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龍王様の迷宮探索記  作者: 夜桜
現世に降り立つ龍王
12/15

一章エピローグ

この回にて一章終わりです!

翌朝、まだ外にいる人が少ない早朝の時間帯にドラグスは冒険者ギルドを訪れていた。


「シアン、我の入れる迷宮の階層と、その階層の情報を教えてくれ」


「ドラグさん、おはようございます。昨日の今日でもう探索に行かれるのですか?」


朝が早い時間帯だと言うのにギルドはそれなりの賑わいを見せており、夜通しの迷宮探索から帰って来た者達が拾って来た魔石やドロップ素材の換金をしていたり、これから朝一で迷宮に潜る探索者達がなんか良い依頼は無いかとボードを見ていたりしている。


「うむ、別段疲れてはおらぬし、何より暇だからな」


「ドラグさんらしいですね……はい、此方がEランクで入れる階層とモンスターやドロップ品の情報です」


「ああ、いや、それはもう知っておるから良い。朝起きたら我のランクがDになっているのに気付いてな。聞きたいのはそっちの情報だ」


シアンが差し出してきた図鑑を丁寧な動作で返しながら、代わりに懐からランクカードを取り出して提示する。


「……はい?」


その返答に固まったのはシアンだ。


「聞き間違いですか……ドラグさん、失礼ですがもう一度お願いします」


「む?だから、ランクがDになっておったのだ」


何かを勝手に納得したシアンが今一度ドラグスに尋ねるが、返ってきた返事は残念ながら先程と変わらない。


「……今度は聞き間違いじゃないですね……」


シアンが恐る恐るドラグスの提示したランクカードを手に取って見ると、そこには確かにDと言う文字が浮かんでいる。賢そうな見た目を飾っている伊達眼鏡をずらして目をこするが、その文字が変わる事は決して無かった。


「……ドラグさん、貴方は確か一昨日登録したばかりでしたよね……貴方が何者はマナー違反になりますので問い詰めはしませんが、少しは自重をしてください」


ここぞとばかりに言ってくる小言を、ドラグスが少しばかりの罪悪感と、何故駄目なのだ?と言う疑問を浮かべながら聞いていると、やがて満足したのか「報告書書くのは私なんですからね」と言ってDランク探索者が潜れる50階層までの情報をまとめた小さな図鑑を取り出しながら締めくくる。


「さて、本来なら口頭での説明を行いたいのですが、生憎今ギルドは非常に混み合ってます。すみませんが、ご自分で此方の図鑑に目を通しておいてください」


「あいわかった。忙しい中、時間取らせてすまなかった」


小言を言いながらもきっちりと仕事をこなしてくれていたシアンに感謝と謝罪を伝えて図鑑を受け取ったドラグスは、ギルドに併設されている休憩所ーー探索者達が談笑したり軽い食事を取ったりする場ーーの一箇所に座り、適当に頼んだ軽めの食事を頬張りながらペラペラと図鑑に目を通す。

そこから見つけためぼしい情報をまとめると以下のようになる。


ーーーーーーーーーー

21〜30階層

14階層〜20階層まで続く森林エリアが終わり、30階層まで再び洞窟エリアになる。

現れるモンスターの強さは今までと大きく変わり、個としては勿論、集団としての完成度も上がっており、素早い連携を行ってくる。


・ハンタードッグ:危険度☆☆☆:

集団で連携して襲ってくる大型犬のようなモンスター。個々ではあまり強くないので、連携に注意して立ち回るべし


・アシッドスライム:危険度☆☆☆☆

天井や壁に張り付いて獲物を待ち受け、獲物が近付いて来たら死角からいきなり襲い掛かってくるモンスター。鎧をも溶かす酸性の液を吐くので注意


・レッサーサラマンダー:危険度☆☆☆☆

常に2〜3匹で行動している僅かな赤みを帯びた土褐色の蜥蜴。そこまで高温では無いが、火傷は必至の炎を吐いて来るので、中途半端に距離を取ると逆に危険


・ダークバット:危険度☆☆

天井に潜み、下を通った者目掛けて集団で襲い掛かる。強さは21〜30階層の中では下から数えた方が早いので注意さえしていれば命の危険はあまり無い


・ダッシュリザード:危険度☆☆☆

キャストリザードの亜種。キャストリザードを一回り強くしたようなモンスターで、基本的にキャストリザードと同様の対処で良いが、全体的にキャストリザードよりも強いのでそこに注意すべし


・アサシンスネーク:危険度☆☆☆☆☆

普段は薄暗い洞窟に気配を消して潜んでおり、獲物が近付いてきたら音と気配を消して背後から近付いて、即効性の毒を含んだ牙で噛み付いて獲物が弱るのを待って捕食する。毒は致死性では無いが、噛まれるとしばらくの間動けなくなるので、21〜30階層の中で最も危険なモンスターとされている。


31〜50階層

遺跡風の景色に変わり、出現するモンスターもアンデット系中心となる。

アンデット系のモンスターは通常の攻撃が効き難く、扱う技も厄介な物が多いので多くの探索者に毛嫌いされている。


・スケルトン:危険度☆☆

人型の歩く人骨。斬撃には強い耐性を持つが、打撃や魔法に耐性が低く、強さも30階層までのモンスターより低い。注意すべきは、常に複数体同時に行動していて、中々の練度での連携を攻撃行ってく事だが、それも事前に準備をしておけば安全に戦える程度のものである


・アンデットウォーカー:危険度☆☆☆

剥き出しの骨に少しばかりの皮をつけた動物型のモンスター。身体は頑丈だが知能がとても低く、探索者を見かけたら取り敢えず真っ直ぐに突進して来るだけ。特別な行動はしないが、その頑丈性だけは侮れない。


・ナイトアーマー:危険度☆☆☆☆☆

中身の無い人型をした鎧。武器は個体毎によって違い、その都度立ち回り方を変えないといけないので、複数で遭遇すると非常に厄介。単体でも30階層までのモンスターとは別格の強さを誇るので注意が必要


・ガーゴイル:危険度☆☆☆☆

石像に扮して獲物を待ち受け、獲物が近くを通ったら不意打ちでいきなり襲って来る。戦闘力はそこそこ高く、短時間ならば空も飛ぶ厄介なモンスター


・ジュエルミミック:危険度☆☆☆☆☆☆

31〜50階層で出会う事がある希少(レア)モンスター。倒すと非常に価値のある宝石を落とす。

普段は宝箱に扮しており、獲物が近付いて来た時だけ蓋を開けて捕食する。宝箱のような形から動きは鈍いが、攻撃力だけならばナイトアーマーよりも高く、油断していると噛み殺されてしまう。また、魔法も多様して来るため、希少(レア)モンスターであると同時に31〜50階層に現れるモンスターの中で最も危険なモンスターである

ーーーーーーーーーー


「ふむ、この程度なら問題は無さそうだな」


図鑑を読み終えたドラグスは、パタンと図鑑を閉じて席を立った。見るとギルド内はいつの間にやらそれなりに静まっており、今いるのは依頼を持って来たこの都市の住人数名に、他の者達とは遅れて迷宮探索へと向かう探索者達だけであった。

普段とても忙しそうに動いているギルド職員達も今この時ばかりは束の間の休息に一息ついてる者達が多い。


「シアン、図鑑を返すぞ」


「ひゃっ!?」


シアンもまた、一息ついている職員の一人であり、珍しく誰も並んでいないカウンターで暇そうにしていた。そこへ唐突に声をかけられたものだから、普段の彼女からは想像も出来ないほど可愛らしい悲鳴が上がった。


「クハハッ、愉快な反応だな。我は借りてた図鑑を返却に来ただけであるぞ?」


ドラグスはその口に楽しげな笑みを浮かべながら、図鑑をシアンのカウンターに返却すると、「では、行ってくる」と言い残し彼女に背を向ける。


「はい、お気を付けて」


少し不満気な口調をしつつも律儀に見送りの言葉をかけながら、返却された図鑑を回収する。その時には既にドラグスの姿はギルド内に無く、シアンは人知れず溜め息を吐いた。


この日の夜、再び現れたドラグスが50階層までのモンスターの魔石やドロップ品を数百個ほど持ち込んだ事でまた一悶着起こり、またもやシアンの苦労が増える事になったのだが、その元凶であるドラグスがその事に気付く事は無かった。


***


霧と闇が立ち込める何処かの深い場所。そこでは複数の影がたむろい、何かを話していた。


「報告します。あの人間共に命じていた件ですが、突如として現れた謎の男により全員、殺害・捕縛されたようです」


「そうか……報告ご苦労。下がれ」


「はっ」


一人の背の高い人影が目の前で跪くもう一つの影にそう伝えると、その影の主は短く返礼をすると一瞬にして姿を消した。残ったのは背の高い人影と、その影を中心にして左右に立つ四人の人影。


「いかが致しますか?」


数秒の沈黙の後に一つの影が中心に立つ影へと尋ねると、中心に立つ影は「ふむ……」と少し考える素振りを見せた。


「そうだな……まぁ、数は多い方に越した事は無かったが、必要数なら今まで集めたものだけでも十分足りる。取り敢えずは放っておけ」


中心に立つ影がそう告げると、それを尋ねた影は分かりましたと頷き、それ以降口を開く事はなかった。


「少々予定より早いが、そろそろ次のステップへと移るとするか。お前ら、行って来い」


影が命令を告げると、他の影達は了解するように一斉に頷き、一つまた一つと霧の中へ姿をくらまして行った。


「ククッ、待ってろよ龍王ドラグス・V・マキナート……直ぐにお前の元へと行ってやる」


誰もいなくなった場所で影は霧で何も見通せる筈の無い空へ向かって、何もかもを見通しているような不敵な笑みを浮かべて呟いた。一瞬闇に光ったその二つの瞳は美しい黄金色に輝いていた。

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