プロローグ
初めての投稿です。
処女作ではありますが、よろしくお願いします
そこにはこの身を賭しても守りたい少女がいた。
昭和の町は燃え上がる。火の粉は平成の街にまで届いていく。
少年の周辺は赤く染まっており、見上げてもそこには青空なんてない。
黒煙が渦巻き、前後左右の炎が逃げ道を塞ぐ。
日本の古きを伝える昭和の町は既に火の海と化していた。
赤い地獄が町を包み込み、少年はその中心にいた。
そんな極限の場所でも少年は足を後ろに下げることはしなかった。
目の前にいたからだ。
少女が。
助けたい。いや、助けなければならない。
そんな少年の強い意志は辺りの猛火を認識から消した。
助けなければならない少女はこの炎の中、うずくまっているわけではなく、泣き叫んでいるわけでもない。逃げ出そうともしていない。恐怖も感じ取れない。
動こうともしない。
ただ二本の足で立っているだけ
そしてうっすらと笑みを浮かべていた。
町には少年と少女の二人しかいない。
ほかの人間は既に脱出したのだろう。
もしかしたら逃げ遅れて命をおとした人間もいるかもしれない。
でもそんなことはどうだっていい。
こちらに迫ってくる炎の塊は少女の顔を明るく照らし、時に暗く映す。
今も白い歯をこぼす少女は、立ったままこちらを冷たい瞳で見つめてくる。
少年は踏み出す。
少女を助けるために。
ーー人間兵器というものがあった。
2045年に人工知能が人間を超越し、シンギュラリティを迎えた。
その年は第三次世界大戦の真っ最中。世界各地で大規模な戦闘が行われていた。
人々は発展しすぎた人類の科学と兵器による殺戮を目の当たりにし、恐れ慄いた。
シンギュラリティを迎えるという重大な出来事に気付く余裕もなかった。
そして日本は各国を制圧するため人工知能を用いた新たなる殺戮兵器の開発に力を注いだ。
それが、後の人類の黒歴史となる人間兵器の誕生の元となる。