第八話 呟いていた本心
「はぁ~……」
「……もう! 優ったらさっきからずっとその調子! いい加減私に何があったのか話してよ!」
沙苗の好きな人が怜とやらだと聞いてから、 俺のテンションは下がっていくばかりだった。 俺の隣では留利が心配そうに話しかけてくる。 ちょっと今は放っておいてもらいたい。
「はぁ~……」
知らぬ間に俺は沙苗に恋をしていたようだ。 それはただ単に元の彼女と顔が似ているからではない。 こう、 なんというか、 ……なんていうのかな……。 とにかく俺は沙苗が好きになったんだ!
「優もお年頃だしね~。 うんうん」
「……は?」
「沙苗っていう人が好きになったんでしょ? そうなんだ~」
訳が分からない。
「……お前……勝手に人の心読むなよ……」
「自分でつぶやいてたよ?」
俺はバカだったのか……。
「……あぁそうだよ! 俺は沙苗のことが好きだよ! なんか文句あるか!?」
大声で叫ぶ。 幸い今いる場所は俺と留利しかいない屋上。 誰にも迷惑がられない。
留利は少し寂しそうなほほえみを浮かべると、 俺に背を向けて対抗するようにグラウンドへと叫んだ。
「べっつにー!」
グラウンドはたくさんの生徒で溢れかえっている。 留利の声は聞こえていないようだ。
「私、 教室戻るから!」
留利はそう言いながら階段を下りていく。 次の科目までまだ十分もあるのだが、 何か用事でもあるのだろうか。 少なくとも俺はそんなことは聞いていない。 まあ、 二年の俺が一年の情報を詳しく知っているのもおかしいしな。
「はぁ~……」
テンションは一向に上がらなさそうだ。 俺は指で何回か頬をつねると、 大きなあくびをした。
このままじゃ午後の授業はいつもよりはかどらなさそうである。 俺は屋上の隅で体育座りをして、 終業までサボることにした。
短くてごめんなさい!
全然更新してなくてごめんなさい!