二章プロローグ
新章突入!
迷宮第70階層。まるで荒野のような作りになっているその階層に、複数の人間の怒号とモンスターのけたたましい声が響き渡る。
「お、おい何だよこいつら!?」
「知らねぇよ!分かるのは見るからにヤバそうって事だけだ!とにかく逃げるぞ!」
「ぐわぁ!」
「おい!大丈夫か!?くそっ、マイクがやられた!」
「いいから逃げろ!とにかくただ逃げる事だけを考えて走れ!マイクは俺が担ぐ!」
その場から逃走を図る四人の武装をした男達を追うのはこの階層にいるわけのない異形な姿をしたモンスターだった。
人のような形をしているが、異常に膨張した筋肉と額から生える二本の捻れた角がそれを人じゃない事を示している。
「くそったれ!あんなモンスター知らねぇぞ!」
「もっと気合い入れて走れ!追い付かれるぞ!」
「大丈夫だ!奴はどうやら足は遅いらしいからこのペースを保てば逃げ切れるぞ!」
その瞬間、彼等の進行方向を遮るように新たなモンスターが割り込んで来た。
「なっ!?こんなモンスターも知らねぇぞ!」
「言ってる場合か!退け!」
現れたのは、またもや人の形をした異形のモンスター。しかし今度のは天を穿つ鋭い角が一本生えており、異常発達した筋肉の背中からは赤黒い翼を生やしている。
「オラァ!」
先手必勝と、一人の男がその異形のモンスターに攻撃を仕掛ける。モンスターはあっさりそれを避けるも、男はその瞬間体制を入れ替えてその背に生える翼を切り落とす。
「グオオオオオ!?」
到底人の物では無い咆哮をあげ、唐突に翼を失った事で前のめりに倒れ込む。
「今だ走り抜けろ!俺たちじゃこいつには勝てねぇ!なんとか動きを止めるので精一杯だ!」
「「おう!」」
男達はその隙に全力で階層を駆け抜け、地上へと続く階段を駆け上る。彼等は休む間を削って走り続け、現れるモンスターを躱しに躱し、たったの数時間で地上へと駆け出た。
見ると空は既に暗闇に包まれており、時間帯は深夜である事が窺える。
ひんやりと頬を撫でる冷たい風が、汗にまみれた男達の僅かな安らぎを与える。
「はぁ、はぁ……よし、ここまでくれば、大丈夫、だろ……はぁ、はぁ」
「はぁ、はぁ、ああ……取り敢えずギルドへ報告だ……」
「マイクの治療もしないとだしな……」
男達は、自らの使命を果たすために悲鳴をあげる体に鞭打って静まり返る夜の街をゆっくりと歩き出した。
ギルドにて探索者の緊急召集がかけられたのはこの翌朝の事であった。
プロローグなので短いです。次回から普通の文章量に戻ります。




