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クレアツィオーネの種  作者: ガタミン
白の領域編
2/2

脳みそが溶けそうです。

セフィルの腕の中で話を聞いていたが、次から次へと理解しずらい内容が続く。

異世界って言ったのか?今。救世主?……強制召還?何のこと?

ちょっと待って、訳わかんないよ!!


「意味が解らない…。何?異世界?強制召還って?」


解らず見上げたセフィルの顔は、優しく微笑みながら説明してくれた。


『其方が居た世界を仮に【A】と言う世界だとしよう。その【A】とは別の時空、空間に存在する【B】と言う世界がある。それを異世界と言うのだ』


セフィルは言葉を続ける。


『今、其方が居るのはその世界と世界を繋ぐ時空。其方達が言う、神が住まう領域だ』


混乱と同時に疑問が浮かぶ。


「何で、そんな所にっ……!!」


セフィルは未だ頭を撫でる手を止めない。


『其方は強制召還されたのだ。異世界、イデアルの救世主として』


「ーーーーーーッ!!!」


息が詰まる。呼吸が出来ない。なんで?

今までの話の中で、直接的な言葉は無かったが、頭の隅でチラつき始めた。

それを受け止めるだけの余裕が自分の中に今は無い。

必死にそれに気付かない様にと、セフィルにしがみついていた。


『落ち着いて。ゆっくり息を吐くんだ……そうだ。ゆっくり吸って……吐いて』


その間、セフィルは頭を撫でていた手を背中に落とし優しく摩った。


『……しかし、このまま強制的にイデアルに召還されるのは忍びない。我の声も聞かず、この様な行為を戒めるためにも、召還術に介入してやったわ』


セフィルの言葉に怒りが禍々しいまでに込められていて、戻っていた呼吸が再び止まってしまった。


『ああ…すまない。頼む、落ち着いてくれ。我はあまり世界干渉を好ましく思わなくてな、なるべく自身の世界は自身で築き育む事を願っていたのだ』


セフィルは、勇太に似た顔の眉間に皺を寄せる。


『その責で其方を、其方の世界を傷つけさせてしまった。許せる事では無い。自身の世界を救う為とはいえ、別世界を傷つけるなど……』


怒りを滲ませ、低く地を這う様な声に止まっていた震えも再び戻って来てしまった。


『ああ、また怯えさせてしまったな…すまない』


セフィルは腕の中で震え固まっている肩に手を置き少し屈むと、目線を合わせ優しく言葉を紡ぐ。


『これから其方は選ばなくてはいけない。召還に応じイデアルへと降りるか、それとも全く別の世界へと降りるか……』


その言葉を理解するのに時間が掛かる。セフィルは何と言った?

召還に応じてイデアルに降りるかって?降りるって行くって事か。

そんな無理矢理有無も言わさず、他人の世界を壊す様な奴が居るとこなんて行きたく無い。

しかも救世主とか言ってた?なんだ救世主って。中二病か?ふざけんな!!

しかも召還の巻き添えで勇太が…勇太達がこんなっ!………もう戻れ無いのかなぁ…ああどうしたらいいのかなぁ。

別の世界とかって言ったけど、別の世界じゃなくて元の、自分の居た世界に帰りたい…皆んなで…その選択肢は無いの?

なんかもう、どうしたらいいかわかんない。


考えれば考える程、頭は混乱し、瞳からはポロポロと涙が止まらない。泣き過ぎて、頭がクラクラしてきた。鼻が詰まって息もしにくい。その為かぼぅっとしてきた頭で、この後に続くセフィルの言葉を聞いて、頭が許容範囲を超えてブラックアウトしてしまったのはしょうがないと思うんだ。





ブラックアウトして目覚めてから、彼此1ヶ月程が経った。

気が付いたときは純白のフワフワのベッドで寝かされていた。

セフィルは目を覚ましたのを確認すると、安堵の笑みを浮かべ、暫く此処で過ごしてこれからの事をゆっくりと考える様に言ってくれた。


突然にいろんな事が一気に襲ってきたので、拒絶反応を起こしてしまったんだろうと言われた。

確かに、もう一杯一杯で理解するのを脳が拒否したんだ。

そんな訳で、セフィルの住むこの領域でお世話になる事にしたのだ。


今居るここは、最初にいた白い空間と同じ領域にあるそうだ。最初に居たあの場所はこの領域の端に当たるらしい。

どうしてあそこには何も無かったのかセフィルに聞くと、住む場所以外は何も必要無いからと、簡単な返答を貰った。

最初の一週間はベッドで泣きに泣いて暮らした。

涙が枯れる程泣くという言葉があるけど、枯れるぐらい泣いた。

実際枯れる事はないけど。ただ泣き過ぎて目蓋を擦りすぎ真っ赤に腫れ上がって、涙が出る度に痛みが伴った。

そしてその涙でまた涙が溢れるという悪循環。

それが一週間経った時、泣き暮らしている自分に嫌気が差した。


(何やってんだろ…)


こんな事してても何も変わら無い。まだ自分に出来る事は何かないのか、それすら確認してもいない。


悲しみに浸っているのはもう終わりにしよう。


こんなの自分らしくない。


いつだったか、勇太の声が心に蘇ってくる。


未那人ミナトって本当、前向き過ぎるよなぁ。ってか、前ってか上向いてるな、上!』


満面の笑顔の勇太がすぐそばにいるような気がした。


(そうだよね。勇太。

こんな時ほど、上向いて…だよね?自分らしく。)


そう堅く心に刻み込む。忘れない。勇太が笑って褒めてくれた自分の長所だ。

そうなればまず、確認しなくちゃいけない事がある。


本当に勇太達は元に戻せないのか?


これは最重要項目だ。確認するのはものすごく怖い。でも、この答え如何でこれから先の行動も大きく変わる。


(セフィルと話さなきゃ。)


そう思い、一週間出なかったベッドから降りる。

すると、そのタイミングでこの部屋に一つだけある扉がコンコンと静かに響いた。

ピクンと肩が震えた。正直ビックリした。

なんか、凄いタイミングだなと。そう思っていると、扉越しに声を掛けられた。


「お目覚めでしょうか?入室させて頂いても宜しいでしょうか?」


この声はここに来てからずっとお世話してくれている2人のうちの一人、執事長のトルストだ。


「…はい。」


返事をすると、音も立てずに扉が開きトルストが静かに入ってきて頭を下げる。

銀髪の髪を纏めて後ろへ流し、キチッと着こなした執事服が物凄く似合っている。

見た目は50ぐらいの紳士って感じだけど、実際の年齢はそれに5を掛けたぐらいだと、この後しばらく経ってから教えてもらった。流石執事長、その所作も優美に見える。


「湯浴みの準備が整っています。その後朝食をご一緒にと、主様が申しておりますので、ご案内致します。」


直ぐにでもセフィルに聞きに行きたいが、泣き腫らした顔は酷い有様だろうし、何より一週間ベッドの上だったのだ、風呂に入る気力すらなかった為に身体から嫌な臭いもしているだろう。

トルストが外に続く扉の前で此方に来るようにと促しているのが解る。大人しくそれに従いトルストの後に続く。

扉を出て廊下に出る。フワッと優しい香りが鼻をくすぐる。この香りは部屋でも嗅いだ香りだ。部屋にいる時は何処から香るのか解らなかった。


不思議に思い周りを見渡すと廊下に花瓶が置いてあり、そこに活けられている花の香りだと気付く。


「此の花はリェチーチと言う心を癒す効能がある花で御座います。」


花を見ていた事に気が付いたトルストがそっと教えてくれる。人の機微を感じてそれに答える事が出来るなんて流石神様に仕える執事である。

この後、トルストに案内されお風呂を頂いた。


案内されたお風呂場は、ものすごく広かった。テレビで見る、高級旅館の岩風呂のような外観で、洗い場も広く何人でも入れそうなほど広々としていた。

冷たい水も用意されていて、その水に顔を思いっきり突っ込んだ時は凄く気持ちよかった。

少しはマシになった所で身体をゴシゴシと力を入れて磨く。一週間風呂に入らなかったんだから絶対に臭い。

気安い神様だろうセフィルでも、臭いものは嫌だろう。自分も嫌だ。綺麗になった所で、湯に浸かり大きく息を吐いた。


これからセフィルに聞かなければならない。どんな答えであろうともちゃんと受け止めなくてはいけない。

もし、勇太達を元に戻す事が出来ると言うのならば、全力で行う。これは絶対だ。


そして、もし…もしも元に戻ることができないと言うのならば、セフィルが最後に言っていたことを真剣に考えよう。

そして、答えがどちらだとしてもどうしてもやりたいことがある。


湯から勢い良く上がり、そのままの勢いで脱衣所へと向かった。

脱衣場へ行くと、トルストが用意してくれた服を着る。

難しそうな作りの服で、着るのに悪戦苦闘しているとどこからともなく、メイド長のオネットがすーっと現れて着るのを手伝ってくれた。

形的にはお雛様の時に飾る人形が着ている着物に近いかな。でも所々キラキラした装飾品が付いてて、派手だ。


「良くお似合いですわ、ミナト様」

オネットが髪を整えてくれながら褒めてくれる。なんだかくすぐったい。


「ありがとう…。でもこの服って何処かで見たような気が…」


異界の服なのに見覚えがある。どこで見たのか不思議に思っていると、いつの間に来ていたのかトルストが答えてくれた。

「その衣装は、代々我々がお伝えする方々がお召しになられるものにございます。」


「え?!そうなの?……あぁそういえばセフィル様もこんなズルズル着てたかな」


トルストに言われ、思い返してみると、セフィルが着ていた物も調度こんなズルズルとした服だったことを思い出す。すると、クスクスとオネットが笑いながら出来ましたよと髪を優しく撫でて教えてくれた。

そして気づく、神様セフィルと同じ服を着るってなんか恐れ多いような気がするんですけど……。

とりあえず、これでセフィルの所へ行ける。


「では参りましょう。足元にお気をつけください。慣れないお洋服ですので怪我をされては主様が悲しまれますので…」


オネットに見送られ、案内してもらっている廊下を自然と早足になっていたのを、トルストがやんわりと注意くれた。

「あ、ごめんなさい…。」


トルストは優しく微笑みながらそれでは参りましょうと、セフィルの下へと導いてくれた。

廊下を進むと、正面に大きな扉が見えた。その扉にはすごく細やかな細工が施されており、一目で高級なのだろうとわかる。そんな重厚な扉についてあるドアノックをトルストが鳴らす。

するとゆっくりと扉は内側から開いていく。ゴクリと、喉を鳴らして扉が開き切るのを待っていると、トルストが扉の右側へと移動を強い中へ進むようにと手で促される。

そして、扉の中へとゆっくりと足を進めると、そこは白を基調とした家具で揃えられ、部屋の中央に1の大きさほどのクリスタルが中に浮いてくるくると回転している。

そのクリスタルの人には、よくゲーム等で見かける魔方陣のような模様が描かれている。自然とそのクリスタルに近づいていくとゆっくりと入ってきた扉が閉められた。

魔方陣の手前で足を止め、自分の頭よりも上に浮いているクリスタルをまじまじと見つめていると、魔方陣を挟むように奥からセフィルが歩いてきた。


「やぁ、ミナト。もういいのかい?」


優しさ溢れる笑顔でセフィルが迎えてくれた。


「…セフィル…様。ご心配お掛けして申し訳ありません。」


よくよく考えてみたら、相手は神様だ。今までの自分の態度や言動を振り返るとどう甘く見ても不敬だよなと…。

まずは言葉遣いや態度からちょっと死んでみようと考えた。すると、セフィルが驚きの表情の後、悲しそうな顔になり


「話し方や態度そのようにしないでくれ、今まで通り親しくしてくれないか?」


今にも泣きそうな顔で見つめられながら言われたら、もう後はないよね。不敬だろうが神様(本人)がいいって言ってるんだから今まで通りに戻そう。


「わかったよ…。セフィル。ところでこれって何なの?」


先ほどから空中をクルクルと回るクリスタルが気になって仕方がない。どうやって浮いているのか、何故クルクル回っているのかとか気になるよね普通。


「ああ、これか綺麗だろう。これは世界の鏡だよ。各世界の神子たちは我にコンタクトを取るとここにその神子の姿が映り我と話すことが出来るようになるのだ。」


なるほど、要するに通信機器ってことか…。このクルクル回っているのは何か意味があるのかな?回っていると受信しやすいとかそんなのか?


「これが回っているのは、その方が光を反射して綺麗だろう?」


ずっと見上げたままだったので、回っているのが気になっているのかが分かったのだろう。セフィルは優しく微笑みながら教えてくれた。


「確かにきれいだね…」


この部屋の窓が、このクリスタルの反射を計算して作られているのか、本当にキラキラ輝いている。いろんな色が溢れているように見える。綺麗だ。


「では、そろそろ奥の部屋へ行こう。美味しい料理ばかりだ。ミナトの口に合うと良いのだが…たくさん食べてくれ。」


セフィルは、魔方陣を伝い横までくると、手を取って奥の部屋へと連れて行く。

奥の部屋に入ると、そこはセフィルの私室なのだろう、すごく立派な文机がある。

その前に応接テーブルのセットが置いてある。全てにおいて高級感溢れかえっている。ただでさえ緊張しているのに、部屋の雰囲気に押されて、余計に緊張してくる。

すると、その応接セットに座るのかと思っていたらそのまま窓の方へとセフィルが進む。その後をついていくと、セフィルは窓を開けて、こちらだと手を優しく引いてくれた。すると、そこには…


「うわっ…!!すごい!」


目の前に広がるのは、素晴らしいとしか言いようがないほどの庭園が広がっていた。色とりどりの花が咲き誇り、瑞々しく生い茂った木々達は力強く、ハリのある葉は逞しい枝を飾っている。

そして綺麗にに整えられた木花達の中に、ちょこんとガーデンテーブルのセットが置いてある。よく少女漫画とかに出てくる王城とかの庭に置いてあるあのテーブルセットだ。もちろん色は白だ。

そして、そのテーブルの上に、食べたことのない料理が並んでいる。盛り付けも凄くきれいなのだが、その香りがお腹の音を誘う。


グリュルルルルルルルルルルゥ


咄嗟にお腹を押さえみるが、音が鳴り止むわけもなく…、今絶対に顔真っ赤だ。顔が熱いもん…。くっそーーハズい…。


「こちらに掛けて、早速ご飯を食べよう!」


セフィルは本来執事の仕事だろう椅子を引くと言う行為をし、座るように促してくれる。

少しためらいつつもトルストの顔見ると、優しく頷いてくれた。

椅子に座ると目の前に美味しそうな料理の香りが余計に近くに感じる。

セフィルの椅子はトルストが引いていた。そして、セフィルが席に着き、


「では、食べようか。ここの料理はすごく美味しぞ、たくさん食べてくれ」


目の前に広がる色とりどりの料理。一番手前にあったスープを1口飲んでみた。


「美味しい!!」


なんだこれ。口に入れた途端、使われているだろう材料の香りが口全体に広がった。

しかもその香りと同時に、下に絡みつくようにトロトロのスープがある瞬間、すっと抵抗なくサラサラな液体へと変わり、喉を通っていった。

何のスープなのか、全然わからないがとにかくおいしい。

セフィルは次々と口にスープを運ぶミナトの姿を見つめながら言う。


「そうか、美味しいか。こちらのサラダも美味しいから食べてごらん」


セフィルがサラダを取り分けてこちらに渡してくれる。

さっきから神様に至れり尽くせりに食事をさせてもらっているけど、これっていいのか?

恐縮しつつサラダを受け取り食べる。

シャキシャキの歯触りに加え豆の中に閉じ込められていた旨味が外へ飛び出してくる。

そして、豆の柔らかさと野菜のシャキシャキ感にこの豆の旨味、そしてこのサラダにかかっているドレッシングが絶妙に絡まって.....美味しい!!!!


ーーーー食べたことの無い料理を次々と食べ進め、ある程度お腹が満足した頃セフィルに聞くべき事を聞こうと、口を開こうとするが...出てこない。

やはり自分の中で聞く事に躊躇してしまっている。

気が付くと食事が終わってしまっていた。

聞かなきゃいけないのにどうしてもセフィルの姿を見ると、勇太そのもので、どうしても感情が邪魔をする。

瞳の色だけが違う勇太の姿をしたセフィルを前に声を描けようと顔を見る度......。


こんなんじゃダメだ。ダメなのに...ちゃんとしなくちゃって、解っているのに......。




ーーーーーその戸惑いは数日で消えてしまった。


今目の前で勇太が優雅にお茶を飲んでいる。花を背負って見えるのは幻覚だ。



ナンダコレ。



姿形は勇太なのに、仕草や語り口でここまで人の印象と言うのは変わるものなのか。


「おかわりを入れようか? 」


優しく微笑みながら聞いてくる。

見た目は果てしなく勇太だが、先ず声が違う。

勇太の顔から全く違う声が聞こえてくるのに最初は戸惑った。

違和感が在りすぎて受け入れられないのだ。

でも慣れた。

...というかもう勇太に見えない。

勇太はこんなフンワリ笑わない。

もっと豪快に笑う。

言葉使いも乱暴だし、こんな丁寧に話さない。


全くの別人なんだと二週間程一緒に過ごして強く思わされた。


もう、勇太は居ないのだと。


すごく受け入れられない事実なんだけれど、目の前にありありと現実を突きつけるように勇太じゃない勇太が居ると、受け入れるしかないのかと...すごく、すごく辛いけど...思った。

だから、これからの事しっかり考えないといけないと、改めて思った。


「ありがとう、頂きます」


二口程残っていた紅茶に似た飲み物を飲み込んで、カップをセフィルへ渡す。

セフィルはカップを受け取り、勇がな所作で飲み物を注いでいる。

おかわりを受け取り、再びカップを口に付けふうっと息を付く。

本来執事の仕事であろうお茶を注いだりする事を、セフィルは嬉々として行ってくる。

どうも自分で出来ることは自分でやりたいみたいだ。

神様らしからぬ所業である。

今回もお茶の用意からセフィルがしたそうだ。

そして、本物の執事のトルストは静かにセフィルの後ろで控えている。

彼はここで働いている執事逹を管理指導し、セフィルや、セフィルの眷属の人逹が働く安いように身の回りのお世話をしているそうだ。

その横には少しふっくらとした体型の中年の女性のオネットが優しい笑みを浮かべて立っている。

彼女はメイド長でここでセフィルに使えているメイド達を一手に引き受けて管理指導を行っている。

この二人がセフィルの身の回りの世話をしている。

そして、先程出てきたが、セフィルの眷属についてだが、セフィルには何人藻の眷属がいる。

眷属逹はセフィルの補佐をしているそうだ。

セフィルは全ての存在する世界の神様だから、全ての世界を把握して人々を導かなければならない。

しかし、セフィルとて一人で全てに目を届かせることが出来ても同時に手を出す事ができるのは全ての世界の2割程だと言っていた。

その為、眷属の人逹がセフィルの補佐として世界を管理しているそうだ。

なんだかセフィルが社長で眷属の人逹が会社員みたいだなと密かに思った事は内緒だ。

そんな人逹がこの屋敷のある領域に住んでいるそうだ。

そして、今居るのは祖の屋敷の中庭だ。色とりどりの花々が咲き誇り、美しく整えられた木々が緑濃く立ち並んでいる。

その中に真っ白なテーブルと椅子がおかれていて、今そのテーブルに着いている。

建物に囲まれる形でこの庭はあるのでどちらを向いても後方に建物が見える。

こうしてみてみると、このお屋敷ってものすごく大きいことが解る。

中庭の大きさが野球グラウンド4つ分は軽くあるだろう。

その中庭を囲むように建物があるのだから建物も然り。

更に、地下室や露天風呂等の遊興施設が複数この領域に存在している。

この他に、世界毎に管理する為の部屋があるそうなので、もう屋敷と言うより一つの街がこの領域の中にあるみたいだ。

最初部屋から出なかった頃はここまで広いとは思わなかったが、部屋を出るようになって数日。

セフィルやトルスト、オネット逹と話して解った。

ここはとてつもなく広い。

一人で出歩けば確実に迷子になる。

自信を持って言えるね。


『ここは迷子になりにくいと思うが、ミナトは方向音痴というものなのか?』


「そうだね~。自覚型方向音痴かな。はっはっはー.........?」


っちょっとまて、今口に出して話してたっけ?


『いや?口に出して話してはいない。安心しろ』


へ?ってことは心の中で思った事がセフィルに伝わっていたってことで......。


「安心できるかーーーーーー!!!!」


それって、心で思った事が全てセフィルには筒抜けって事だろう?

そんな変なこと考えたらまるっと丸わかりって事で.........

っ!!ちょっ今まで変なこと考えてなかったよな?!


『大丈夫だ、変なことなんて考えてなかったぞ。それに、ミナトの事なら何でも受け入れる。安心していろんな事を思えばいい』


ーーーー あ あ そ う で す か 。


やっぱり神様は凄い。

いろんな意味で......

頭が下がる思いです。...実際に下がってますが。


『ああ、だから遠慮なく聞きたいことも言いたいことも口に出してくれ。ミナトが話してくれた時が、ミナトの準備が出来た時なのだと判断するのでな』


一瞬解らなかったが、ああ、と気が付いた。

セフィルは 待ってくれていたんだ。

最初から聞きたいことは決まっている。

でも、セフィルは言った。

口に出したときが準備の出来た時だと。

こちらの心の準備が出来るのを待っていてくれてたんだ。

その事に気が付き、ほんの少し胸が温かくなった。

大切に扱ってくれている事に感謝した。


「...ありがとう」


俯いたままで、小さく囁く声でお礼を言う。

実際耳に届かないぐらいの声だったけど、心が読めるのだから感謝していることは伝わっているだろう。


『ふふ、ミナトは恥ずかしがりやだな。』


セフィルは俯く頭を撫でながら、優しく笑った。

トルストもオネットも慈しみ深い眼差しで見守ってくれている。

こんなに優しく温かい場所で、こんなにも自分を大切に扱ってくれる人逹が居る。

この人達に恥ずかしくないように、自分も此れから聞かなくてはいけないことを、ちゃんと受け止められるようにならなくてはいけない。

膝の上で拳を握りしめる。

瞳を閉じ、ゆっくりと深く呼吸をする。

例えどんな答えが返ってこようとも。ちゃんと受け入れて、それに対して行動する。

どんな時でも゛上向きで゛だ。

瞼を開け、セフィルの瞳を見つめる。

青い、空の色だーーーーーーーーよし。


「セフィル、教えて欲しい。」


一呼吸置いて言葉を続ける。


「......勇太逹は元に戻ることが出来ますか?」


言葉にして、セフィルに聞く。

セフィルはゆっくりと優しく語りかけてくれた。


『この者逹を元に戻すとは、ミナトの世界を元に戻すということだな?』


深く頷く。


『我は全てを創造し育む。しかし、一度失ってしまった者を完全に元通りにするには、全てのクレアツィオーネの種の記憶を読み取らなければならない...』


セフィルは少し間を開けて言葉を続ける。


『我にはもうそこまでの力を持ってはいないのだ。』


ああ、セフィルでも無理なのか。そうか。確かに覚悟を決めて答えを聞いた。

でも、やっぱり微かな期待を胸に抱いていたんだな。

自分自身が思っていた以上に落ち込んでいることに、乾いた笑みが浮かぶ。

しかし、セフィルはまだ言葉を紡いでいた。


『ただし、このクレアツィオーネの種の記憶を共有する物や人が媒介に元に戻せば可能だろう。』


セフィルの言葉に沈み零れかけた涙で濡れた瞳を上げる。

今、セフィルはなんと言った。

クレアツィオーネの種の記憶を共有?それって...


『だからミナト。前にも聞いたな?』


セフィルはそう前置いてブラックアウトする直前に聞いた最後の言葉を告げた。


『私の、創造神の後継者になってはくれないか?』








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