのも運命の人と出会ったからに過ぎない。動きは鈍く、爪は引っ掻けるほど鋭くはならず、自分では切り捨てることが出来なくなった尻尾が繋がっている。1個体だけでは天敵から逃げることもできないトカゲ。それが、俺の種族であり、庇護下にいないと生きていけない種族であった。その肉は1度食べると他の肉を食べられなくなるほどの絶品らしく、貴族が大金払ってでも買い付けに行くほどらしい。・・・どうりでモンスターやら人間たちが目の色を変えて襲ってくると思った。ありとあらゆる隙間に潜り込んだり、短く鋭くもない爪で地面を掘ったものだ。もっとも、その頃は自分のことなんか知らなかったから逃げるだけでいっぱいいっぱいだったけど。


そんな生活をしつつ、そういや空腹にならないなぁ、とか思い始めた異世界トカゲ生活5年目に突入した頃、俺は運命の人に出会った。ちなみに、運命の人というのはメストカゲとかではない。安全な環境を提供してくれる人、という意味だ。紛らわしい?毎日死にかけてたら護ってくれる人を運命の人と思ってもおかしくない。・・・まぁ、俺が人間の姿だったら確実に惚れて結婚を申し出るほどの美女なのだけれど。


その人はモデルのようにスラッとした体型であり、顔はアイドル以上に整っていた。そして、その耳は細く長かった。


エルフである。


ゲームとかでよく登場するエルフそのものだった。


初めて見たときはその美しさに逃げるのも忘れて魅入ってしまい、そのせいで捕まったほどである。捕まった瞬間すらその美しい顔を近くで見れるからと暴れなかったほどだ。その時いたエルフの人たちは3人いて、俺を捕まえた女性1人と男性2人、剣やら弓やら杖やら持っていた。


ちなみに、彼らの会話と俺の心情及び行動はこんな感じである。




俺、その美女の顔をじっと見る。


「ミスティ、急にしゃがんでどうしたんですか?」

「見て見てソルカ!このトカゲ!」

「はい?って、それ!」


俺、新たな美男の顔をやはり魅入る。


「うん!デリシャーストカゲ!」

「なんでこんなとこに!?いや、ともかく!ノーグ!ちょっと来てください!」

「どうした兄貴。んな大声出さんでも近くに・・・い・・・」


俺、新たな美男の登場に神様を恨む。どうして俺をエルフにしなかったと。


「ノーグノーグ!これこれ!」

「デリシャーストカゲ・・・だと・・・」

「近くに人間もいないようですし。このトカゲ、以前に見た卵の殻から生れたトカゲだと思います」

「4年前って、木の陰にあったあれのか?まぁ、大きさからしたらそうなんだろうけど。どうしてそんなことわかんだよ?」

「いや、ここにその卵の殻ありますから」

「この子、生れた場所を住みかにしてるんだね。あれ以来、近くは探しても見つけられなかったのが不思議だけど」


俺、照れて頭をカキカキ。探検したり臆病風に吹かれて土に潜ったりしてたからで、基本ここにいたから偶然だけど評価してもらったようで嬉しい。


「おい、こいつ頭かいてるぞ」

「まるで我々の会話が理解しているようですね。よし、ノーグ。ちょっと脅してみてください」

「・・・捕まえてるミスティの方が脅せると思うんだが?」

「いいですから」

「ったく。よし、トカゲ」


俺、なんですか美男様その2、と男の方を見て首を傾げる。


「あれ?ちょっと可愛い」

「・・・ミスティはそのまま捕まえとけよ。トカゲ、お前は焼いて食う」


俺、一瞬何を言われたのかわからず、しかし、捕まっていることに気づいて暴れる。


「こっちの言葉がわかってんな」

「ですね。おいしくするための品種改良にしては不要な機能ですね」

「こーら、暴れないの」


俺、美女に捕まったまま、頭を撫でられ、なんだか幸せな気分になる。


「あ、止まった」

「こいつ今から殺されるかもしれないっていうの理解してないだろ?」

「いえ、理解した上で忘れたんじゃないですか?」


俺、食われそうになっていたことを思いだし、再び暴れる。


「ソルカもノーグも脅しちゃ駄目だよ」

「いや、それ、食材だからな?」

「もっとも、この大きさだとそれほど沢山は取れないですが」

「それなら、ほら。トカゲ君トカゲ君」


俺、再び撫でられ幸せな気分になったところで声をかけられ、美女の方を見る。


「私が君を安全な所で飼ってあげるから、尻尾のお肉をくれないかな?」


尻尾、トカゲなのだから切ってもまた生えてくるので問題ない(この時痛覚まで考えていなかった。結果的に問題なかったけれど)。


俺、1秒考えて美女に向かって頷く。


「はい。けってー」

「「なにこのトカゲおかしすぎる」」




出合いの話は以上。


その後、美女エルフであるミスティの手に握られたまま森の奥にあるという彼らの村に向かい、到着して俺の姿を見た途端に飢えた獣の目を向けてくるという怖いエルフたちの中で過ごすことになった。


自切はできないくせに、切られても4時間周期で生えてくる俺の尻尾を提供しつつ、ミスティとソルカ、ノーグの家で暮らす日々は過去4年間とは比べ物にならないほどに平穏で、今までの苦労はなんだったのだろうと思ってしまうものだった。


ちなみに、切られた尻尾はミスティたちだけではなく、村全体に配られるように順番を決めているのだとか。きっちり4時間置きに切られていて、寝てても問答無用で切られる。故に切られるのにもなれてしまい、寝る前と寝た後の尻尾を見て何時間ほど寝たか判断できるほどになっていた。


俺のことを教えてもらったのはエルフの村に来てからで、言葉を理解して身ぶり手振りで回答する俺に対し、ミスティたちが色々と教えてくれた。狙われて理由を知ったときは食材としか見られていないことに涙が出そうになった。出なかったけれど。そのお陰で苦労せず安全な暮らしができるようになった思えば立ち直れた。俺は単純思考なトカゲだった。


あと、この世界に関しても聞いた。夢溢れるファンタジーな世界。魔法のようなものがあるならば扱いたい。そう思って身ぶり手振りで伝えること1ヶ月。ノーグに伝わって教えてくれた。この世界の魔法とは呼ばず、魄式やら幻法やら言うらしい。魄式が自分の体内の魄気(?)とやらを使い、幻法は大気や大地から生まれる幻素というのを使うらしい。


今はまったく理解できていないけれど、理解して空を飛べるトカゲになり、せめてドラゴンと呼ばれるようになりたい。


最後に、ソルカ、ノーグ、ミスティは兄弟らしい。ソルカ160歳、ノーグ154歳、ミスティ142歳。全員俺より年上だった。前世から計算してもな。




ーー20年後ーー




デリシャーストカゲ20歳な俺。


大きさは成人男性の半分より大きいぐらい。そのうちの半分より掌分短いぐらいが尻尾。つまり、おおよそ体の半分が毎日食べられています。痛くないし、自分で食べてもおいしくなかったのでいいんだけど。


この世界に来てから随分と時間が経った。あと、5年も経てば前世と同じ年だと思うと・・・何も思わなかった。来た頃は人でないことにガッカリしていたけれど、流石にこれほど時間が立てば気にもしなくなる。何より、働かずに安全な生活が送れるのだから、有り難い話である。


時折、尻尾どころか全身を食べようとするエルフがいるけれど、その度に唯一覚えたて幻法【ナツーレ・トランス】で逃げている。所謂ステルスのような術で、単に景色に紛れるように全身を変色させるだけだけど、これがなかなか使い勝手がいい。いや、むしろ悪い。遊び半分にやったら踏まれそうになるし、逃げるためにやっても踏まれるのだから困っている。つまり、最初は逃げれるけど直ぐに見つかっちゃうのだ。


人の手によって改良されてしまったデリシャーストカゲ。その逃げ足は年を重ねる毎に遅くなるトカゲだった。


単に体が重くなっただけだと思いたいけれど、手足が体に似合わず大きくならず、少し動くだけでも体力を使いまくるのはどういうことだろうか?ぜひとも、こんなふうに改良した人に文句を言いたい。たまには走り回りたいのだ。


【ナツーレ・トランス】でほんの少しの時間を稼ぎ、エルフによって包丁が体に叩きつけられる前に、ノーグに助けられる。というのが食べられそうになるときの助かるパターンだ。よく可愛がってくれるミスティより、俺をからかうノーグの方が助けてくれるのは何だか不思議な気分である。


幻法を使うようになり、わかったことはもう1つある。生まれてこの方空腹を覚えず、飲まず食わずどころか排泄すらしないこの体は、幻素を体内に取り込むことで生きているらしかった。ただ、幻法を使いすぎたとしても空腹感はなく、尻尾の再生が遅かったり、エルフ曰く味が落ちているだけだった。嫌がらせにと、幻法を使いまくった結果、かなり不味くなったらしく、幻法が使えなくなる首を暫くつけられるはめになったのは10年ほど前だったか。


完全にペットになったようで悲しかったけれど、よくよく考えればペットではなく半永久的な食材として見られていることに気づいてさらに悲しくなったものだ。今では、勝手に生える自分の尻尾で暮らしているのだか、誇らしく思っている。無職、否、食材バンザイ。




そんな生活をのんびりと送っているある日のこと。


初めて慌ただしく動くエルフたちを見た。昼寝をしていると騒がしくなったことに不思議を覚えて窓から外を見ると、皆が弓やら剣やら持っているではないか。もしや、俺より美味しい、もしくは、珍しい食材でも見つけたのかと思ったけれど、どうもそんな雰囲気ではなかった。


焦っている?いや、恐れているのかな?驚いている人たちもいるね。


考えながらじっと見ていると、急に頭をポンポンと叩かれた。ゆっくり振り替えるとさっきまで居なかったミスティが困った顔に苦笑を浮かべて経っていた。


「やっぱり、トカゲ君は感じてないんだね」


そんなよくわからないことを言うミスティに、なんだか不安を覚えた。窓を覗くのをやめて、ミスティの方を向く。ミスティは俺の前に座って、また、ポンポンと頭を叩く。


「実はというとね。君を見たときから気づいてたんだ。君は私たちとは違うって」


そりゃ、エルフとトカゲからして違い過ぎる。


「たぶん、君に言っても確信は聞こえない(・・・・・)と思うんだ。君は危機感すら持たせて貰えなかったのだから、何も知ることはできないんだろうね」


ずっと優しくポンポンと叩くミスティの手を避けて、何をわからないことを言っているんだ、と彼女の掌を甘噛みする。


「・・・うん。なんとなく分かるよ。君はやっぱり、感じてないんだね。このどうしようもない喪失感(・・・)恐怖心(・・・)を。私たちはね、トカゲ君。君や私たちを含めて君がずっと見てきた世界はね、幻の世界なんだよ」


・・・何を言っているのかわからない。


「この世界は●●●が幻法によって作り出した世界。ここにいる動植物、土も空も全ての物が作り物なの。実はね、君がこの森で過ごした20年はこの世界の外だと5分ぐらいのものなの」


私たちもさっき気づいたんだけどね、という彼女の言ってることが、わからない。


「今、この世界を作った●●●が死にかけてる。その影響かな?この世界で生れたて全てがこの世界のことに気づいて、いきなりの事実に驚いているし焦ってるの。私の年齢、157歳だけど、これも実は●●●が作った設定で、本当は君が生まれたのと同じ時に生まれたの。この20年より前の記憶はぜーんぶ作り物」


彼女の言っていることがわからないけれど、そんな悲しい顔をしないでほしい。俺は甘噛みを止めて慰めるように指をペロペロと舐める。


「慰めてくれてるのかな?でも、うん、ショックなんだけど、私はもう諦めたからこうして落ち着いてるし、君が気にすることもないよ。それにね、私よりも君の方が、たぶんだけど、もっと辛い立場なんだと思うんだ」


もう片方の手で、俺の頭を撫でてくれる。


「外の世界の情報が、●●●の情報が流れてきたからわかったんだけど、君は●●●と似た存在なんだね。■■■に他の世界から連れてこられた外の世界を壊すための存在。●●●もそういう存在だから、外の世界を滅茶苦茶にしてたみたいだし、だから、外の世界の人たちに殺されそうになって、逃げるためにこの世界を作り出した。この森の端でずっと逃げつつ戦ってたみたいだね。まっ、●●●のことはいっか」


時折、本当に言葉が聞き取れない。


「君は■■■から外の世界を壊すために送られた者。でも、君は■■■が欲した存在じゃなかった。むしろ、反抗したのかな?それで、ただ消滅させるだけじゃなくて、●●●がタイミングよく作り出した幻法の世界に転生させた。美味な食材として搾取されるだけの存在として、●●●が死ねば消えるだけの存在として、■■■の思惑に乗らなかった罰としたんだと思う。実際、この森の外に人間なんていないし、君以外にデリシャーストカゲなんて種類のトカゲもいない。ううん、トカゲすら君しかいないんじゃないかな?君だけが■■■に●●●の世界に組み込まれた●●●が想像していない唯一なんだよ。だから、この世界が消えかけてるこの瞬間も、君だけはそのことも感じられない。根本が違うから。私たちの作られた心が怯えていることを、他の世界から送られた君の元々の心は感じられない」


撫でるのを止めて、ミスティは急に俺の頭を抱えるように抱き締めてくる。


「君は頑張って食べられずに生きて来たのにね?何も気づかず、知らされず、ただ消される。気づかされた私たちとどっちが辛いんだろうね?私は君が可哀想に思うよ」


だからせめて一緒にいるよ、とミスティが言う。その言葉を聞きながら急に襲ってくる睡魔に身を委ねそうになる。


「もう1分もないかな?でも、君は気にしなくていいよ。こんな地獄絵図、優しい君が見なくていい」


どうやら睡魔の原因はミスティの幻法らしい。彼女の幻法の腕はこの村で1番で、俺なんかが抗えるものじゃない。


「君の視線が私たちのことを思ってくれてたのは皆がわかってたよ。■■■に送られた存在としては異質なんだろうけど。けど、君が私たちと一緒に暮らして楽しく思ってくれているのは、皆と一緒に生きていきたいと思っていたのはわかってたよ。だからね、私は思うの。この地獄絵図を見て辛く思わないで欲しいなって。皆は慌ててるけど覚悟してるし、心が"どうにもならない"ってわかっちゃってるけど、君の心はそういうふうには思えないと思うから。●●●の影響がない分、受け止めきなくって狂ってしまうと思うから」


眠くなる。意識が遠ざかる。ミスティの言っていることがわからないまま、俺は睡魔に身を委ねて目を閉じる。


「お休み、トカゲ君。幸せな夢を見てね」


そして、俺は眠った。寝る一瞬手前で転生した出来事を思い出したけど、何もできないまま眠りについた。


ミスティやノーグ、ソルカたち、他のエルフの皆でワイワイと楽しく過ごす夢を見ながら・・・。




†  †  †  †




そう言えば、と意識を失う一瞬前に思い出す。思い出したのはほんの一時のこと。


「ようこそ、理不尽な死にあった者よ。これからお前を転生させてやろう。転生した先は自由な世界だ。お前が望むことを望むままに成せばいい。他人なんて気にするな。我が許す。私利私欲のままに生きるがいい。そのために、お前は何を望む?欲望のままに生きる力を我が与えてやろう」

「あ、いや、いらないです。死んだのはショックだし、やりたいことはいっぱいあったけど、他人に迷惑なんてかけたくないし」

「・・・つまらん。外れを引いたか。欲望まみれでなければ世界に影響を及ばさんというのに。手間がかかっただけではないか。よくもまぁ、我の手を煩わしてくれたな。その罪を抱えて、蝕まれた果てに無価値に死ね」


傲慢不遜な態度の者にそう言われたんだったか。確かに食材となったし、何もしていないのだから無価値なのだろう。


だけのら、目を覚ましたら何かをしよう。ミスティの言ってたことはわからないけれど、目を覚ませばいつもの生活に戻るだけだし、皆の笑顔があるのだから、何もしなくてもいいかもしれない。けれど、せっかく、前世の記憶があるのだから、何か便利なものでも作ってみるかな?


トカゲの体でどこまでできるかわからないけれどね。



●●●・・・創造主。ある存在によって転生させられた者。自分勝手で「ファンタジーな世界!?ならエルフいんだろ?ハーレム作るぜ!」なんて言って、転生後に周りに迷惑しかかけなかった転生者。

■■■・・・創造神。ある存在。何人も転生させて世界を滅ぼそうとしている者。


世界観

主人公やエルフたちが暮らしていたのは●●●が幻法という魔法のような術で作り出した一時的な世界。外の世界、というのが本当の世界であり長編小説『剣魔戦姫の冒険譚』の舞台。他の世界というのが、●●●や本作のトカゲが元いた世界。


本作は『剣魔戦姫の冒険譚』を世界観を基に、作者が赴くままに書き上げたサイドストーリーです。

本編はこちら↓

http://ncode.syosetu.com/n3024ed/


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