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吸血人  作者: 儀式雑種
2/3

第一次人魔大戦

第三次世界大戦の激戦区である中央国。その放送局を占拠しようと、白銀の髪をした初老の男が、手ぶらで軍隊と対峙している。その男は、弾幕を浴びながら言った。

「やめたまえ。銃を撃つと肩や腕に負担が掛かるだろう? 私に銃やグレネード、そしてミサイルが効かないのはわかっている筈だ。」

四方八方から弾幕を浴びているその男は吸血鬼だった。

この世に存在する全ての生物のDNAと、脳味噌にチップを埋め込んだ人体兵器。

それが吸血鬼だ。

吸血鬼といえど、ベースは人間なので、太陽や十字架やニンニクなど、目立った弱点が無い。

「やめろ、と言っている。私は今後の為、無駄な殺生はしたくないのだ。」

銃声もあって、聞こえてないのだろうか、と思った。

なら仕方ない。

「残念だ。」

右腕を前に差し出し、血液を高圧力で噴射させる。

これで一網打尽だ。

ドサッ、ドサッ、と人が倒れていく。なんとも脆い物だ。

やがて放送室に辿り着く。

人間だった頃、演説をよくやっていたので勝手は分かる。

準備完了だ。放送を開始する。

「私は全ての吸血鬼を統制する能力を持った吸血鬼だ。吸血鬼の親玉、と思って構わない。さて人間。私達吸血鬼は、すこしばかり腹が減っているのでな。諸君らが知っての通り、私達の食料は人間の血液。あー、つまり人間視点で言えば…あー、宣戦布告だ。フフ、もう食事を開始した食いしん坊がいるだろうがな。私達吸血鬼は残り430。君たち人間は1億。あぁ言い忘れたが、闘争も私達の楽しみの一つだ。良い"食玩"であることを期待するよ。そして我らが同胞に告ぐ。裏切り者に注意せよ。以上だ。」

これで人間は躍起になって我々を殺しにくる筈だ。だが、今回の戦争の真意は、吸血鬼と人間を見極める事だ。弱い吸血鬼、弱い人間にはこの戦争で大いに死んで貰う。

強い人間の血液はとても良い味わいなので、わざと生き残して子孫を残してもらう。少しばかりの劣化はあるが、美味な事に変わりは無いのだ。

脳に意識を集中させ、400を戦争に重点を置かせるように、残りの30には、人間人格の吸血鬼の出来損ないを追うように司令を送る。

現在、人間人格は30居ると聞いた。脅威になる可能性が少しでもあるので、早く始末しておきたい。

「それにしても…フフ…」

「食玩」とは我ながらなかなか良かった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

雲の上を滑空するドラザとカインズ。

ドラザがそろそろ痺れを切らし、カインズに能力についての説明を求めた。

「そうだな。まぁ飛びながらには変わりはねぇな。まず、アイツは1機1能力と言った。それはだな、脳に埋め込まれたチップに、能力を"登録"するんだ。」

「なるほど。人格云々は置いておくとして、他に何か特徴は?」

「あー…そうだな、多分、能力についての詳細情報…つまり、どういう仕組みで能力が発動するか、だな。俺の能力は、厳密に言えば、触れたものの特性、特質を変化させる能力だ。俺は太陽学専攻だったから、細胞とかをどう変化させれば良いのかが分かった。そして、変化は…」

ドラザが首をかしげる。

「もっとわかりやすく頼む。簡単に言えば、でいい。」

昔からそうだ。コイツは馬鹿そうに見えて、実はキレ者だ。

しかし、説明は下手くそなので、いつも分かり辛い。

「んー…わかるは出来るで、分からないは出来ない…かな!」

「そういうことか。」

…単に俺が馬鹿なだけかも知れない。

「お前、何か一つ、これだけは完全にわかるぜーっての、無いのか?」

「難しいな…」

何か無いか、と脳をフル回転させる。本日二回目だ。

俺は太陽学専攻ではなかったので、カインズと同じような能力は使えそうに無い。

考えろ。考えろ。

「あ」

突然と拍子抜けした声を出すカインズ。

「あ?」

思わず返してしまった。

「鉄分だよ。お前、それなら判るだろ。」

「鉄分…あぁ。」

「敵から吸い取った血、若しくは、お前自身の血から武器を生成すりゃあいい。」

「なるほどな…まぁでも、敵が複数ではなく単体だったら、必然的に俺の血からなんだが。」

吸血鬼になったから、多少は痛覚は抑えられても、痛いのは勘弁だ。 武器を作るともなれば、リストカットするくらいの覚悟と痛みが伴う。

全く、こんな考えを起こしたせいで、全身に嫌な感じがする。

「…お前の血をくれよ。」

真顔で言ってみた。

すると、飛行中だが、カインズの身体が小刻みに震えるのが直ぐにわかった。こういう冗談は通じないヤツなのだ。それに、俺はカインズより、力量では勝っている。何度も訓練で負かしてやったから、多少はトラウマなのだろう。楽しいものだ。

「ウソだ、悪かったな…フフ」

「笑うなよ!それより、もうすぐ着くぞおら!」

今は雲の上を飛んでいるが、きっと空の下は混沌としているのだろう。連合国はどうなったのだろうか。すると、何やら音声が聞こえてくる。

「を…せ! 愚かな人間人格を探せ!探して殺せ!奴らは30機だ!即急に探して殺せ!」

妙に聞き覚えのある声だった。

「俺らみたいなのが30も…!?」

「もう充分だ、さっさとこの空域から逃げるぞカインズ!ついでにその30機!俺らが先に見つけるんだ!」

来た道を引き返しながら、とりあえずは、人のいない所を探す。と、思っていた。

「お、おう!ところでよ!」

「何だ!?」

「まずは放射能汚染区域を探さねぇか!俺らがそこで気を失っていたのと関係がありそうだしよ!」

この言葉で、まずは希望が生まれた。放射能汚染区域。確かに看板にそう書いてあった。

「例えばどこだ!?」

「ここから北西のラーカだ!こまけぇ処はまずは空域から離れてからだ!」

全速力で北西へ向かった。吸血鬼の追手はいないようだが、細心の注意が必要だ。

しばらくすると、ラーカの広大な土地が見えてきた。

「ヒルアパのブルトルンパだ!吸血鬼は少なからず居るはずだ!」

「了解!」

ラーカは一つの大陸からなる大国だ。それ故、一つ一つの地域も広かった。なので、それらが全て、独立した治安、政治などを行っていたので、いわばラーカも、連合国のようなものだ。ヒルアパも、例外ではないのだ。当然、ブルトルンパ市も、かなりの広さを持っていた。

手分けして探した方が効率が良さそうだ。

「手分けして探すぞ、無線か何か無いか?」

「奇跡だなぁ…こりゃ。」

カインズのポケットの中に、小型の無線機があったようだ。

「俺は北と西、お前は東と南を頼む!」

「あいよッ!」

ブルトルンパ市は、その殆どが放射能汚染区域だ。生身の人間はマスクをして戦闘していただろう。

まずは北側の街道から探してみる。この辺一帯の戦闘行為はだいぶ落ち着いているようだが、ただの人か、はたまた吸血鬼かの見分けは簡単につく。

早速人影を見つける2,3人のようだ。急降下し、まずは接触を試みる。

「おい、お前ら自由に動けるか!」

男二人、女一人。その内の筋肉質な男が、俺を指さしながら言った。

「お前…!」

「ウォンドか!なら話は早ぇ!つうか話てる暇ねぇ!飛べるか!?」

「あぁっ?おう」

戸惑うウォンド。仕方がないが、当然のことだ。

「早くしろ、殺されちまうかもしれねぇ!」

「後で詳しく話せ!おいお前らも早く!」

ウォンドに言われ、他の二人も羽を生やした。

一定の高度に辿り着き、無線でカインズと連絡を取る。

「おい、聞こえるか?」

「見つかったのか!?」

ほんの少し雑音が混じっていたが、会話に支障が出るほどでは無かった。

「大当たり、まず三人だ!」

「一気にか!続けて頼む!」

「そっちもな!通信終わり!」

カインズとの通信を終えた。次は西側に急行する。

多少の暇が出来たので、ウォンド達に理由を簡潔に話した。

そうこうしている内に、またも人影がある。

今度は4人だ。その内の一人は、三人の集まりから離れている。

「ウォンド達はそこで警戒していてくれ、他の吸血鬼が来たら降りてきてくれ。」

急降下し、もうすぐ地面に着こうとした時、アスファルトがドリルのような形を形成し、足に刺さる。

「いっでぇ!」

足から血が吹き出ている。ただの人間だったら、まず死んでいただろう。

「!」

敵がこちらに気付いたようだ。

「下がってろ!能力をまだ開花してないお前たちでは!」

三人が下がっていく。

「何だ、お前…?」

敵が質問を投げるが、お構い無しだ。俺の血が吹き出ている足に手を当て、溢れ出る鉄分から、オーソドックスな剣を作った。羽は生やしたままなので、空中から奴に攻撃をする事にした。地上は危ないからだ。

剣を構え、奴に向って突進する。

吸血鬼は、自身の前方にアスファルトで壁を作ったが、それは予測済みだ。壁の手前での急上昇、そして奴の真上から、急降下して剣を突き刺す。しかし、素早いバックステップの対応で、剣はアスファルトに刺さった。剣を抜き取り、再び構える。が、着地の衝撃で足から血が更に吹き出た。

だがそんな事はどうでも良い。

剣を抜き取って構える。

足から血が吹き出ている為、新しい武器を作るのに、どうしても隙ができてしまう。

仕方ないが

リストカットする以外に無い様だ。利き手ではない方の腕に、剣で傷をつける。

「いッ…!」

激痛に襲われたが、奴を倒せるなら結果オーライだ。

そうしてる間にも、吸血鬼がアスファルトに手を当て、小さなドリルのようなものを飛ばしてきた。

猛スピードでこちらに突っ込んでくるその物体に、剣で幾つか弾き返すも、脚部や腹部にアスファルトの雨が当たり、痛みが俺の体を蝕む。

「いっでぇな!こなくそっ!」

咄嗟に左腕を掴み、盾を作る。

丸型の盾だ。大きさはドラザの胴体が隠れる程。脚部はまだ少し見えているが、その程度なら何とかなる。

右手に剣を、左手に盾を。

剣はドラザが最も得意とする武器の一つだ。

盾を前に構え、前方にいる吸血鬼に、今度こそはと接近する。

距離をどんどん縮めていく。

おかしい。吸血鬼が何もしてこない。しかし、とどまる訳にも行かないと思ったその時だ。

地面、つまりアスファルトが溶け始めたのだ。

ドニャリ。嫌な感触が、足に伝わる。

まずい、コールタールだ。奴はやはり、物質状態を変化する能力を持っていた。

このままだと、またアスファルト状にされ、足が動かせなくなってしまう。

そうはさせまいと、飛ぼうとするが、既に遅かった。もう硬化していたのだ。

足が動かせなくなった。

「クソ!」

先程のような、ドリルの形をしたアスファルトが飛び、こちらの剣も盾も破壊されてしまった。吸血鬼がゆっくりとこちらに向かってくる。じっくりゆっくり殺すつもりなのだろう。

右手で殴れる距離まで縮んだが、殴っても恐らく、また固められるのがオチだろう。

無駄な抵抗は余計な痛みを生むだけだ。固められてしまっては、血も出ない。

顎を親指でクイッとあげられた。

「…何だよ。」

吸血鬼を睨みつける。

「お前を殺したあとに、空にいる奴らも殺してやる。人格が見合わないその体は勿体無い。」

反論させる暇もなく、腹にとてつもない蹴りを入れられた。

「がっ……!」

「足を切り取ってやろう。」

そう言うと、吸血鬼はしゃがんで俺の両足をその爪で切り裂いた。

「ああぁぁぁぁああぁあ!」

反動で吸血鬼から大きく後ろの方へ倒れてしまう。

足首から切られたので、血が吹き出て、血溜まりが出来た。意識はギリギリ飛ばなかったが、激痛で頭がおかしくなりそうだった。

しかしチャンスでもある。

「無様だな。だが完全に殺してやる。」

吸血鬼がこちらに近づいてくる。血溜まりに足を入れた。今だ。すかさず血溜まりに手を当て、鉄分から拘束具を吸血鬼の手と足につける。

「なっ!?」

驚いた時にはもう遅い。拘束具が奴の動きを停止させたのだ。

「傲慢さと………っ油断が………はぁ……命取りだぜ……」

こちらは寝た状態、あちらは立ったままで動けない。

意識は遠いままだが、まだ保ちそうだ。血溜まりから短剣を作り、奴の腹に投げる。

「がぁ!」

まだまだだ。更に腹に、腕に、喉に。投げナイフの訓練もしていたので、大抵が奴に命中する。

しばらくすると、奴が完全に沈黙した。

それを確認すると、カインズに通信を送る。

「カイ………ン………」

「何かあったのか!?」

「西………こっち………きてくれ………」

「おい!ドラザ!?」

そこで俺の意識が途切れた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戦争が終わって21年が経った。

当然、停戦協定を結ぶ、という形で戦争は終結した。奴らの餌として生きる人類は、

支配される毎日を送っていた。

現在、世界人口は5890万人。

吸血鬼は推定30機。

30機ならば全人類が反旗を翻せばすぐ…のはずだが、それは出来ない。人類は"飼われてしまった"のだ。吸血鬼の言う事を聞かない、団結したりなど、反逆行為と見なされると、直ぐに処刑されてしまう。

更に吸血鬼共は、軍を作った。

「軍に入り、優秀な成績を収めた者は吸血鬼とする。」というのを人類と約束したのだ。

そして俺は軍の上層部にいる。

内側から変える、という目的の元、俺は動いている。

軍のトップであり、吸血鬼のトップでもある、ネロ・ミナエルから、新たな情報が入った。

何でも、先の大戦で裏切った吸血鬼共が、まだ生きている様なのだ。

そして幸運にも、俺と俺の指揮する部隊に、"見つけ次第抹殺"という命令が下った。

この上ないチャンスだ。

ざっしゅです。2話目です。

まさか連載と短編を間違えるとは…

またもや、誤字脱字があると思いますので、「汚ぇ文だなぁ!」と嘲笑いながらご覧ください。

今回はウォンドくらいしかいなかったかな?

ウォンドは坊主のマッチョです。

DQ6のハッサンがモデルですね。

それではまた次回お会いしましょう。

「だからこんなんじゃ汚くて小説にならねぇんだよ!」という励ましのお便り、待ってます。

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