モテモテ超絶美少女の日常はこんな感じだった!
「ずっと好だった!付き合ってくれ!」
「ごめんなさい」
またイケメン男子を振った。
「でも可愛いよっ!気持ちを知ってもらえてよかった!」
練習してきたであろう精一杯の負け惜しみと微笑みを残してイケメン男子は去っていく。
私は幼稚園の頃から可愛いと言われ、高校生になる頃には「レジェンド美少女」だの「超絶美形ヒロイン」などと呼ばれるようになっていた。
これは私の意図したところではない。
イケメン、またしてもイケメン。次から次へとイケメンが押し寄せる。
ああ気持ち悪い!!なんなんだこいつらは!?
みるきーを見よ!ベッキーを見よ!
才能も美貌も兼ね備えた女たちが懸命な努力と涙で積み重ねたキャリアを破壊され、将来設計を失い、使い捨てにされて病んで去っていく。
フラれたイケメンたちが噂を立てる。
「あいつはビッチだ」「顔が可愛いだけで心は腐ってる」
私の前ではしおらしく去っていったくせに陰に回れば民意を集めて、民主主義を使って攻撃するのだ。まったく気持ち悪い。
言わんとする所は「服従しろ!」「無料で好き放題させろ!」である。
女や恋愛を食い扶持にする連中がメディアや雑誌を使って攻撃する。
「若い女の子が恋愛したがるのは当たり前!」
「イケメンを見るとときめく!」
「自分がどうなっても恋に生きるのが女!」
「付き合った人数3人以下だったら引く!」
「20歳まで付き合ったことがないなんて人格に問題ある!」
笑わせんな。飽きたらボロ雑巾みたいに棄てるくせに。
問題が起これば逃げ出すくせに。
それでいてまた民意を使って「重たい」「めんどくさい」。
言わんとする所はやはり「服従しろ!」「無料で好き放題させろ!」「楽しませろ!」である。
少女漫画では薄気味悪いヘナヘナしたジャニーズ系の肉食男子が王子様だ。
描かれるのは私が私が…自分だけが、幸せになりたい、という私利私欲ばかりだ。
イケメンと付き合えば幸せになれる…とはどういう魔法だ?
見栄え以外取り柄のないイケメンにどれほどの魔力があるというのか。
私はそこら辺にいる冴えない草食男子が好きなのだ。
しかし草食男子は奥ゆかしくて、自分の気持ちを厚かましく見せつけたりしない。
他人に善意を利用されて、挙句にキモがられていたりする。
イジリと称される暴力にじっと耐えていたり……。
まったく目に見える姿は情けない姿ばかりである。
――だがそれがいい。
抱かれるなら冴えない草食男しかありえない。
「ねぇ美咲?」
友人の千紗が私に尋ねる。
「美咲みたいな可愛くて、優しくて、すっごいモテる子が、どうして処女を頑張れるのかなあ?」
私はふわりと笑って言った。
「女は可愛くなければ生きていけない。処女でなければ生きる資格が無い」
千紗も笑顔で応える。
「だよねぇ!性病や子宮頸がんも防げるし!」
――「じゃね」「ばーい!」
千紗と別れて一人で歩いていると声がかかる。
――ねえねえ君!
「可愛いねえー!芸能界に興味ない?」
また芸能事務所のスカウトか。これまた素晴らしいイケメンだ。
元アイドル志望者だろう。夢破れてもしがみつく。
「おカネいっぱいもらえるし、イケメンもいっぱいいるよ!」
「間に合ってます」
私はスカウト氏を押しのけた。しかし簡単にはあきらめない。
何かしら言ってつきまとう。
「超絶美少女って言われるでしょ?」
「ええ、言われますよ」
「えっ、ああ、そうだろうねえ」
「そんなことないですよ」なんて口元に笑みを浮かべて立ち止まったりはしない。
言われ慣れている私には通用しない。しかし更に食いつく。
「可愛い子がいるっていう噂を聞いてわざわざ出張してきたんだよ!ちょっとだけ話を聞いてよ」
「そんなのそっちの都合じゃん」
「心は痛まないの?」
「私を獲得したらボーナスがもらえるんでしょ?」
「チェッ!」
舌打ちを私の背後から浴びせてくれる。私は振り返って言った。
「あんた、いや、あんた達は大いなる眠りの中にいる。葬られたことに気づかないままに、ね」
もう追ってこなかった。しかし必ずまた現れる。
イケメンはウジのように湧いてきて、コバエのようにつきまとう。
そして汚い足跡だけを残してゆくのだ。




