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クレアツィオーネの種  作者: ガタミン
白の領域編
1/2

自転車の二人乗りは止めましょう。

勢いで書き始めました。

処女作です。どうぞよろしくお願いします。

頬に硬く冷たい物が触れている。


薄っすらと意識が覚醒して行く。


自分がうつ伏せに横になっている事がわかった。


ゆっくりと瞼を開ける。


始めに瞳に映り込んで来たのは



白い…空間?



ガバッと上半身を勢い良く上げた。

途端にクラクラと目眩がし、再び頭を下げる。



ーーーここ…は?



クラクラする頭を両手で挟み必死に記憶を辿る。


えっと、此処は何処?ちょっと待った。

何が起こってるのか…整理しよう。

まずは自分の名前から…未那人ミナト坂上未那人サカガミミナト。よし、名前はOK。

今日の朝、いつものように目覚めて…それからクラブの朝練があるからって、遅刻魔人の勇太を叩き起こしにあいつの家に自転車で向かって…案の定寝こけてた勇太を文字通り叩き起こした。

そんで、勇太に自転車こがせて、後ろに乗っかって学校に向かったんだ。

風が気持ち良くて…道路の端に生える並木を見上げて、緑が綺麗でさ…あ〜今日もいい天気だなぁって話して次の交差点を右に曲がれば校門が見えるって思ったんだ。


でもそこには校門はなかった。


違う。学校も、校門に続く道路も…何も、


今自分がいるここと…同じ。


「勇太‼︎‼︎」


そうだ!先程まで一緒に居たあいつはどうしたんだ?


慌てて身体を起こし、周りを見渡す。

未だクラクラする頭を左手で支え、勇太を探す。

しかし目に映る光景は白しか映さない。



なんなんだ?


一体何が起きている?



何時もの朝。何時もの日常が当たり前のように始まったと思ってた。


なのに今、この状況はなんだ?


混乱と焦りの中、白しか映さないこの瞳は、必死に友人の姿を探す。

こんなあり得ない状況。

夢か?もしかして、朝起きたと思っていたのも夢で、まだ自分は布団の中でヌクヌクと眠っているのかも…。


そうかもと、自分の右頬を思いっきり抓ってみた。

「ゔっ‼︎いたぃ!」

痛みのある夢ってあるのかな?頬をさすりながらもそう思う。

夢にしては痛いし、身体の感覚もリアルだ。夢の中のあの浮遊感?は感じない。


これは現実なのか?それとも…。


どっちにしろ勇太を探そう。現実だろうとゆめだろうと、後でうるさいしなぁ勇太は…。


再び勇太を捜す。なにもない只々白が続く空間の中、たった一人しか存在してないのではないかと思える程、何もその瞳には映さない。

心の中で、これは夢なんだからと、言い聞かせていても、心がざわついて行く。


次第に瞳に映る白が滲み出す。


堪えろ!まだ何もわからない!

気をしっかり持て!

まだだ!まだ…っ!


不安に負けそうな自分に叱咤し、目から溢れ出しそうになるのを必死に堪えながら、ひたすら周りを見渡し続ける。

どれぐらいの時間をそうしていただろう。


つうっと頬に一粒零れた、その時。



突如頭の中に声が響いた。



『泣き虫なのだな…』



突如頭に響く声に零れ始めた物はビックリして引っ込んでしまった。


何処から聞こえるのかと、キョロキョロと周りを見渡すが、変わらず白い空間が続いている。


だ…


「誰?」


ドキドキと鼓動が速くなる胸を掴みながら、何もない架空に向かって声を掛ける。


周りを見渡しても誰もいない。なのに今の声は何処から聞こえてきた?


「誰かいるの…?」


再びキョロキョロと忙しなく体ごと周りを見渡すが何もない。

ただただ白の空間が続く。…いや。


その白の空間の中にキラキラと光る粒子があることに気が付いた。

その粒子はだんだんと渦を巻き集まると人の形を成していく。


そして、そこに現れたのは…


「勇太⁈」


勇太が光を放ちながら目の前に立っていた。


「よかった、なに?なんで光ってるの?どういう事?なにもない所に急に現れるなんて…それに、ここって…」


勇太の姿を見て安心したのか、口早に話しかける。

光っている事に疑問は残るが、やっぱりこれは夢だったんだと、安堵の溜息を吐いた。

人間が光る訳ないからね。

しかし、早くこの夢から目覚めたいが、どうやって目を覚ます事が出来るのかなんて、今迄見てきた夢の中でそんな事考えた事もなかったから解らない。

とりあえず、永遠に夢が続く訳がないのだからと、開き直る事にした。

そうしてやっと今自分達が居るこの場所が何処なのか、全く把握出来ていないと、考えが至りようやく冷静にこの空間を見渡す事が出来た。


何もない、ただ白い空間が続いていると思っていたが先程の光の粒子が空中を漂っているのが解る。


「それなんだろうね?」


空中を漂う光の粒を指差し、勇太に振り向き話し掛ける。


『これはクレアツィオーネの種だ』


勇太はそう口を開き告げる。だが、聞こえる声は勇太の声ではない。

この声はさっき聞こえてきたあの声だ。

そして、声を聞くと同時に身体が硬直した。

勇太が目を開き、視線を合わせている。

だが、この瞳は…。


「……だ…れだ?」


開かれたその瞳の色は、勇太の瞳の色をしていなかった。


青く、キラキラと光る粒子を瞳に映し瞬いて見えるその瞳は、知っている色とあまりにも違いーーーー。


「ーーーーー誰だっ‼︎‼︎」


咄嗟に距離を取るように後ろへと下がる。


『そんなに身構える事はない。私はセフィル。全てを創造し育む者だ』


セフィルは続ける。


『そして、此れは夢ではないよ…』


思考が停止しそうになる。


今目の前に居る勇太に似た姿の人物は何と言った?

夢じゃない?そんな馬鹿な話があるか!こんなあり得ない状況。

現実な訳ない。信じられないという顔をセフィルに向けると


『此れを』


セフィルはそう言うと、手を差し出した。

すると掌に光の粒子が集まり、拳大の球が出来た。

それをいきなりこちらに投げてきた。


「うわっ!」


慌てて両手で受け止めた。その瞬間、頭の中に映像が流れる。


満員電車に揺られ外の流れる景色が映るが急に画面が切り替わる。

台所で食器を洗う女性。そのスカートの裾を握る小さな手。

また切り替わり、次は大きなハンドルを握る白い手袋をしたゴツい手。バスの運転手のようだ。

その後も次から次へと場面が切り替わる。目まぐるしく変わる場面に眩暈がする。

ふらつくも、セフィルが肩に手を添えて支えてくれた。


「な、に?…これ?」

『クレアツィオーネの種の記憶だ』


記憶………?これが種の記憶だって?これはどう見ても


「人の記憶じゃないの?」


少し背の高い勇太に似てか、目の前の勇太に似た者、セフィルも勇太に習い少し背が高い、その為見上げる形になる。

すると、柔らかく微笑んで言う。


『そうだな、…正確には種になる前の記憶だ』


ーーーーーなんて言った?

種になる前の記憶?どういうことだ?

さっきのはどう考えても人の記憶だ。しかも沢山の人の記憶。

それが次から次へと流れ込んできた。それだけの人が、種?になったってこと?え?ちょっとまて、これは、夢じゃないとさっきセフィルは言った。

でも、現実にこんなに沢山の人の記憶を見ることが出来るなんてあり得ないだろう?

それに、さっきの記憶の中に気になる映像があった。

あれは…バスから見えた外の景色。あれは学校の最寄の駅前だった。


「なんで…?どういうこと?」


支えられた手を振り払いセフィルと対峙する様に立つ。


「どうしてこの記憶の中にあの場所が映る‼︎ーーーこっんな、だって!こんなの‼︎…夢じゃなきゃっ!可笑しいでしょう?…だって、それじゃ…」


気付き始めた事実に言葉が詰まり、それを否定してほしくて、目の前に立つセフィルに目を向ける。


『今此処に在るクレアツィオーネの種の大半は其方が居た世界の破片だ』


セフィルの言葉に身体が固まる。だが、頭の中は今聞いたばかりのセフィルの言葉が繰り返される。


破片?世界の?クレア…なんだ?光の粒子のこと?記憶?前の…記憶?


どういうことだ?それじゃ、やっぱりこれは自分の世界の、人達の記憶だということ?

そして、今のこの状況が夢じゃなく、現実だと…。

そうなると、この記憶を持っていた人達はどうなったって言うんだ?

この記憶はこの光の粒子になる前の記憶だと言った。


そう。《 な る 》前のーーー。


その事実に考えが至った瞬間、膝がガクガク震えだし、立っていられなくなりそうになりその場に崩れ落ちる。


「み…みんな……は?この記憶の持ち主のみんなは……この光の粒子になったってことーーー?」


もう視線を上げる気力も無く、其処に見えるセフィルの足先を見つめながら聞いた。


『ああ、そうだ。この姿もその記憶から象ってみたんだが…其方と話をしたくたな、この姿なら気安いと思ってな。少し違う者も入ってしまったようだ。すまない。』


今。何と言った?目を見開きセフィルを見上げていた。ゆっくりと、今の言葉を反芻する。


ーーーこ の 姿 も そ の 《記 憶》 か らーーー


『ーーーその様に泣くな。』


気付けばポロポロと止め処なく涙が零れていた。身体は鉛の様に重く動かない。

いや、動きたくない。

涙を拭こうにも腕が重く上がらない。こんなにも…人は何も出来なくなるんだな。

絶望ってこれなんだ。争う瞬間も与えられず、ただ気付けば大切な人や街の人々。全く知らないただ同じ街に住んでいたと言う人達が沢山いた。

そんな人達が今、目の前の光の粒子になったと言う。夢じゃなく、これは現実なのだと。

そして、その中の記憶から象ったと言う。

それは否が応でもこの、光の粒子の中にーーー。


「勇太を返せえええええええええええええっ!!!!」


瞬間、怒りが爆発したからか、身体が動きセフィルに殴りかかった。

しかし、セフィルは簡単に殴りかかった腕を片手で去なし、その手を取り自分の腕の中に包み込む様に抱きしめた。

突如殴りかかったにも関わらず、結果抱きしめられる形にり、自由な方の手でセフィルを引き剥がそうともがく。

セフィルの腕に力が入り、身動きが出来なくなる。


「離せ!離してっ!!」


『その様に暴れるな。傷が付く』


優しく耳元で囁く様に告げられた言葉に怒りに染まった頭は更に怒りを増した。


「な、んでっ!どうして?!こんな!!」


怒りと共に、こんな理不尽な状況に説明がほしいと、流れる涙が止まらない。身体も怒りでなのか、泣いているせいなのか、小刻みに震えている。

「勇太、は、…なんで?ただ、普通にっ!みんなっ、ふっ、普通に、暮らしてただけなのにっ!!」

喉が震え、詰まりながらセフィルに言い募る。

セフィルは握っていた手首を離すと、壊れ物を触るかの様に優しく頭を撫で出した。


『すまない。この様な手段を、彼等が本当に取るとは思わなかったのだ…』


ゆっくりと、言葉を紡ぐ。その間ずっと頭を撫でながら。


『この様な方法で其方を呼び寄せても、召還した者の世界を救おうと思っては貰えぬと、何度も伝えたのだが…聞いては貰えなかった様だ』


セフィルの声は優しさを帯び、段々と心が落ち着いてくる。ヒックヒックと浅い息を吐きながら、セフィルの話を聞く。


『其方を、救世主を強制召還したのは、其方にとっての異世界。イデアルのアリア・サクロ。イデアルの神託の神子だ』





不定期更新になるかと思いますが、なるべく早く更新出来るように頑張ります!

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