12,なんであんなに可愛いの。反則よ、反則
「あの事故のあとで、いきなり動くとか無理に決まってるじゃんね、って聞いてる?ケイ」
立ち上がろうとしたアリアを抱きとめようとして、一緒に床に倒れてしまったケイにヒロが笑いながら話かける。
「笑ってないで助けろよ」
「いや、だって、面白いでしょ。君の態度とかさ。それに、彼女慣れてない猫みたいで全身の毛を立てて可愛いし」
「俺のだからな」
そう言いながら、ケイはアリアを抱き上げてベットに乗せた。
「わかってるよ。で、これからだけど、怪我もしてるし、打ち身と事故のショックとか色々あって熱がでるだろうね。君もずっと一緒にいれるわけじゃないから…」
「え、一緒にいちゃダメか?」
「駄目に決まってんだろ。あんたはバカでもリーダーなんだからな。だから、看病はスミに頼んでおくよ」
しばらくして、アリアのいる部屋の扉が開き、肩までの巻き毛の茶髪の少女が入ってきた。
「頼みがあるって、なんなのよ…って、女の子??」
ベットに寝ている少女をみて驚きの表情をする。それに対して、ヒロは人差し指を唇の前にたてた。
「しばらくこの女の子の世話をして欲しいんだ。もちろん、他のみんなには内緒でね」
「いいけど、ヤバいことしてないわよね」
「たぶんね」
「たぶん、ね。で、どんな状況なの」
「事故にあって、怪我をしている。骨は折れてないし、多分内臓関係も平気じゃないかと思う。ただ、打ち身と怪我のショックで発熱を起こしてる…ってとこかな」
「わかったわ。薬と食事の世話をすればいいのね。何かあったら連絡するわ」
「ありがとう」
そういって、彼女たちを残してヒロは部屋を出て行った。
アリアは身体が怠く、熱を感じながら、ゆっくりと目を開き、薄汚れた天井をみた。
「あ、れ?」
どこかで見たことがある気がするが思い出せず、ぼーっとした頭で周囲をみると、茶髪の少女が目に入った。
スミはアリアが目覚めたことに気が付くと、ベットサイドに座って優しく話しかけた。
「目が覚めたみたいね。薬を飲める?」
ゆっくりと首を振る。
「苦いから嫌だっていうの我儘はだめよ」
「違う。たぶん、あわない」
「んー、アレルギーなら仕方ないわね。じゃあ、水だけでも飲んで。ほんとはご飯も食べてほしいけど」
「ごはんいらない」
ふるふると首を振る。
「わかったわ。次起きたらご飯を食べようね。さ、水飲もうか」
アリアは上半身を起こして、水を受け取った。
「ありがとう」
ふわりと柔らかな笑みをスミに返して、水を飲みほして再び眠りに落ち、その表情をみたスミは、なんとも言えない表情をしていた
バタン。
ヒロの部屋の扉が勢いよく開かれた。
「うるさ…」
言いかけた言葉を、遮るようにスミがしゃべりだす。
「あの子なんなの。なんであんなに可愛いの。反則よ、反則。ってか、どこから誘拐してきたのよ」
「おちつけ、スミ」
「落ち着いてられますか」
「実は事故現場から拾ってきました」
降参のポーズをとる。その態度に、スミは眉をひそめる。
「ほんとに?」
「ほんとに」
「でも、あのこドームの子でしょ。肌も髪もきれいだし、すれてなかったもの。本当に大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないの?ケイが気に入っちゃってるんだから仕方ないでしょ」
そういって、肩をすくめた。