14、それが最善だと僕も思うよ
アリアがここに滞在することが決まると、ケイはヒロを部屋に呼んだ。
「へぇ、、しばらく居ることにしたんだ。僕はここのサブ・リーダーやっているヒロ。よろしく」
アリアは差し出された手を見て、首をかしげながら握手をした。
「よろしくお願いします?」
「なぜ、疑問形」
「あまりあなたに歓迎されてない気がしたから」
アリアの返答にヒロが苦笑を浮かべた。
「リーダーの決定は絶対だからね、反対はしないよ」
「やっぱり、反対してるじゃない」
「ただ、女の子っていうのが、ちょっとね。うちのチームにも女性はいるけど数少ないから面倒が起きなきゃいいな、って思ってね」
ヒロは軽くため息をつく。
「スミさんって女の子がいたわ」
「うん、君の看病してくれた彼女ね。スミはちゃんと宣言してるし、その辺の男じゃ敵わないから大丈夫なんだ」
「宣言?」
「そ、宣言。彼女はトシの子供を産むって宣言しているから、他の男は手を出せないんだ。ここでは、女が伴侶を選ぶ権利をもっているのさ」
アリアは驚いた表情をする。
「だって、スミさんってまだ子供でしょ」
「ドームでは16歳は子供かもしれないけど、ここでは子供じゃないんだ。立派な大人さ。だけど、君はあまりに…その、無防備すぎる。そんなのがチームに入ったら、浮足立って困るんだよね。リーダーの女だっていうポジションに立ってくれれば楽なんだけど、そういう関係じゃないんだろ」
そう言われて、アリアはちらりとケイを見る。
出合って間もない、しかも殴ろうとしていた相手にそこまで思うほど自分は惚れっぽくはないとアリアは首をふる。女としてここにいるのがよくないなら…。
「髪を切れば男の子に見えるかしら」
「それが最善だと僕も思うよ」
「えー、もったいない」
その発言に、今まで黙っていたケイが割り込む。その瞬間、ヒロが軽くケイの頭をたたいた。
「もったいないじゃないだろ。彼女はいろいろ目立つんだ。ドームの人間であり、女性だけど誰のものでもない、そして手首の文字…。以上のことで、俺は髪を切って男装してもらうのが一番と考える。どう、これ以上の案が浮かぶ?」
ヒロに睨まれて、ケイは肩をすくめた。
「わーったよ。それでいこう。アリアもそれでいいか?」
さらりとした黒髪に触れる。
「ええ。髪なんてすぐに伸びるもの。ここにいさせてもらえるなら、安いものよ」
「話がまとまったところで、はいこれ、手首につけて」
そういって、ヒロがリストバンドを渡した。
「ありがとう」
「あとは、名前だな。アリア…か。リアっていうのはどうだろ」
「リア?うん、いい名前ね」
新しい名前に、アリアは照れるような笑みを浮かべた。