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第1話の詩“始まりの血”

・第1話の詩“始まりの血”


 語られることなく


 歴史は雲の一部しかない


 答えを掴むことはできず


 歴史の史実は空のように青くて掴めない


 ただ、小さな日々が壊れたとき


 絶望の中、狂気と喜びを感じながら笑う人


 赤き血と共に


――――――――――――――――――――――――――――


 小国エルトニア。そこには光を感じることができない1人の人がいた。本名は一切不明。ただ、タスクと呼ばれていた。


 テルア村から離れた場所に2階建ての家を建てそこに住んでいた。


「……」


 2階建ての家でタスクが寝ていた部屋からは太陽の日差しが差し込む。むくりと体を起こして窓の方を向くが、日の光は感じなので、太陽の日差しを見ることができない。


 ただ、匂いや音や触覚などで感じていた。部屋に置かれている物は把握している。でも、何があるかわからないので、ベッドの近くに置いた伸縮する2mの棒を掴んで周囲を調べながら歩く。


 まずはトイレに行き、1階のリビングから調理場へ。冷蔵庫から飲み物を取り出して、コンフレークを取り出す。


(目覚めたか。主よ。今日はどうする)


 落ち着いた女性の声がタスクの頭の中で声が響いた。念話だ。


(今日も体を動かす。手伝ってくれる?)


 口を開けずに心の中の思いを伝える。


(なら、外で待とう。それから、妾にも今フレークをくれぬか)


 コンフレークの催促が来た。


(わかった。持って行くよ)


 そう言うと、手に大きな器とコンフレークが入った紙箱を持って家の外へと出る。

 外には赤い竜がいた。


(おはよう。ローズ)

 

 口を開けずに念話のみでタスクは挨拶をする。


(髪がひどいありさまだ。主よ)

 そう言うと、タスクを傷つけないように優しく持ち上げて切り株の上に座らせて、タスクの髪の寝癖を直して整える。


(ありがとう)

 タスクは念話で返事をしながら、コンフレーク器に入れる。


 体系と食べる量を考えると少ないように感じてしまうが、ローズは燃費のいいドラゴンなので問題ない。

さらに契約によってタスクが食べるものが自分の栄養となるので問題ない。逆に、ドラゴンが食べるものが栄養にもなる。


 お互い持ちつ持たれつの関係だ。ローズはタスクの髪を整えると、タスクが器に入れたコンフレーク食べる。


 タスクも家の中に戻ると、自分の器にコンフレークを入れてもしゃもしゃとを食べ始める。


「おはようございます」

 元気な声が消えた。タスクは声の方を向く。むろん、見えてない。


 家の外には、エプロンドレスを着た少女がタスクの家の前まで来ていた。手には籠を持っていて約3日分の食料が入っていた。


「ミシェルか。いつもありがとう」


 ドラゴンは、ミッシェルの挨拶に対して、声を発してミシェルに礼を言う。


「タスク姉さんは?」


「家の中だ」


「わかった」


 そう言うと、家の玄関のドアの呼び鈴を鳴らして中へと入る。

 家の中ではタスクがばりばりという音を立てながら、コンフレークを食べていた。


「主もおはようと言っている」


 ドラゴンがタスクの声を代弁した。

 ミシェルは幼い頃から、タスクがほとんど声を発して話さないのを知っている。

 母に手を連れられて、遊んでもらっていて、いつしか彼女へ食料を定期的に運ぶようになっていた。


「ミシェルよ。いつも、助かるよ」


 ローズは礼を言う。


「いいです。何かあったことを考えたら、タスクさんやローズさんの力は必要です。それに……」


 ミシェルは下を向いた。


「どうした、気になることでもあるのか」


 ドラゴンの問いに暗い声で答えた。


「バルベル帝国が、このミラデルに進行したみたいなんです。それで、戦争が終わるまでは疎開する必要があるんです」


 平和な生活をしていたミシェルには戦争が不安に感じていた。

 安全な場所に逃げても、戦争に負けたらと思うと不安だった。


「ミシェルよ、お前さんは若い。夢を持つのじゃ。そういう不安を解決するのは主や我のしごとじゃ」


 ドラゴンはタスクを見る。

 口元には笑みを浮かべていた。

 ミシェルはタスクが喜んでいるように見えた。


「今日は何かいいことがあったのですか」


 ミシェルはタスクに尋ねる。

 ただ、笑みを浮かべながら立ち上がってミシェルの頭を撫でた。


「ミシェルよ。我と主がいる限りは安全を保障する。今後も定期的な食料をもらえれば村は守り続けよう」


「……ありがとうございます。でも、ローズさんやタスクさんが戦うのは辛いです」


「それが戦いじゃ……」


 ドラゴンがそう言うとタスクの方を向いて

「どうした」

と問いかけた。


「ミシェル、家の中に入って……。私が来るまで……出てはいけない」

 タスクは感情を一切感じさせない言葉でミシェルに言う。


 ミシェルはタスクが声を出したことに驚いたが、素直に従う。


 それは何か特別な理由がある時だ。


(敵か?)


 ローズの問いに

(わずかだけど声が聞こえた。調べる)

とタスクは念話で返事をすると耳に付けていたイヤーマフを外す。


 すると、普段聞けないものが聞こえる。

 聞こえたのは、悲鳴、銃声、爆発音、肉が切り裂かれる音だった。

 さらに注意深く聞くと、悲しみを感じた。


 タスクは目が見えない代わりに感じて世界を知ることができた。

 そして、タスクがイヤーマフを付けているのは自身の能力を制限するためもあった。


(ローズ。行こう)

 タスクは念話で言うとイヤーマフを付けて棒で周囲を確かめながら外に出てドラゴンに乗る。


「ミシェルよ。ここは安全じゃ。けして、ここから動くな」


「はい」


 ローズの言いつけにミシェルは頷いて答える。

 そして、タスクはローズの背にのり、ローズは翼を強く羽ばたかせ、空へと舞い上がった。




 タスクが住む場所から5km離れた場所で疎開をしている人たちがバルベル帝国の偵察部隊に襲われていた。

 何人かのバルベル帝国の兵士は殺した人を剣で切り裂いて血を飲んでいた。


「渇き、潤う」


 一人の兵士が呟いた。恐怖で逃げおくれた人は目の前で行われている行為から目が離せなかった。

 人が他人の血を飲んでいるだけじゃない。人の肉を食べているのだ。


「……ひぃ………ひぃ」


 逃げ遅れた人は助けを求めようとして、声を出そうとした。しかし、声が出ない。そして、一人の兵士が逃げ遅れた人まで歩いて来て手に持っている剣で突き刺した。


「ぐぎゃぁあああ」


 声をあげるが、何度も何度も突き刺され、心臓に剣が刺さるとぷつりと声が止まった。


「……」

 逃げ遅れた人は、知らない場所で誰も知られずに死ぬのは嫌だと思いながらバルベル帝国の兵士に殺された。


 そして、逃げ遅れた人を殺した兵士は周囲に敵がいないかを調べる。

 目の前の欲望を満たすにも安全の確保が必要だ。また、早くこの苦しみから逃れたいという衝動に駆られながら周囲を探す。


 すると、手に剣を持った人や銃を持った人がいた。

 見た目は灰色の服を着ていて、装備はミラデル正規兵と違う。

 しかし、兵士にはどうでもよかった。肉が増えたとしか思っていなかった


「獲物がいた。報告」


 兵士が言うと人の肉や血を飲むのを辞めて走り出した。

 大隊に伝えるためだ。兵士がいるということは、周辺に部隊がいるはずだ。例え少数でも苦しみを消せる血と肉があるなら構わない。


 兵士はそう思いながら剣を握りして走りだした。

 ほかの兵士も自分の持っている武器を持って走り出す。

 銃を持った人が反撃してくる。数ではこちらが負けているのに一切の恐怖もない。

 ただ、一人倒れようと動けるかぎり歩みを止めない。

 

 バルベル帝国の兵士に攻撃をしていた集団は

「なんだよ、あれ」

と声を上げた。


「うろたえるな。攻撃をして動けない奴もいるんだ」


 集団の隊長らしき人が声を上げた。


「ガサドさん。これは異常ですよ」


「わかっている。でも、おれらは自警団だ。異常がありましたで逃げられない。俺たちがやられたらテルア村が襲われるんだ」

そう言いながら、ガサドは銃持っている人は撃ち続ける。


 帝国兵が戦っている相手は自警団だった。銃声を聞いて駆けつけたら悲惨な後継があった。

 明らかに異常であったが、お互い敵である。

 必然的に戦うのだが、自警団は不安だった。


 人数が勝っているのに、着実に距離を詰めているのだ。

 手にした盾で銃弾から身を守りながら歩みを止めずに来るのだ。


 30年前の大戦で見た異常な光景をガサドは思い出していた。ガサドは覚悟を決めないと思った。


 しかし、1人の人間の登場によってわずかに思考が止まる。

 なんと、人間がバルベル帝国の兵士の一人の上に落ちたのだ。

 あれは何だと思い全員が注目した。


 ガサドは目の前の人間を見て

「逃げるぞ」

と言った。


 長い戦場でわずかな思考が停止しても判断は素早かった。

「えっ」

 ガサドの言葉でタスクを知らない人がざわついた。

 タスクが契約者だと知っている人は、ガサドが言う前に逃げ出していた。


「とにかく、逃げるぞ。俺たちがいたら本気がだせない。あとドラゴンに焼き殺されたくないならな。とにかく、あいつは契約者だ」

ガサドは言うだけ言うと敵に背を向けて走り出した。


「うそだろ。でも、とにかく逃げなきゃ」

 タスクを知らない人たちは、ガサドの逃げる姿につられて逃げ出した。


 一方で、タスクは踏みつぶしたバルベル帝国の兵士の上で立ち上がり、ぐしゃりと足で頭を踏みつぶした。


 彼女は目が見えていない。でも、感じることで見えていた。だから踏みつぶせた。

 バルベル帝国の兵士は自分の仲間が殺されたことに何も感じない。

 あるのは渇きや苦しみを癒す獲物が現れたとしか感じていない。


(1人でやるか)

 ローズが問いかける。


(うん、やる。ローズは周囲を調べて)


 タスクはローズに返事をすると手に持っていた棒が消える。


 代わりに左手には、木殺しと呼ばれるチェーンソーと呼ばれるものを持っていた。

 形は剣の形をしていて、束にはトリガーがあり、刀身の部分はチェーンソーになっていた。


 タスクの近くにいた兵士が手に持っている剣で攻撃を仕掛けた。


 だが、タスクの攻撃は、剣で受け止められた。

 がきんという音がして、つばぜり合いになる。

 タスクは、木殺しのトリガーを引いた。


 きぃいいいいいいいんというモーター音と共にチェーンソーの刃が動き出す。


 ばきん


 大きな音を立てバルベル帝国の兵士が持つ剣が折れて兵士ごと切り裂いた。


 ぎいいぃいいんぎいいいいいん


 大きな音を立て駆動する木殺し。

 その音から帰ってくる反響音から周囲の兵士の位置を確かめた。

 トリガーから手を放すと、近くの敵から攻撃を仕掛けるのをタスクは感じた。


 銃を持っている兵士は誤射があるので銃剣でタスクと戦おうとする。

 タスクは空気の切り裂く音と気配で敵の攻撃を避ける。

 空気や匂いから敵が近くにいる。方向もわかる。


 タスクは木殺しのトリガーを引いて、横に剣を払った。耳障りな音と共に、タスクは鎧ごと兵士の上半身と下半身を分断した。


 タスクは口元でにやりとした。


(楽しそうじゃな)

 ドラゴンはタスクの戦いを見ながら念話で呟いた。


(……)


 タスクは返事をしないが、自分にお襲いかかっくる兵士を木殺しで殺した。


 目の前で、耳障りな音で殺される様子を見た帝国兵は足をとめて、近接戦では勝てないと判断。銃で応戦することにした。


 しかし、タスクは体をかがめて、銃による最初の攻撃を避ける。

 これで、攻撃は終わらないが次の攻撃まで接近する余裕あった。


 一気に距離を詰めて、すぐ近くの兵士に木殺しを振り下ろす。


 それに対して、敵も兵士であり、命をかけて戦っている。手に持っている銃でガードをする。


 しかし、剣や鎧を破壊して切り裂く武器である。

 トリガーを引けば、簡単に銃は切られそのまま、兵士の右肩から切り裂く。


 だが、タスクは途中でトリガーから手を放して兵士の首の当たりを掴む。自分を狙う存在がいると感じてとっさに回避行動を行ったのだ。


 ばん


 銃声と同時に木殺しが食い込んだままの兵士に当たる。


 再びトリガーを引いて、肉と鎧を切り裂き、上半身が分かれた兵士の体をもう一度盾にして音のする方向へと突き進む。


 息遣いや匂いから敵の考えてることを考えて、右手に持った死体で弾丸を受け止める。もとから前が見えてないが、木殺しのトリガーを引いてでる音から地形も把握していた。なので、躓くことなく接敵。木殺しで殺す。


 時間にして2分もしない間にタスクはバルベル帝国の兵士を6人殺した。


「……」

 タスクは笑みを浮かべながら、周囲に敵をいないか木殺しの音を鳴らす。


 反響から敵はいない。

(まだ、いる?)


(もういない。タスク)

 タスクの疑問にローズは周辺の様子を調べた結果を念話で答えた。


(満足か)

 次にローズがタスクに質問を投げかけた。


(……)

 タスクは答えない。ただ、タスクは表情からは笑みが消えており、ローズがいる方向へと手を伸ばした。

 ローズは手を伸ばしたタスクの元へ行き、右手で優しく抱きしめる。


(大好き)

 タスクは唐突に念話でローズに囁いた。


(……安心せい。妾は主を嫌わない)


 ローズの返事に安らぎを感じる。そして、目を閉じて眠り始めた。安らかな寝息を立ていた。


 ローズは片手で抱きかかえながら、疎開の人たちの押し車から毛布を取り出して、タスクを寝かした。

 ローズは寝かすと、空を見上げた。空は青いが、地は赤いと思った。

 そして、大きな戦いがくるではないのか予感するのであった。


 試験的な意味合いで第1話を投稿。とりあえず、豆腐メンタルですよ。

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