7,欠陥
クドウの研究室の電話が鳴る。
研究室の中にはクドウだけだった。ちらりと電話に視線を向けるも、すぐにモニターに戻した。しかし呼び出し音も止まらなかった。しばらく鳴り続ける電子音に、クドウは舌打ちをしながら通話ボタンを押した。
「やっぱり、いたな」
不機嫌そうな声が聞こえてくる。
「お前からだと思ったよ、ヤジマ」
穏やかに返すクドウに、一言だけ返す。
「『Project RE-BIRTH』」
ヤジマの言葉に一瞬だけクドウが息を止めるも、すぐにいつもと同じような態度に戻った。
「…ああ、アリアから聞いたのか。研究のデータフォルダーにわかり難いように細工された痕跡があったからね。彼女だと思っていたよ」
「ショックを受けていたぞ」
「そうだね。新しいホムンクルスが誕生するんだからね」
「…クドウ、本気で創っているのか?」
「ああ、『K‐A』には致命的な欠陥があるんだ」
「致命的な欠陥って、なんなんだよ」
「ヤジマ、電話口で叫ぶな、耳が痛い。欠陥の内容については俺だけしか知らないし、データーとしては存在していない。俺だけ知っていればいい。どうしても、それを改良するために次のホムンクルスが必要なんだよ」
「アリアとの時間を愛情を減らしてまで必要なのか。お前は彼女が大事じゃないのか」
「当たり前じゃないか、大事に決まっている」
「ふざけるな」
淡々と返されるクドウの言葉に我慢できなくなったヤジマは、一言だけ言って電話を切った。通信が切れた音に、クドウは苦笑を浮かべる。
「この計画は必要なんだ、どうしても」
クドウの追い詰められたような呟きは、ヤジマには届かなかった。